障害者の当事者性を効果的に伝えるためのエッセイ制作
(大学院)文芸領域 吉成亜実
『シャバの空気が美味(うま)すぎる ―14年間入院していた難病の私が一人暮らしをするまで―』
障害者の当事者性を効果的に伝えるためのエッセイ制作を行った。エッセイのタイトルは『シャバの空気が美味(うま)すぎる ―14年間入院していた難病の私が一人暮らしをするまで―』。本制作物は、脊髄性筋萎縮症という難病で生まれた私の半生をまとめ、四六版の書籍形式で制作した。本文は全4章、章ごとに1話3,000字程度のエピソードが複数話収録されている。
1章は私の現在の状況と一人暮らしの様子、2章と3章は幼少期から始まり一人暮らしに至るまでの半生、4章は現在感じていること、作品全体を通して現在―過去―現在の流れで展開する。1章では私のある日のスケジュールや外出時の話を例に、ヘルパー制度を利用しながら暮らす私の生活を紹介する。2~3章では、車椅子で地域の小学校に通い始める話から始まり、家族の様子、両親の離婚、長期療養(筋ジス)病棟への入院、入院生活、そして退院までの流れを印象的なエピソードをいくつか紹介しながら順を追って説明する。最後の4章では、改めて現在に戻り「自立した生活って何だろう」という問いに対する自分なりの考えや、「トンネルを掘り続ける人生」というタイトルで、障害がある中で何かをしようとする時には、交渉など戦わなければいけない場面があることの葛藤を伝えるなど、現在自分が感じたり悩んだりしている内容を各話一つのテーマに沿ってまとめている。
医療・福祉関係者、医療・福祉分野の学生、そして障害当事者を主な読者として想定しているが、本書は専門の知識をもたなければ理解できない内輪ネタはあまり使わず、誰でも分かりやすく読みやすい内容と文体を心がけた。そのため、普段障害のある人に関わることのない人にも読みやすい内容となっている。
中には病院関係者や親と対立する場面もあり、彼らが悪者と捉えられてしまう箇所も包み隠さず書いたが、あくまで客観的にファクトだけが伝わるよう心がけた。また、私的な重い出来事を読んでもらうための工夫として、感情表現を抑制し、淡々と記述していくことで、読者の心理的負担を減らし、読み続けやすくなるよう工夫した。
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