キャラクターデザインコース

ゼミ通ヒーローズVol.76 山室美菜子と卒業制作作品『カクロコロ』について語るの巻

 

※「ゼミ通ヒーローズ」とは、京都芸術大学キャラクターデザイン学科ゲームゼミの学生の研究や取り組みについてピックアップし、担当教員村上との対談形式で綴る少々マニアックなブログ記事となっています。

 

山室美菜子さん

 

村上

今回は卒業制作展で奨励賞と同窓会特別賞を受賞した山室美菜子さんのインタビューを行いたいと思います。

 

山室美菜子(以下山室)

ゲームゼミ4年生の山室美菜子です。

私が制作したのはピンボールとエアホッケーを組み合わせたようなゲームで、簡単に言うとプレイヤーをゲームコントローラーのスティック二本で操作するだけのアクションゲームになっています。

 

 

山室

テーマは「居場所を求める」で、そこから「やめられない止まらない」っていうキャッチコピーに収まりました。

どういうことかというと、人が頑張っていく中で「ここで止まらなきゃヤバいんだろうな」とか、「もう寝なきゃ体調崩すんだろうな」っていうところになっても、学生だったら課題の締め切りがあるし、社会人になっても仕事が残ってたりするから結局また頑張り続けてしまう。その状況を深掘りしていくうちに、何でそうなるんだろう?って疑問がわいてきたんです。学生だったら、ゼミに所属したい、そこから出たくない、社会人になったらこの会社にいたいとか、自分が生きていくため、お金を稼ぐにためは働かなきゃいけないっていう、自分の居場所を求めてるから頑張ってしまうんだなっていうところで、人間の欲っていうのは、つまり居場所を求めるところで全て始まっているんじゃないかっていうのを私は研究テーマとして作りました。

それを自分の経験に置き換えたときに、幼馴染と話すような居心地のいい場所でずっと居ることから、新しい友達を求めずにただ自分の居場所の中で過ごすのか、新しい場所に進むのか。ちなみに進むことを「進化」に例えてるんですけど、コミュニティを一歩飛び出すみたいな、例えばリアルで生活している中でネットに一歩足を突っ込んでみようかとか、ネットの中でも違う界隈に一つ踏み込んでみようかっていう、そこでまた友達を作るっていうこともその人にとったら一歩進化したことになるのかもしれないし、私はそこで色んな失敗も成功もしてきたから自分の中での進化だと思ってるんで、テーマを「居場所を求める」、で、コンセプトを「自分の居場所で甘えるのか、次の進化に向けて進むのか」って設定しています。

 

村上

息継ぎナシでしゃべるから1センテンスが長い(笑)

ではゲームデザインとしての工夫を聞かせてくれるかな?

 

山室

私は「プレイヤーに何をさせたいか」から作るのを得意としてるんですけど、今回の場合は人がスティック二本で楽しめるゲームなのに慌てたり声が出たりっていうところを制作したいなって思って、簡単で楽しいっていうのをまずデザインの流れ、ゲームプレイヤーの目線としてのデザインの中で大切にした部分ではあります。ゲーム画面作りとしては、今回ボクセルデザインを採用したんですけど、それは人が視覚で見たときに立方体とか四角形っていう形が安定とか安心とか信頼っていう意味にも置き換えられるので、最初に見るものを全て危険人物には近づいたりしないよねっていうところでボクセルデザインにしました。

 

 

山室

ゲームのルールを簡単に言うと、プレイヤーがボールを蹴って、そこのエリアの人にぶつけるんですけど、それを「一緒に遊んだ」っていうテイで友達を増やしていくゲームです。

マップ中に何十人かのキャラクターがいるので、壁で跳ね返ってホッケー状態でボールを飛ばして、ぶつけたら一人一人消えていくというか、自分の仲間になるとハートのエフェクトが出て、なおかつ「イエーイ!」っていう声とともに人が現れてくるので、自分の仲間になったんだ、って思ってもらえたらいいかなと。

 

村上

深いテーマはあるんだけど、やってることはすごく単純でむしろバカバカしさもあるから、小難しいストーリーで説明することなくストレートに作品のテーマが伝わりやすいんだと思う。

 

山室

そうですね。私もストーリーの導入とかチュートリアルとか一切なしでいきなりゲームスタートできるようなものしか作ってこなかったので。でもまあ、それこそが目指してる形っていうか、展示したときに案内する人が横についていなくても遊んで終われるっていうか。一度自分でやってみてコントローラーを持ってカチカチ動かしている間に、「あ、こういうゲームなんだ。じゃあもう一回やろう」って感じで、家で一人で遊んでるときの感覚のように、展示作品だけどちゃんと遊べたよね、で終われたら、私は今回の卒業展示はやり切ったなって思います。

来場者の方には、とにかくコントローラーを持ってほしいっていうところはありますね。見た目がこんなゲームなので、「マイクラみたい」って言われても、こんなゲーム知ってるとかデザインが可愛いとか、それこそちょっと目を引く展示にしてるんですけど、それにつられて寄ってきた時に、とりあえずコントローラーを持ってみてほしいです。そうしたら多分このゲームのバカバカしさと、もう5分で終わっても10分で終わっても楽しさが伝わると思っています。

 

村上

ゲームを作ってみて得たものって何かある?

 

山室

このゼミのグループワークの多さはめちゃくちゃ良かったです。意見がぶつかり合ったときに、みんな違うんだっていうのを理解できたのも大きいかなと思います。グループワークをやってなかったら、自分が正しいと思い込んで自分の意見を通したいっていう自我から話し合いをしてしまうけど、私たちは、「みんな違ってみんな良い」からこの部分を使いたい。でも自分の案も使いたい、みたいな葛藤の中でゲーム作りをしてて、その悩みが自分を大きく成長させてくれたように感じますね。

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