- 2019年9月4日
- 日常風景
ゼミ通ヒーローズ Vol.10
ゼミ通ヒーローズ Vol.10
ゲームジャム座談会の巻 Part1
「ゼミ通ヒーローズ」とは、キャラクターデザイン学科のゲームゼミに在籍する学生たちのインタビューを行ないながら、
ゲーム・遊びの研究内容について掘り下げていくというものです。
今春、vol.01~09を実施し、この度シーズン2と題して更にコアなインタビューとして復活させたいと思います。
もうかれこれ3か月以上前の話。我がゲームゼミの学生たちがビットサミット主催のゲームジャム(2日間でゲームを開発するコンテスト)に参加しました。
その完成作品「わーきんぐでっど」がゲーム雑誌のファミ通や電撃PlayStationに記事として取り上げていただいたこともあり、
制作に関わった一部のメンバーと共に、当時の制作を振り返ってみたいと思います。
「わーきんぐでっど」とは。
新卒採用したい就活ゾンビに合格通知を与え、よりレベルの高いゾンビを獲得するゲーム。
左右移動で通知を落とす場所を決め、決定ボタン入力で通知を落下させます。合格通知に当たったゾンビは昇天して画面右下の控室へ移動しますが、
不合格通知に当たったゾンビは突然暴れ始め、ゾンビたちの配置をメチャクチャに引っ掻き回します。
ゾンビにはランクがあり、髪の色が「青<黄<赤」で点数が異なります。高得点となる赤い髪のゾンビを獲得するために、
邪魔なゾンビに一旦不合格通知を与えて場所を移動させ、タイミングを見計らって通知を落としていきます。
ノルマの点数を獲得できればゲームクリア、ダメならゲームオーバーとなります。
このゲームは、ファミ通.comと電撃PlayStationにて紹介記事を掲載していただきました。
ファミ通.com https://www.famitsu.com/news/201906/05177330.html
電撃PlayStation https://dengekionline.com/articles/2559/
村上
ていうか、今回の収録はプランナー4人だけでゲーム企画の話をする予定だったんだけど、
デザイナーの菊竹と奥田が乱入してきたので、急遽6人での収録となります。では皆さん宜しくお願いします。
一同
はい、お願いします。
村上
では、まずは一人ひとり名前と役職を教えて下さい。
石倉
3年の石倉凛太郎(鹿児島工業高等専門学校出身)です。今回はディレクターをやらせていただきました。
3年生のリーダー。
最近眼鏡を外して髪型を変えたが、これがお年頃的なアレなのかリーダーとしての心変わりなのかは本人のみぞ知る。
菊竹
2年の菊竹茉由(福岡県立八幡中央高等学校出身)です。キャラクタ―デザイン兼プランナーでした。
プランナーとしては、企画立ち上げの時に案出しをしたくらいですけど。
2年生のリーダー。絵も描けてプランニングも出来る、所謂歌って踊れるゲームデザイナー。
高校がかなり厳しかったらしく、すっかり心身共に打たれ強くなった。
奥田
2年の奥田菜陽(広島県立広島観音高等学校出身)です。ゲームの中のUIデザインを担当しました。
UIデザインを授業で習うのは後期からなのでまだ先なんですけど、一足先にやってしまいました。
2年生で代議員という大役を司るプランナー兼デザイナー。
とにかく辛いものが大好物で、出された料理には悉く大量の一味唐辛子をまぶし、
RBG値でいうところの「255.0.0」くらい真っ赤に染め上げる。
崎
3年の崎佑輔(奈良県立桜井高等学校出身)です。プランナーという名の声優をしました。効果音・音楽含め音周り全般の編集もやってました。
2年次はプロデュースゼミに在籍していたが、3年次よりゲームゼミに転籍。次々にアイデアを広げ、
遠慮なさすぎる発言でチームを鼓舞するアグレッシブなプランナー。
熊澤
2年の熊澤優依(京都市立銅駝美術工芸高等学校出身)です。崎先輩のサポートという形で音関連のプランナーをやってました。あと、女版ゾンビの声も担当しました。
ゲーム音楽とノベルゲームに興味を持ち、普段はシナリオ作りを中心に勉強しているゲームプランナー。
残念ながら今回の企画ではシナリオは必要なかった…。
西村
2年の西村涼(大阪府立港南造形高等学校出身)です。授業の関係でゲームジャムの現場には行けなかったんですけど、今回はプランナーを担当しました。
物静かな性格ながら内に秘めた熱い向上心から休むことなく技術的な実験を繰り返すなど日々鍛錬を怠らない。
ゲームゼミが誇る静かなるリーサルウェポン。
村上
では、今回のゼミ通ヒーローズはこの面々で対談形式という形で進めていこうと思います。
実際にはゲームジャムの現場で制作に携わったメンバーは、プランナー、デザイナー、プログラマー合わせて12名で、
その他にも、開催前の準備として仕様を考えたりタイトルロゴを作ったりした人を含めると総勢17名くらいになるのかな。
ゲーム開発の中身について触れる前に、そもそも今回のこの企画が何だったのか、プロジェクトの全容について触れておこうか。
まず、今回「ゲームジャム」というイベントに参加したんだけど、このゲームジャムとは「ハッカソン」のゲーム版のことね。
元々ハッカソンはIT関連の企画としてプログラマーを集めて、24時間以内とか48時間以内という制限の中で何か社会に役立つ技術を開発しようっていうイベント。
エンジニアリング用語のハックとマラソンを足した造語ね。ゲームジャムもこれと同じで、
48時間以内に企画・デザイン・サウンド全てを含めてコンピュータ上で動作するゲームを作るコンテストってことになる。
そしてビットサミット(日本最大級のインディーズゲームの祭典)が京都で開催される関係で、京都=学生の町、
歴史文化と最新テクノロジーの混在する町、そして任天堂のお膝元、みたいなところから、
ビットサミットの運営スタッフが関西の大学や専門学校に呼び掛けてゲームジャムを行なうことになったわけ。
で、そこで参加したのが、立命館大学、京都精華大学、大阪電通大、京都コンピュータ学院、ECCコンピュータ専門学校、そして京都造形芸術大学の6校。
その6校の中でゲームデザインやアート、プログラムに興味のある学生たちをシャッフルして、いくつかのチームを作ってそこで出来を競い合うというのが概要です。
石倉
他の教育機関からの参加者はバラバラにしてシャッフルしてましたけど、うちはシャッフルしませんでしたね。
京都コンピュータ学院からナオヤさん(メインプログラムを担当した学生)を吸収しただけっていう。
崎
おいしいところだけ取ってったな(笑)
村上
たった二日間でゲームを完成させたわけだけど、結果的には我々の作ったゲームが「ファミ通.com」さんと「電撃PlayStation」さんの取材を受けて
記事を掲載していただけるという大変ありがたいお話もあったので、ぜひこれは皆さんの実績としてポートフォリオに載せるなど大いに利用しちゃって下さい(笑)。
ではゲームの中身の話をしていこうかな。
石倉
まず今回は参加した全チーム共通で「渾然一体」というテーマが与えられたので、それを元にゲームゼミの2年~4年全体のグループLINE上で企画のコンペをやりましたね。
村上
40人もゼミ生がいるとはいえ、ゴールデンウィークのど真ん中だったし、せいぜい5~6個のネタが集まったらいいなと思ってたんだけど、
皆やたらムキになってどんどん企画を考えて、結局半日で32個ものゲーム企画が上がってきた。あの時のゼミ生全体のテンションの高さはヤバかったよね。
このノリとスピード感がゲームゼミの特徴だなって痛感したよ。
コンペ形式で2年生~4年生の企画草案を集めたところ、6時間で32案ものゲーム企画が集まりました。
石倉
あのコンペが始まった時、僕は東京観光で秋葉原にいたんですけど、後輩が頑張ってアイデアを出してるのをLINEで見てて、
ネットカフェにこもってずっとゲーム企画のネタ出しをやってました。
村上
観光しろよ。せっかく東京まで行ってるのに(笑)
石倉
結局僕は10個くらいゲーム企画案を出しましたね。
村上
ここでゼミ生全員で投票をして、西村の作品が見事1位に。
西村
はい、ありがとうございます。
村上
一番最初の企画案には何て書いてあった?
西村
「降り積もる屍に魂を入れていくテトリス型ゲーム。屍に魂が入ると奇声が鳴り、動き出す。入れる度徐々に音が増えていく。
ステージクリア後には1つの曲(不協和音)が出来上がっている。ステージの進行と共に、蘇った人間と、
この世を滅ぼさない為に人を蘇らせる神(プレイヤー)の苦難のストーリーが展開していく」という内容の提案でした。
村上
不協和音を渾然一体と解釈した企画だったね。
西村
プロットでは抽象的な表現も使ってたので言葉だけじゃ理解してもらえないかもと思って、イラストを描いてアップしたり、
あとはもっと具体的に伝えるためにUNITYで実際に動いてるところを作ってみて、その動画をアップしたりしました。
ゾンビたちがポップコーンみたいに弾けて暴れてたら面白いな、と思って。
これがイメージ画です。
村上
これがアップされた瞬間に全員のイメージががっちり共有できたね。
不思議なことに、抽象的な文章でありながら他の学生が出してきた具体的な案よりも感覚的に「あれ、なんか面白そうだぞ」って思ったんだよな。
みんなは何に魅力を感じた?
崎
僕は厨二心を刺激されました。特に不協和音のくだりが。
菊竹
私は、他の企画よりも内容が想像しやすかったです。
奥田
先生も大絶賛してましたけど、そもそもゾンビっていうモチーフがみんなの共通意識としてあるし、
現代社会へのアンチテーゼとしても使いやすいと感じたからですかね。
崎
村上先生が最初に大絶賛しちゃったから全員バイアスがかかった可能性はありますね(笑)
村上
それは言えてる。反省するわ(苦笑)
石倉
このプロットをもとにどうやってゲームにするかを考えた時に、ちょうどJapan Expoに持ち込むゲーム企画も同時並行で進んでいて、
しかもゲームジャムはテーマ発表から開催まで一週間を切ってる状態だったからとにかく時間がなくて、
リーダーだけ集まって大まかな仕様の方向性を決めることになったんです。
パッと見た感じは普通の落ち物ゲーム(テトリスやぷよぷよみたいなもの)なのに、
実際に遊んでみたらかなりぶっ壊れた印象のゲームにするっていうのを狙ってました。
そして、ゾンビゲームのシチュエーションとして「就活」をモチーフにしようとか、画面構成なんかを固めていきました。
その他にも遊びの要素としてどんなものがあれば面白くなるかを話し合いながら詰めていきました。
その後全メンバーを集めて仕様の詳細を固めていって、UIを含めた画面レイアウトもこの段階で決めました。
菊竹
その時既にゲームジャム開催の二日前でしたね(笑)
作品のテーマとは別に「多様性」っていうイベント全体のテーマがあって、そこにも就活の要素を結びつけてましたね。
なんでこの国の就活生はみんな同じスーツを着て同じ髪型をしなきゃいけないのかっていう疑問から、
そんな就活生に「多様性」を感じる事ができないっていうアンチテーゼをゲームの中に盛り込んでいきました。
多様性を奪われた立場からの、多様性を取り戻すゲームみたいな設定でしたね。
村上
最終的にその設定をゲームストーリーとしてシステムに絡めていったのね。
崎
ゲーム自体のテーマとなってる「渾然一体」は、就活ゾンビの呻き声の不協和音という意味合いと、
暴れるゾンビたちが画面中を混ざり合って弾ける様子に込めたんですよね。まるでミキサーの中身を覗いてるみたいな感じで。
西村
そこは私が想い描いていた通りのゲームになってたと思います。
村上
完成したゲームはビットサミットに出品させていただけたけど、他のライバルチームの作品はどうだった?
熊澤
今回優勝した、赤と青の色眼鏡をつけて遊ぶゲームが感動しました。これは二人で遊ぶゲームだったんですけど、画面の中に青い障害物と赤い障害物があって、
赤い眼鏡をつけてる人には赤い障害物が見えなくて、青い眼鏡をつけてる人には反対に青い障害物が消えるという状況で、
お互いに声を出し合いながら障害物の位置を説明し合って、協力してゴールを目指すゲームになってました。
そんな協力プレイの感覚に渾然一体感があって凄く良かったです。あとはビジュアルも可愛くて、この作品の受賞は納得でした。
ゲームジャムの会場にて、他のチームが制作したゲームを試遊する奥田(左)とちょむ(右)。
村上
個人的には、あの作品が受賞したのは、まず単純に嬉しかったなぁ。ていうのも、ゲームジャムの現場に企画の女の子が一人で乗り込んできて
「仲間が誰もいないので誰か手伝って下さい」って言いながら企画のプレゼンをする姿がたくましかった。
でも最初はそのプレゼン内容が正直あまり面白いと思わなくて少し心配だったんだけど、
徹夜状態で試行錯誤しながら完成まで漕ぎつけて、更には優勝するっていうサクセスストーリーに感動した。
菊竹
なんか、完全にお父さん目線ですね(笑)
崎
それ聞くと、我々は悪役ですね。事前にガチガチに仕様を固めて、しかも11人もの大所帯で乗り込むっていう(笑)
石倉
しかも京都コンピューター学院さんからプログラマーのナオヤさんだけいただいて更に組織力を強化して。
村上
でも彼は石倉の企画プレゼンが面白かったから我々のチームに協力したって言ってたよ。
石倉
本当にありがたい限りです。
菊竹
11人もいるチームに1人で入ってくる勇気が凄いですよ。普通怖いですよね。
奥田
髪染めてるのもウチらだけで浮いてたしね(笑)
村上
ガラの悪い大学だと思われただろうな。
一同
(爆笑)
ゼミ通ヒーローズ Vol.10 Part2に続く