プロダクトデザインコース

どの世代のユーザーであっても面白みと新規性を感じる、暮らしの道具の新しいインターフェース研究 — 卒業展受賞者インタビュー|学長賞・宇野 淑乃さん

こんにちは!プロダクトデザインコースです。

先日無事に会期を終了した卒業展。たくさんの方にご来場いただき誠にありがとうございました。

そして、改めて以下の受賞者のみなさん、おめでとうございます!

 

 |学長賞|

  宇野 淑乃さん(私立雲雀丘学園高校出身)

 |優秀賞|

  杉岡 真行さん(神奈川県立神奈川工業高校出身)

 |同窓会特別賞| 

  PENG ZIHANさん(Clifford International School出身)

 |奨励賞|

  宮田 佑希さん(私立中京学院大学付属中京高校出身)

  早坂 灯子さん(宮城県立宮城野高校出身)

  佐藤 楓さん(私立女子美術大学付属高校出身)

  濱口 夏実さん(大阪府立豊島高校出身)

  長谷川 文乃さん (私立清明学院高校出身)

  里本 真鈴さん (私立光泉高校出身)

  吉岡 英さん(私立同志社高校出身)

 

 

今回は、卒業展にて学長賞を受賞した宇野淑乃さんへお話を伺いました!卒業展の統括メンバーとしても奔走された宇野さん。

卒業展までどのような道を歩まれたのでしょうか。

 

 

 


—この度は「学長賞」の受賞おめでとうございます。まずは作品について教えてください。

 

昔から伝統的に親しまれている玩具をモチーフに照明器具を制作しました。ボタンを押すだけで照明がつくのではなく、遊びたいと思う気持ちやもともとの玩具が持っている形に誘導されて使いたいと思う気持ちをスイッチの切り替えとして利用した照明器具をデザインしています。今回は「けん玉」「だるま落とし」「こま」「糸電話」をモチーフにした照明を制作しています。

 

 

宇野さんの作品 DENTOU シリーズ「KENDAMA」

 

—美しいですね。制作のきっかけはどんなことでしたか?

 

やりたいと思ったきっかけは、例えば部屋の電気をつけるときやテレビを見るとき、掃除機で掃除をするときなど、日常生活の中では様々な「スイッチを押す」という場面に遭遇すると思うのですが、どれもパターン化しているため、その手段の部分を楽しいとか面白いと思えたら豊かになるんじゃないかなと考えたのがきっかけです。深澤直人さんがデザインし、無印良品が商品化した「without thought」というプロジェクトの壁掛け式のCDプレイヤーからもインスピレーションを受けました。このCDプレイヤーは換気扇のような形をしており、目の前にひもがぶら下がっていたら思わずそれを引っ張ってみたくなるというような人間が無意識にやってしまう行動原理を観察することから生まれたデザインで、そのモチーフの形が生活の中でスパイス的な要素になっているのがいいなと思いました。アイデア段階では昔の黒電話のインタラクションを今に活かす案も考えていました。

 

 

—制作のアイデアはいつ頃決まっていったのでしょうか?3年生の頃から考えられていましたか?

 

いえ、いままでやってきたことの延長ではないんです。3年生までの授業では家電や雑貨など全ジャンルの授業を受けていて、いろいろな領域に挑戦していました。そのなかで、結局家電らしい家電のデザインはしなかったり、家具も家具らしい家具ではなくて木の根っこモチーフにした作品を作ったりなど、これまでどちらかというと人とモノが関わる「コトづくり」に興味がありました。ですが、3年生の2月に就職先が決まり、4月から製品デザイナーになることが決まったんです。なので卒制では「モノづくり」を選択しました。就職先が違っていたら、もっとこじんまりとしたものを作っていたような気がします。

 

—就職が大きく影響したんですね。3年生までいろいろなジャンルの授業を受けていたとのことですが、どんな授業が印象に残っていますか?

 

2年生の頃に参加したダイソーさんとの産学連携授業を一番頑張った記憶があります。当時2年生のメンバーは4人で、2年生の時点では3DCADや3Dプリンターの使用経験もなかったので苦労したのを覚えています。もう辛くて・・・。笑

ですが、お互い助け合い頑張りました。ありがたいことに、私は4つの提案商品のうち、3つが商品化しました。頑張ってよかったなと思えた瞬間でした。

 

—経験の少ない2年生で参加されて商品化までされるのはすごいですね。ほかにもプロジェクトをされていたと聞いていますがどんな取り組みだったのでしょうか?

 

自主研究会「おさまるおさめる研究会」を2年生のときに立ち上げました。当時の授業でシャワーヘッドをデザインしたら、おさまりが悪いと先生から言われ、「おさまりってなに・・・?」となったのがきっかけです。そこからメンバーを集めて展示しようと声をかけました。半年以上かけて研究し、学外で2回、学内で1回の展示を行いました。当時は学校のことをおろそかにしないようにと先生に注意されると思い、隠れてコソコソやっていたのを覚えています。笑

 

※展示の様子は瓜生通信にも掲載されました。

おさまりが良いってどんな感覚? ― プロダクトデザイン学科の学生によるグループ展「おさまるおさめる展」

 

あと個人的には、コンペにたくさん出していました。授業課題で考えてた没アイデアとかをコンペに活かしていました。受賞もいただけて、就活などに活かせたと思います。

 

 

 

宇野さんの作品 DENTOU シリーズ「KOMA」

 

—なるほど、コンペで経験を増やしていかれたんですね!ダンボールのプロジェクトもやっていませんでしたっけ?

 

はい。高校生の時からダンボールでお財布を作ったりしてSNSにアップしていたら、企業の方が声をかけてくださり、企画や販売などのプロジェクトをおこないました。だんだんと規模が大きくなっていったので今は2年生の後輩たちに引継ぎ、活動を継続してもらっています。そのことから、卒制もなにかダンボールでできないかと考えて什器をダンボールで作ることにしました。

 

ダンボールでできた卒業制作の什器。

ダンボールと思えないシックなデザイン。

 

—ほんとうにたくさんの経験を積まれたんですね。卒業展では、実行委員として展示全体の企画やSNSなどの企画にも力を入れられてましたよね?

 

はい。展示全体にもかなり力を入れましたね。3年生のときに、先生から声をかけていただき、東北芸工大に卒展の視察にいったんです。その時に、一人ひとりブースがあって什器も充実していたのが印象的で、うちの大学とは違う展示のアプローチをされてたことが興味深かったんです。うちの大学では天板に作品を乗せる形で展示をしていたので。東北芸工大の子には作品が目立つので逆にそれがいいと言われたんですが、自分の展示の時には什器にこだわろうと思いました。クラスメートにも視察のときに撮影した写真を共有して、こうしたらいいんじゃないかとかを提案したりしていました。

 

—視察でお互いに良い影響を与え合うことができたんですね。たしかに今回の卒展はいつもと違い、一人ひとりの個性が際立っていたように思います。学生作品展との違いや実際の展示準備の際の雰囲気はどうでしたか?

 

一人一人の展示したいという意志がとても強かったです。それを汲み取って調整することは大変でしたが、結果すごい見応えのある展示会場になったと思います。

 

—作品で苦労されたのはどんなところですか?

 

この度、卒業制作の一部が「bud brand AWARD 2024 U25」のコンペで特別賞を受賞しました。イタリアのミラノで開催されるミラノサローネに作品を出展することが決まったんです。

 

—そうなんですね、おめでとうございます!

 

ありがとうございます。実は制作段階で内定をいただいていたので、作品のクオリティーを高め、実際の照明として実現する必要があったんです。内部の機構を作るために卒業生を伝って外部の企業へ依頼しました。その分コストもすごくかかりましたが、この機構を作るにはこれくらいの大きさが必要だとかアドバイスをもらったり、プラスチックの細かい部品が必要でCADの製図を助けてくださったりました。また安いコストに抑えるように調整してもらったりと今回依頼してみて自分のデザインでできないところをやり取りした経験が、今後のデザインの仕事でも活かせそうです。ただ、機構を作るときにどうしてもできてしまう隙間などは計算外で、やすりをかける作業や外部の形は自分で制作しています。茶色の木材とみられるのですが、実は木材ではなくフィラメントでできています。

 

 

—外部の発注の苦労もあったんですね。納得いくものができましたか?

 

もっとコンパクトにしたかったというのもあるのですが、作れてよかったです!私はけん玉がお気に入りなんですが、卒制の展示の際にアンケートをとったら、好きな作品が均等に分かれたのでどれも作ってよかったなと思っています!ちなみにコンペではけん玉以外を出展することになりました。けん玉とは一緒に日本で社会人生活を送ろうと思います。笑

 

—アンケートもしっかりとられたんですね!4年間振り返ってみてどうでしたか?

 

普通高校出身で、演劇部だったので、演劇しようと思っていたんですが、学科紹介のとき、(これは後から分かったのですが)担当してくれたのが学科長の風間先生だったんです。そこで、「デザイン向いてるよ」と言われて。何の根拠もなくその言葉だけ信じて入学を決めました。結果、入ってよかったなと思っています。めっちゃ辛かったけど、めっちゃ楽しかったです!同級生とも高め合える環境だったのが良かったです。ダメ出しもたくさんしあいましたが、お互いポジティブにとらえられる関係でした。

 

—ここまで話をお聞きして、宇野さんが引っ張ってこられた影響もあると思います。

 

研究会の影響もあるかもしれないですね。そこでお互いがいい刺激を受けることができました。

今後メーカーに勤めてもコンペとか続けていきたいですね。場所は宮城ですが、視野を広げて頑張っていきたいです。

 

—宇野さんだったらできると思います!最後にこのブログを見ている後輩にメッセージがあればお願いします。

 

学校だけの視野にならないでほしいなと思います。学校の場以外でもインプットできる場所がたくさんあるので、うまく活用しながら活動してほしいです。デザイン事務所の仕事などを後輩にバトンタッチしたりしているので、頑張ってほしいですね。

 


 

バイタリティ溢れる宇野さんの4年間の活動。その4年間の経験の積み重ねが今回のような素晴らしい作品に結びついているのだと思います。宇野さんが残してくれたプロジェクトやその取り組み・姿勢を後輩たちにも受け継いでいってほしいです!

宇野さん、インタビューありがとうございました!

 

 

 

宇野 淑乃 / UNO , Yoshino

2002年生まれ

兵庫県私立雲雀丘学園出身

 

▼宇野さんが受賞されたコンペの展示情報

ミラノデザインウィーク2024

日時: 2024年4月15日(月)~4月21日(日)

会場:Via Tortona 5(トルトーナ地区) Via Tortona, 5, 20144 Milano MI, Italy

 

 

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