- 2019年11月13日
- 日常風景
ゼミ通ヒーローズVol.15 奥田菜陽と「Happy Elements授業」について語るの巻 Part2
ゼミ通ヒーローズ Vol.15
村上
では、ゲーム制作特殊演習での奥田の作品を見ながら話をしていこうか。
奥田
はい、お願いします。
村上
まず、授業の課題内容はこんな感じね。
<課題内容>
概要:
昼はダメ男、夜は二枚目の主人公タカシが、クラスメイトのコマチとともに現代の京都を舞台に妖怪退治をする。
地獄の入口と呼ばれた六道珍皇寺の井戸が何者かによって開放され、封印されていた妖怪が街に溢れ出した。これらを見つけ、妖怪を封印するたびに妖怪の持つ能力を引き出し自分のものとして吸収していく。(能力に応じて見つけられる妖怪の種類が増えたり移動可能な場所が拡張されていく)
成果物:
このゲームのコンセプトアート1枚と、ゲームに登場するキャラクターの中から任意のものを2体選んで立ち絵を作成。
制作のポイント:
モチーフとなるキャラクターや妖怪、世界観についてのリサーチ及びロケハンを行ない、地域文化・歴史に対する考察を行なってキャラクターをデザインしていく。フィールドワークによる調査過程も成績に反映させる。
村上
これは、授業の前半で制作したコンセプトアートだね。
奥田
これはですね、今まさに敵と戦わんとする主人公タカシと、そこで指示役として登場するヒロインのコマチがいたので、二人が力を合わせている場面を描きました。
スマホゲームのコンセプトアートなので、パッと見たときに分かる色っていうか、まあ、結局私が得意な色を使っちゃったんですけど。キャラクターの顔とエフェクトに視線が行くように頑張って描いたつもりです。
村上
ビビットな色を使ってるところがスマホゲームを意識したっていうこと?
奥田
そうですね。やっぱりスマホの液晶画面ってハッキリした明度差がイメージとしてあったので、明るい所は明るく、暗い所は暗く描きました。
村上
なるほど。今度はキャラクターデザインだけど、だいぶ改良したよね。
奥田
そうですね。最初のバージョンからかなり変わりましたね。
キャラクターのラフスケッチ
ヒロインの最終イメージ。
奥田
これでHappy Elementsさんに見ていただいた時に、コマチが全体的に強すぎると指摘されました。ヒロインなのでもう少し守ってあげたくなるような女の子らしさとか出した方がいいと。
村上
昼バージョンのカタシ、キャラ立ってないな…。最初こんなんだったっけか。これじゃ完全に立場逆だもんね。
奥田
サポート役なのにコマチ一人だけでも戦えそうって言われて。でも何度か修正を加えて、最終的には随分大人しくなりました。
村上
ゲームの主旨には合ってるわな。キャラクターを作る時はどういうところに気を付けてる?
奥田
ポーズですね。あと個人的なこだわりは髪型なんですけど。
ポーズはめちゃくちゃ描き直して、先生にも何回か修正を言われて、ずっと「女の子らしさって何だ!」ってすごい考えました。家に帰ってから鏡の前で悪戦苦闘して(笑)
村上
実際に自分が演じてみて、そこから描いてるのね。
奥田
そうですね。最初の絵は足に結構動きがあったっていうか、足腰が強すぎて。
村上
足腰に力が入るとアクションゲームのヒロインみたいになってしまうよね。
奥田
そうですよね。
村上
じゃあ、主人公のタカシは?
奥田
近寄りがたい雰囲気を出したくて。
村上
いるいる、こんなやつ。これは近寄りがたい(笑)
奥田
設定で一応「昼はあまりパッとしない男」てことになっていて、そんな彼を好きなコマチはちょっと変、みたいな。
村上
そのギャップを演出したくてわざわざこうしたのね。コマチ自体はモテそうなのに、そんな子が惚れた相手がこれかよ(笑)!を狙ったと。
奥田
そうですそうです。めっちゃ友達から気持ち悪いって言われます。こいつが妖怪じゃんって(笑)それでも、よくよく見たら髪がサラサラだったりとか、顔立ちはまぁまぁ良いよね、と言われるようには気を付けました。
村上
目のキャッチライトが目立ってないから死人っぽく見えるな。それは意図的な演出?
奥田
意図的ですね。ハイライトはいつもより小さめに入れるようにしています。順光というよりはどこかの照り返し程度の光に押さえてます。コマチは赤系統のハイライトを入れて強そうに見せてます。
村上
強いヒロインが好き?
奥田
好きですね。私のヒロイン作りのルーツが「るろうに剣心」なんですけど、なんかナヨっとした男の主人公が、ヒロインにケツしばかれながら「さっさと働きなさいよ」とか言われてるのが好きなんです。
村上
ゲームにおいてキャラクターデザインがもたらす効果ってどんなものが考えられる?
キャラクターがいなきゃいけない理由というか。
奥田
入りやすさですかね。自分を照らし合わせる部分っていうのが、ゲーム単体とか遊びだけだったら感じられないですけど、でもキャラクターは鏡の役割もあって明確に自分をここに合わせて良いんだ、ここに立っていて良いんだっていう立ち位置みたいなものを感じることができます。
村上
「ここに立っていて良い」というのは、共感性のことを指してるのか、文字通りその空間に立ってるということなのか、どうなの?
奥田
どちらかというと心理的な意味合いですね。プレイヤー自身を反映するための目印っていうのかな。先生もよく「ゲームキャラクターは記号だ」って仰ってますけど。
村上
なるほどね。これ、結構ショックを受ける学生が多いみたいね。可愛いとかカッコいいキャラクターを描きにこの大学に入って来たのに、いきなり初回の授業で「記号」って言われて。
じゃあ、ビジュアルで惹かれたゲームって何かある?
奥田
めっちゃ最近ですけど「ペルソナ5」ですね。UIも凄いんですけど、とにかくキャラクターが好きで。
村上
なるほど、確かにあれは自分もシステム云々の前にキャラクターとストーリーの魅力に惹かれてエンディングまでいったな。
奥田
子供の頃は、私はたまに周りの流行から外れてて、昔からあるゲームで遊んだりすることもありました。
村上
それは親の影響で?
奥田
いや、なんとなく自然に。家に誰も使わないPlayStation2がずっと置いてあったので、中古でゲームを買っては遊んでましたね。
村上
自分はファミコン以前のカセットテープの時代からゲームで遊んでたんで、デフォルメされたキャラクターどころか記号をキャラクターと見立てて想像だけで遊ぶようなものをやってたんで、今風のシリアスなキャラなんて想像できなくて、「こんなキャラを動かしてゲームとして成立するのかな」って疑問に思ったくらい。ましてや3DCGに変わったときも、これどうやって動かすんだろうって思って。
でも今の学生って、スタートがそこからだから、逆に二頭身キャラクターとか気持ち悪いとは思わない?
奥田
いや、どうなんでしょうね。私は「かまいたちの夜」みたいなキャラクターやビジュアルに凝ってないゲームばかりやってきたので。
村上
凝ってないって言うな(苦笑)キャラクターがシルエットで表示されてるだけね。
奥田
あとは「絶体絶命都市」とか、キャラクターに入り込むよりも状況そのものを楽しむようなものが好きですね。
村上
Happy Elementsさんのゲームでプレイしたものは何?
奥田
「メルクストーリア」と「あんさんぶるスターズ!」ですね。
村上
なるほど、それぞれのタイトルの魅力を感じるポイントは?
奥田
やっぱり絵作りが良いですよね。キャラクターの内面や設定はとりあえず分からなくても、パッと呑み込まれるっていうか、見た瞬間にビビッとくる色とビジュアルが良いなって思ってます。すぐダウンロードしてみようかなってなるぐらい初見で殴られる絵作りだと思います。もちろん世界観とかシステムも良いんですけど、入口が入りやすいって感じがしますね。
村上
自分はコテコテのコンシューマ畑の出身なので最初はその魅力が分からなかったんだけど、実際にプレイしてみたらやっぱりビジュアルで引き込まれていつの間にかハマってしまった。
奥田
たしかに。いや凄いですね本当に。特に「あんスタ」の色はめちゃくちゃ良いなって思います。こんながっつり紫とか使ってるゲームなかなか見かけないんじゃないかな?と思ったり。
村上
で、まさにそれらのゲームを開発してるアートディレクターさんに直接授業を受けてるわけだけど、既存のイラスト系授業との大きな違いは何かある?
奥田
自分は去年イラスト制作の基礎、今年は応用を取っているのですが、流れ的には指示書のようなものがあって、それに沿ったイラストを描いて提出、合評という形なのですが、やっぱりいかに指示書に添えたか、あとイラストとしての出来、デッサンの狂いなどを見られる気がします。
Happy Elementsさんの授業は、絵のクオリティは当たり前として、じゃあそれが実際課金やダウンロードに繋がるのか?とか、こういったモチーフや色からどういう印象をプレイヤーに与えるのかまで、自分が絵を描いて人様に見ていただくまでの流れを強く意識するというのが大きな違いではないでしょうか?
この授業を受けて、実際見る人やプレイする人に届いたところに関する意識を強く持つようになりました。
村上
今回のHappy Elementsさんとの合同授業で得たものって何?
奥田
まず、授業を受けて良かったと思うのは、絵に対する姿勢はかなり変わりましたね。やっぱり趣味で描く絵とプロとして描く絵は別じゃないといけなくて。さっきも話しましたけど、プロはもっと先のことを考えてやってるから、今のレベルで立ち止まってちゃいけないなって思いました。プロとして描く絵は思考のプロセスから絵の作り方からちゃんと状況に合わせて考えなきゃいけないというのを学びましたね。
村上
そもそもアウトプットがあるかどうかなんだよね。趣味で描くと「絵」で終わるけど、ゲームなのであればゲームとして動作したときにどう見えるのかを考えなきゃいけない。
奥田
そこはちゃんと切り分けないといけないなって思ってて、今年はアウトプットの練習ってわけじゃないですけど、自分の絵を実際に物にしたり形にしたいと思ってます。本とかキャラクターグッズとかにしてみて、「映え」を意識したモノづくりをしていくつもりです。
村上
プランナー志望っていうのもあるし、そこも含めてのビジュアル作りをしていくということね。
というわけで、そろそろ時間なのでこの辺で。
ありがとうございました。
奥田
ありがとうございました。