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2020文哲研講演会「芸術とこころ-表現することがなぜ治療的なのか-」

2020年12月10日

アクティビティ

 2020年12月9日、学内教職員・学生を対象に講演会「芸術とこころ-表現することがなぜ治療的なのか-」をオンラインで開催いたしました。

 

*文哲研講演会2020「芸術とこころ-表現することがなぜ治療的なのか-」

日 時:2020年12月9日(水)18:30-20:00

講演者:岩宮恵子(島根大学教授、臨床心理学者、心理カウンセラー)

参加者:223名(京都芸術大学 学生・教職員)

 

芸術療法や箱庭療法という心理療法の技法があるように、絵を描いたり箱庭を作るということは、とても治療的な意味をもっています。

今、ネットのなかでさまざまな表現の発信をする若い人たちが増えていますが、その表現に対しての反応に深く傷ついて、心理療法の現場に足を向けるひとも同時に増えています。

最近の若者の全体的な傾向はどうなっているのか、そして「表現すること」や「表現をしているひとを応援すること」(「推し」をもつこと)について、どのような感覚をもっているのか。臨床現場から見えてきたことをお伝えできればと思っています。 (岩宮恵子)

 
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 今回講師をおつとめいただいたのは、島根大学教授で臨床心理士の岩宮恵子先生です。箱庭療法の話、思春期の友人関係やSNS、信仰、「推し」をもつこと…などなど、心理学の視点から日本人の「こころ」を読み解いてゆく、とても興味深く貴重なお話をたくさん伺うことができました。参加者も223名と大変多く、講演後の質疑応答では本当にたくさんのご質問、ご感想をいただきました。

 

【参加者感想(一部抜粋)】

*自分も推しに救われた経験があったのですが、何が自分の中で起きていたのを理解できた感じがしました。

*自分が制作活動をする上でぼんやりと考えてきたことを、ほとんど言語化して頂いたような、理解してもらえていて救われたような心地です。貴重なお話と考える機会をありがとうございました。

*若者の宗教性について、話に出てきた推しに対しての信仰(好意を抱く)をすごく感じます。推しが発したことを全て信じたり、同じ物を買ったりして何か通じるのもを感じ、心が和らぐ感覚はいわゆる『信仰する』に近いことをすごく感じました。

*現実の場では「イツメン」が重視され縛りがきつくなっているとのことですが、それはSNSで親友を作ることができるようになった反動でもあるかもしれませんね。本当に仲の良い子をネット上で作ることができるからこそ、現実にいる人との違和感を感じやすいのかもしれません。

 

【岩宮恵子先生著書のご紹介】

「好きなのにはワケがある 宮崎アニメと思春期のこころ」(筑摩書房)

https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480689092/

「フツーの子の思春期 心理療法の現場から」(岩波書店)

https://www.iwanami.co.jp/book/b262941.html

「思春期をめぐる冒険 心理療法と村上春樹の世界」(創元社)

https://www.sogensha.co.jp/productlist/detail?id=1687

 

 
 

*対面での開催が難しい情勢ではありますが、今後もzoom等を活用しながらセミナーや研究会などを開催する予定です。一般公開セミナー開催の際はこのホームページにてお知らせいたしますので、ぜひ楽しみにお待ちください。

 

 

 

オンライン連続セミナー「文哲研3days#2:潜在するアート」

2020年11月25日

アクティビティ

 2020年10月19日・11月9日・11月24日の3日間、学内教職員・学生を対象に第2回文哲研3days#2「潜在するアート」をオンラインで開催いたしました。

 今年度より文哲研客員教授となられました吉岡洋先生(京都大学こころの未来研究センター)に3日間ご講演いただき、各回それぞれ異なる分野よりディスカッサントをお招きしました。吉岡先生のご専門は美学・芸術学で、現代アートのキュレーターとしてもご活躍、ブログ「tanukinohirune」では芸術・アートのみならず幅広いテーマでユニークな論考を執筆されています。

 今回は“科学・道徳・政治”という一見難しそうなテーマでしたが、吉岡先生はじめディスカッサントの先生方は身近な例をあげてお話ししてくださり、大変わかりやすく好奇心の刺激されるセミナーでした。3日間で246名のみなさまにご参加いただき、質疑応答では活発な議論がなされました。

 

 対面での開催が難しい情勢ではありますが、今後もzoom等を活用しながらセミナーや研究会などを開催する予定です。一般公開セミナー開催の際はこのホームページにてお知らせいたしますので、ぜひ楽しみにお待ちください。

 

 
【連続セミナー「文哲研3days#2:潜在するアート」】
芸術=アートについて考える一般的な観点として、「○○と芸術」という言い方があります。
分かりやすいのですが、これだとまるで「○○」と「芸術」という別々な分野、領域が、空間的に別れて存在しているかのような印象を与えます。
それに対してぼくは、芸術というのは人間の活動の全領域を覆っているものであって、他の様々な領域とオーバーラップしているものだと考えています。
この講義ではそうした観点から、科学、道徳、政治という3つのテーマを取り上げ、それぞれの中にアートがどのように潜在しているのかを考えてみたいと思います。(吉岡洋)
 
 
連続セミナー「文哲研3days#2:潜在するアート」(講演者:吉岡洋) 

 

第1回 「科学に潜在するアート」 10月19日(月)17:30-19:30

ディスカッサント:佐近田展康(名古屋学芸大学 メディアアーティスト)

参加者:84名

 

第2回 「道徳に潜在するアート」 11月09日(月)17:30-19:30

ディスカッサント:山城大督(京都芸術大学 アートプロデュース学科)

参加者:87名

 

第3回 「政治に潜在するアート」 11月24日(火)17:30-19:30 

ディスカッサント:河田学(京都芸術大学 文芸表現学科)

参加者:75名

 

第10回 国際平和博物館会議

2020年9月16日

アクティビティ

 2020年9月16日-20日、第10回 国際平和博物館会議が開催されます。この会議は3年に1度開かれており、今年は京都・広島での開催予定でしたが、新型コロナウイルスの流行をうけ、オンラインでの開催となりました。

 今回は文明哲学研究所も共催しており、本学和太鼓教育センター協力のもと、悳炎(shien)太鼓 悳(shin)による演奏がオープニングを彩ります。

 

*会議詳細は下記ホームページをご覧ください(英語)

https://sites.google.com/view/inmp-2020/home#h.hiyl74j2s51u

 

*和太鼓演奏映像は下記よりご覧いただけます。今月末までご覧いただける予定です。

https://sites.google.com/view/inmp-2020/welcome-introduction

オンライン研究会「文哲研3days#1「架橋する芸術」」

2020年9月15日

アクティビティ

 2020年9月7日・10日・14日の3日間、オンライン研究会「文哲研3days#1[架橋する芸術]」を開催いたしました。

 「芸術と自然」「芸術と社会」「芸術とこころ」をテーマに、所員がそれぞれ研究発表をおこないました。今年度新着任の客員教員や学内関係者など、3日間で計46名のみなさまにご参加いただき、質疑応答では活発な議論がなされました。対面で議論することが難しい情勢の中、今回のオンライン研究会は、お互いを知る機会としても大変有意義なものとなりました。

 今回は関係者のみの研究会でしたが、今後は一般公開の研究会やセミナーなども開催する予定です。

 

*研究会については、こちらもぜひご一読ください。

webマガジン『瓜生通信』

「芸術とは何か、人間とは何か」を問う。-文明哲学研究所の取り組み

 

【報告】「報道と漫画―世界のカーツニストが描く“表現の自由”―」講演会

2019年12月25日

アクティビティ

 2019年12月22日(日)、「報道と漫画―世界のカーツニストが描く“表現の自由”―」講演会が開催されました。

 

日 時:2019年12月22日(土)14:00-16:30

場 所:京都造形芸術大学 興心館K41(講演会)

ゲスト:No-rio(国際政治漫画家)、横田吉昭(共同通信社漫画家)、ロナルド・スチュワート(日本マンガ学会理事)

 

 12月18日~26日にかけて展示しています「報道と漫画―世界のカーツニストが描く“表現の自由”―」展関連企画として、世界で諷刺漫画を発表されているカーツニスト、研究者の先生方をゲストとしてお迎えしました。

 今回、日本とフランスで諷刺漫画を発表されているNo-rio氏より、そのお仕事内容について詳しいお話をお聞かせ頂きました。世界には、規制によって生命や生活まで脅かされる厳しい状況に置かれているカーツニストの現状があります。日本では国家や警察による規制はないものの、自主規制や“不謹慎”という言葉によって、フランスでは歓迎されるような作品がボツになることも多いということが述べられました。同じくカーツニストとして活躍される横田氏からは、通信社からというよりも、実際に漫画を掲載する新聞社の判断でボツになることもあるといった経験談などをお聞かせ頂いたほか、トルコの漫画について、トルコの歴史や情勢を踏まえた話題をご提供頂きました。

 カーツニストのお二人のお話の間に、日本漫画の歴史に詳しいスチュワート先生より、こうした新聞諷刺漫画の持つ機能と役割についての解説をして頂きました。こうした漫画には、見る人を楽しませる娯楽の機能、話題に対して解説したり、批判したりする批評機能、漫画に描くことでより広く人々に知ってもらおうという議題設定機能という3つの機能と役割があるということが述べられました。

 

 ご報告を受けて、諷刺漫画が、ある社会における言論の自由のレベルを示す、「炭鉱のカナリア」のような役割があるということを、フロアの皆様共に再認識させられる講演会となりました。ご来場頂いた皆様からは、次のようなご感想が寄せられました。(質疑・アンケートより一部抜粋)

 

*すべての人々を納得させられたり、好感を得られる漫画や映画など存在しません。抗議や批判を恐れていたら、何も創作できないし、報道できないと感じました。

 *卒業生で、子どもの頃No-rio氏の諷刺漫画に触れました。今回、母校で諷刺漫画の話を聞くことができて嬉しい。

*発表の場に対する息苦しさのある日本で、自由な感情とそれを表現する力をもった造形大の学生の方々に今回のような作品を見てもらえることは非常に貴重だと思う。もし可能であれば、京都造形芸術大の学生さんが世界の風刺画に接して感じたことを聞いてみたい。

 

 今回ゲストの皆様からは、表現の自由というテーマに幅広い視野から切り込み、それに日々向き合っておられる方々の今について、大変貴重なお話しをお聞かせ頂くことができました。この度ご登壇頂いたNo-rio先生、横田先生、スチュワート先生はじめ、ご参加・ご協力頂きました皆様に深く御礼申し上げます。

 

※展示は26日まで開催しています。搬出作業のため、最終日は18時終了となります。ご了承ください。

 

 

今後も文明哲学研究所では、アートと社会に関連した企画を考えます。

「こんな話がきいてみたい」「こういうことをやってみたい」などございましたら、ぜひお声をお聞かせください。

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文明哲学研究所

2015年度以前