耳をすます
(大学院)写真・映像領域 尾山 直子
学長賞
写真と言葉
「最期に聞きたい音は何か」。
20〜100代、60名の人々に問いかけながら、耳の写真を撮影した。
この問いかけからうまれる語りには、多様で豊かな死生観がにじむ。そして、〈同じかたちは存在しない〉耳の写真とならぶことで、その語りは確かな輪郭を持ってこの世界にとどまるのである。
かつて、「老いや死」は暮らしのなかに存在していた。約70年前までは8割を超える人々が自宅でいのちを閉じており、それは営みのひとつであった。しかし現代では、いのちを閉じる場は病院や施設に移り、結果として暮らしのなかで「老いや死」を体感したり、思考を深める機会が少なくなっている。
市井の人々の「生と死の物語」が社会にひらかれ、暮らしのなかで多様な死生観に出逢うことは、だれしもにいつか訪れる「そのとき」に思いを馳せる機会となり、残されている時間を豊かに創造するための土壌になっていくのではないか。作品「耳をすます」が、そういった回路のひとつになることを願っている。
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