キャラクターデザインコース

ゼミ通ヒーローズVol.64 藤江稜斗とキムジンギュと、卒業制作作品『LACKER』について語るの巻 Part2

 

 

※「ゼミ通ヒーローズ」とは、京都芸術大学キャラクターデザイン学科ゲームゼミの学生の研究や取り組みについてピックアップし、担当教員村上との対談形式で綴る少々マニアックなブログ記事となっています。

 

ゼミ通ヒーローズVol.64

藤江稜斗とキムジンギュと、卒業制作作品『LACKER』について語るの巻 Part1の続き

 

「LACKER」を制作した藤江稜斗(右)とキム・ジンギュ(左)

 

村上

セリフとUIに頼るんじゃなくて、絵とカメラワークとアクションで全部語るっていう点が、海外のインディーゲームを見てるみたいな感じだね。『風ノ旅ビト』みたいなナラティブ体験が味わえるというか。

宝箱を一個開けたら4個あるライトのうち1個が点灯する仕掛けになってて、それを見ただけで誰もが「あと3つ見つければいいんだな」って判断できるし、これだけで目的意識が生まれるわけだから。

 

藤江稜斗(以下藤江)

実際『風ノ旅ビト』はすごい影響受けたんで、何周もプレイして研究しましたね。あと、ライトの仕様はティアキン(『ゼルダの伝説』)のギミックを意識したり、結構色んなゲームを参考にしています。

 

キム・ジンギュ(以下ジンギュ)

今回の作品は海外の人がよく遊んでくださって、その人たちからも違和感がないって評価されたんですよ。それが何かっていうと、ちゃんと世界を観察してますねって。

 

村上

ここでいう観察とは?

 

ジンギュ

藤江がどう思ってるか分からないですけど、自分はこのゲームのジャンルをRPGだと認識してるんです。でも日本人がRPGと聞くとやっぱり王道の『FINAL FANTASY』とか『ドラゴンクエスト』をイメージするんですよ。このゲームはそこから視点を変えて、アメリカとか韓国製ゲームのカメラワークを取り入れてます。そこに日本の文化やテイストを入れることで、世界をよく観察してますねって評価していただきました。ドイツ人もカナダ人も韓国人もみんな同じくそう言ってくれるので、その着眼点は良かったなというふうに思ってます。

 

村上

非言語ゲームとして演出だけで誘導されながら最後まで遊べるところが海外志向だったりするのかもね。ゲームで遊ぶのは日本人だけではないっていう意識が評価されたんだと思う。

 

藤江

デザイナー的な観点からいくと、こだわりどころはやっぱり宝箱の設計ですかね。歯車が直径何センチで、それと噛み合う歯車を作るためにモジュール値がナンボとかなんか色々計算して、それをCADソフトを使って設計して…。しかも宝箱が開くようにアルディーノとモーターとLEDを仕込むからそのスペースも計算して設計しました。何もかも初めてのことだったから、難しくて頭が痛かったですね。

 

村上

去年の今頃だったかな?最初に企画書を見たとき、「本当にできるのか?」って心配になったよ。一台のノートPCに複数のアルディーノを接続できるのか、電圧は耐えられるのか、そんな技術検証を必要とする項目がすごく多かったね。ゲームデザイン自体は特に心配してなかったんだけど、ハードウェアを作らなきゃいけないからジンギュの負担が大変なことになるんじゃないかと…。

 

藤江

だから早めに検証して中間発表の時にはもうアルディーノの検証も終わってましたし、CADソフトでの設計も終わってたんで、もうあとは作るだけっていう状態には持っていきました。

ジンギュ

それでも全てが大変でしたね。自分の技術と知識の範疇を超えてて。Unityにリアルとの連動の仕組みを実装するアセットもソフトもあんまりないし。それがあったとしても今回みたいな四つの宝箱とか感圧センサーとか、合計九つのデバイスに全部繋がるかどうかも分からなくて。で、アルディーノのスクリプトが1つとUnityのスクリプトが1つあるんですけど、このUnityのスクリプトを使ってアルディーノのスクリプトを制御しなきゃいけないんですよ。SAMSUNGで働いてる友達にも聞きながらの作業で、まあとにかく未知のことだらけで大変でした。

 

藤江

僕も、CADソフトもCGも初めてで、ある期間は毎日CGゼミの学生に教えてもらいながらやってました。動画ってどうやって作るの?とかUVって何?とか、初歩的なところから。

 

ジンギュ

あと、宝箱を開けたときにUIの誘導演出が入るんですよ。宝箱が開いたよっていう情報と、その中にある歯車を基盤に差し込んでねっていう。

一度作った演出の中に、後から別の処理をフレーム単位で調整しながら割り込ませるのが凄く大変で…。でもUIとかアニメーションとかムービーを追加していくとどんどんインターフェースが良くなるしゲームのクォリティが上がっていくので、そうなるともっと色々足してクォリティを上げたくなるんです。

 

藤江

調整しながら締め切りギリギリまで結構増やしたからね。

 

村上

使用を実装してテストプレイしてみると、ちゃんと誘導しないと普通のプレイヤーは気付かないな、とか、仕様書の段階では気付かなかったことに初めて気づくことがいっぱい出てくるわけよ。

 

ジンギュ

そうなんですよねー。

 

村上

作り手は制作しながらどんどん目が肥えてくるから、初見のプレイヤーがどこで詰まるのかが気づきにくくなってくるしね。

 

藤江

確かに、結構演出の修正をしましたね。もうちょっとカメラ高く設定してとか結構指示出した覚えがあります。

 

村上

実際ゲーム作りで一発OKなんてあり得ないからね。作れば作るほど企画の穴が見つかるし、どんなプレイヤーがどういう気持ちで今この画面を見ているのか、それを考えたら全然仕様が足りないっていうことに途中から気づいてくる。だから中間発表の後ぐらいにはザツでいいからとにかくエンディングまで一通りプレイできるようにしてね、って指導したのはそういうこと。どうせ調整で数ヶ月かかるんで。

 

ジンギュ

そうなんですよ。プログラミングだけでも大変なのにリアルの連動が複数あって…、でも藤江が企画を熱く語るわけですよ。ぜひやりたいって。

 

藤江

うふふっ。そうですね。やりたかったです。

 

村上

まあ、プランナーとはそういう生き物なんで。

じゃあ、次に制作工程について聞いてみようかな?

 

藤江

制作が始まった3月と4月は就活をメインでやりながら、ジンギュは技術検証、僕は企画を固めていくのと歯車とかCGの勉強をして、仕様が固まったのが5月ぐらいですかね。

 

村上

このチームの良いところは、ダミーデータを先に放り込んで、一通りゴールまで遊べる状態にしてからクオリティアップをした点だね。ゲーム制作に慣れないうちはついストーリーを作り込むことに力を入れがちなんだけど、そんなものは後でいいので。

だから個人的にはこの作品についてワークフローが完璧だった点を高く評価した。

 

藤江

ありがとうございます。

 

村上

二人で力を合わせてワークフローの全体像を理解しながら制作してたことは、実際にプレイしてみるとよく分かる。お客さんが何を求めているかとか、ここでこういう気持ちにさせたいっていう演出意図が全部表現されてたので、そこが素晴らしかったなと。

 

ジンギュ

やっぱりチームを組んで創作活動をする人って、隣に誰がいるのかがめちゃくちゃ重要だってことを痛感しましたね。チームメイトの能力の問題じゃなくて、どういう性格で何を考えてるのかがすごく重要だなって。

 

村上

そうね。それがある種拠り所にもなっていてほしいところもあるし。

 

ジンギュ

学科展のときは制作が楽しくて何も思わなかったんですけど、今年は就活が重なって大変だったので、自分がやってないところを藤江が全部やってくれるから、そういったチームの関係って大事だなって思いました。

 

藤江

確かに、僕はジンギュに難しいことをやらせてる自覚はあるし大変な思いをさせてるのも知ってるからこそ、文句言わせへんぐらいに自分が動いたというか、もう本当にプログラミングだけしといてもらったら他全部やるからって。

 

村上

なんかいい会社の社長みたい。

 

ジンギュ

そりゃあ制作の時は毎回無茶な要望ばかり押し付けてくるんですけど、やっぱりこいつとチームを組めて良かったなって思ってます。

 

藤江

あ、はい、ありがとうございます。

 

村上

業務提携みたいで、良いもの作るためには情け容赦なく指示出しとダメ出しができる関係性だから、お互い間違いなくスキルも上がってるはずだし、卒業後はこれを糧にゲームクリエーターとして頑張ってください。

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