(大学院)文芸領域 矢内原 美邦
風のことば
見えない世界の足音を探して
<作品名>
新しい靴・新しい道・新しい星・赤い靴の伝説
靴を履く、道を選ぶ、星を⾒る――⼈は動く。動くことで初めて変化が始まる。「新しい靴」「新しい道」「新しい星」 の 3 つの短編は、変化と選択、未知への挑戦を通じて、⼈間の内⾯と成⻑の過程を描き出す。
「新しい靴」では、最初の⼀歩を踏み出す重さと軽やかさを描く。新しい靴は新しい世界を予感させるが、その靴に馴染むまでは痛みが伴う。それでも⼀歩、また⼀歩と⾃分の⾜を進めることで、世界は少しずつ⾃分のものになっていく。
「新しい道」では、⼈⽣の分岐点における選択を描く。選ばれなかった道が静かに消えていく⼀⽅で、選んだ道の先にはまだ何もない。それでも選び進むことで、空⽩だった⾵景に⾊がつく。選択は孤独だが、選び続けることが⽣きることそのものになる。選択は未完成な未来に⼿を伸ばす⾏為だ。
「新しい星」では、夢や希望を⾒つけること、そしてそれを追うことの意味を描く。星は遠い。だからこそ、⼈は空を⾒上げる。届かないものに向かって進むその⾏為こそが、希望の光となり、⼈を照らす。夢は完結しないが、それを追い求める道の中に、未来への意欲が芽⽣える。
⻑編作品「⾚い靴の伝説」は、現代社会の影の中を歩く物語だ。主⼈公サナは、不在の家族、遠い戦争、荒れ果てた⾃然を前にして、それでも歩き続ける。⾚い靴は、サナの願いを⽀える象徴だ。家族に会いたい。その願いは彼⼥を動かし、森の奥へと導く。森は現実と幻想が溶け合う場所。⾃然破壊の荒れた⼤地、戦争の残響、そして静かに進む時間――それらを越えて、サナは⾃分⾃⾝の⼒と向き合う。願いとは、⾃らを突き動かし、未来を形づくる⼒だ。
物語はファンタジーでありながら、現実を切り取る鏡でもある。
これら 4 つの作品は、変化、選択、夢、成⻑というテーマを軸に、⼈が⽌まりそうになる⼼と⾝体をもう⼀度動かすための物語である。世界は待たない。歩み出した者だけが、その先に新しい景⾊を⾒つけることができる。
矢内原 美邦
(大学院)文芸領域
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