キャラクターデザインコース

ゼミ通ヒーローズvol.14「菊竹茉由と制御について語るの巻」Part2

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ゼミ通ヒーローズvol.14

菊竹茉由と「制御」について語るの巻 Part2

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村上

なるほど。じゃあ今度はゲームゼミの根本の話をするけど、「ゲーム教育」というものについて掘り下げていこうかな。

 

菊竹

また難しい話を…(笑)

 

村上

ゲームって、世の中的にはあまりよろしくないイメージがあるよね。

 

菊竹

やり過ぎたら怒られるとか。まあ、あまり良いイメージは持たれないですね。

 

村上

子供は、宿題をやれと言ってもやらないけど、ゲームは「するな」というと隠れてでもしようとする。それは一体なぜですか?という問いかけから授業は始まるわけだけど。

先日うちの嫁さんがママ友から「子供がずっと隠れてゲームをやってる」と相談を受けたのね。スマホを隠したりパスワードを変えたりしても、意地でも見つけ出してロックも解除して遊ぼうとする。で、依存症になりそうで怖いと。

 

菊竹

でも、ゲームを隠したところで結局探しに行くだけですよね。全く根本解決になってない。

 

村上

そう。でも、例えばサッカーの練習に夢中になってる少年は依存症とは言われないよね。洗濯は大変だし帰りは遅いし、時には怪我もするし。あとは朝練で疲れ果てて授業中はずっと居眠りしてるし、母親からすると結構大変な状態なはず。でもそれは「ヨシ」で、コンピューターゲームは「ナシ」と言われる。

で、そんな世の中的に「ナシ」と言われてるものを君らは一生懸命研究してるわけだよね。

 

菊竹

でもやっぱり遊びって必要ですよ。単純に言うと、楽しくないと何をするにもモチベーションが上がらないし。

 

村上

うちのゼミでは、人を観察してその人を楽しませるための仕組みを考えるっていう創作工程そのものを「遊び」だと定義してる。平たく言うと、クリエイティブこそが遊びであり遊びこそがクリエイティブ。

 

菊竹

絵を描いてて楽しいのは、頭に思い浮かんだものを形にできるのが嬉しいからなんですよね。

描いたものを見てもらうことも出来るし、設定とかつけて物語にもできるし、描いてるときも描いたあとも楽しい。

 

村上

設定を考えてるときが一番楽しいっていうのは、やっぱりプランナーとデザイナーの両方の資質を持ち合わせてるからこその考え方なんだろうね。

 

菊竹

絵に限らないですけど、ただジャンプしてるだけでも楽しいですよ。

 

村上

マリオのコンセプトはそうだね。

 

菊竹

子供の頃って外を走り回るだけでも楽しかったんですよ。どれだけ速く走れるかとか、走ってるときに風が当たったりとか。単純なのに感じられるものがたくさんあって。

 

村上

自分が動くことによって何かが動くから楽しい?

 

菊竹

それもありますけど、それこそ自分を操作してるみたいな感覚ですかね。

 

村上

広い所を走ってるっていうより、制御するっていう感覚の方が大きいのかもね。特に下り坂を全力で走った時なんて、止まらなくなっていく感じにヒヤっとする部分もあって、これ以上スピード出してコケたら大ケガするかも、とか。

 

菊竹

そういうギリギリ感が楽しいですね。

 

村上

具体的に、子供の頃によくやってた遊びって何?

 

菊竹

水泳ですね。毎週テストがあって、そこで頑張ると水泳帽にワッペンをつけてもらえるんですよ。保育園の時とか、ワッペンだらけの帽子をかぶるのが嬉しくて。

 

村上

なるほど。水泳がうまくなったことと同時に承認欲求を満たされて喜び倍増ってことね。その過程でワッペン追加っていう「成長の可視化」があることでモチベーションが維持できる。こういうことを子供の頃に経験しておくと、実際にゲームをつくるとき「人ってこういうことをすると喜ぶ」というのがよく分かって良いよね。

ちなみに今後はどんなゲームを作ってみたい?

 

菊竹

昔遊んだゲームの「ポケモン」とか「サルゲッチュ」とかも好きだったので、そういう古いゲーム対する尊敬っていうか憧れがあって、そこに自分らしさをプラスしていって、同じ面白さを表現できるようなものがつくれたらいいなって思います。

卒業制作でどんなものを作ろうかなって考えながらノートにネタをまとめてるところです。

 

村上

早いな。もう卒業制作の準備してるの?

 

菊竹

夏の卒制中間合評で先輩方の作品を見て、このクォリティまで仕上げるのは大変そうだなとは思ったんですけど、ああいう場で自分が作ったものをちゃんと発表して、今までで一番良いのがつくれたらいいなって思いましたね。単純になんかワクワクするので、もうやっちゃおうかな、って感じです。ただ今はまだUNITYに慣れてないっていうのもあって、なかなか思い通りに動いてくれないんで、その辺りが難しいですね。

でもやっぱりアクションゲームを作りたいです。

 

村上

アクションゲームが作れたら何でも作れるしね。ターン性じゃなくてリアルタイムで同時多発的に色んな処理が発生して、これを制御しながらバグが出ないようにゲームとして成立させるって、かなり大変なんで。自分は昔RPGかアドベンチャーゲームばかり開発してたから全然気づかなかったけど、フリーになって初めてアクションゲームを開発した時に、想定しなきゃいけない要素が多すぎてとにかく大変だった。そんなときにwiiで「スーパーマリオ・ギャラクシー」が発売されて、

 

菊竹

あれはめちゃくちゃ面白いですよね。

 

村上

そう。面白いんだけど、開発者の立場で見てしまうから「一体どんな天才がこれを作ったんだ」って思って心底打ちのめされたね。あまりにもゲームとしての出来が良すぎて…。

当時のクリエーターにとっては「ゼルダの伝説/時のオカリナ」も仕事の教科書と呼ばれてて、制作現場のスタッフたちと「どうやったらこれを越えられるのか」って真剣に議論したこともあった。

 

菊竹

ゼルダも神ゲーですよね。

 

村上

さっき「制御感」が面白いって話が出てたけど、特にアクションゲームは思い通りに動くから面白いっていうものもあれば、初期の「バイオハザード」みたいに「上を押しても上に行かない」という操作性に慣れるまでに時間がかかってそれが恐怖を演出していて、操作に慣れてきた頃にストーリーに入り込んでいけるようになるっていう構造のものもあるよね。

 

菊竹

それで一つ思い出しました。前にPC用のフリーゲームで遊んでたんですけど、それはプレイヤーがすごく小さくて、少し移動させただけでも自分が思ってるより遠くまで移動しちゃって、すぐに敵に当たって死んじゃうんですよ。この操作に慣れるまでが大変なんですけど、制御できるようになってきてからが急に楽しくなるんです。右を押して急速に右へ移動し始めたときに左を押してブレーキをかけて、思い通りのタイミングと場所で止まってくれたときに嬉しくなるんです。

 

村上

なるほどね。そういう制御感でいくとレースゲームなんかだと分かりやすいね。「マリオカート」は割と直感的な操作で思い通りに動くから楽しいと思うのね。これに対して「グランツーリスモ」はレースゲームではなくてドライブシミュレーターと呼ばれてるように、とにかく実車をモチーフにしてるから挙動がリアルで、それだけに「マリオカート」の感覚で操作をすると一瞬で事故る(笑)

個人的にはセガサターンで発売された「セガラリー」っていうレースゲームが凄く好きなんだけど、あれはドリフトの感覚を楽しむゲームになっていて、車体が滑って制御できなくなるギリギリの感覚がとにかく楽しい。思い通りにいかなさそうなものを動かす喜びってゲームにとって凄く大事なんじゃないかなって思うね。

と、レースゲームの話をしたけど、逆に現実世界ではどう?制御できないことだらけで大変だよね。

 

菊竹

そうですね、現実で大変なのはグループの話し合いとかですかね。一年生の時にグループでアナログゲームを制作したんですけど、なかなかうまく話しがまとまらなくて…。でも最後に「これでいこう!」って決まった時にはすごくスッキリしました。

 

村上

全員が黙り込むような状況よりは全然良いけど、個性の強いメンバーが集まってそれぞれ違う事を言うと、それを制御するのは難しいよね。

 

菊竹

なので、強制じゃなくて誘導する方法を考えました。

まず「これはどう?」ってアイデアを提案するんですけど、たくさんの選択肢になるようなアイデアを先に考えておいて、私が密かに一番推したいアイデアにみんなが食いつくように話を進めていくんです。で、誰かが食いついたら即座に「じゃそれで!」て言ってどんどん決定していきます。もちろん皆の意見は取り入れながらですけどね。

 

村上

自分のアイデアを強要するんじゃなくて、グループメンバー全員がまるで自分が決めたかのように演出をして、実は自分の思い通りのアイデアで固めていくっていう方法ね。

RPGのゲーム展開なんかはそういう構造になってるよね。自分で道を開拓したかのように錯覚させておいて、でも結局は一本道でした、みたいな。「説明」じゃなくてストーリーによる「表現」になってるから一本道であることになかなか気付かずに没入していく。掌で転がすって感じ(笑)

 

菊竹

言い方悪いですけど、でも、そういうことですよね。道筋はともかく最終的に皆が能動的になれることが一番良いので。やっぱり自分が考えた通りに進んでくれたら楽しいなっていうのはありますね。

 

村上

17人もいるゲームゼミの面々をどうやって制御するかっていう問題があるけどね。

良い結果を求めようと思ったら、結局チームワークが全てになってくるんだよね。

 

菊竹

そうですね。

 

村上

過去最多人数のゼミ生を引っ張っていくにあたって、これからはリーダーの菊竹に対して「おいリーダー、何をやってるんだ」ってお説教をすることが多くなってくるから、とにかくメンタルを強く持っていてほしいな。

 

菊竹

メンタルに関しては、昔一回折れてるんで(笑)、もう大丈夫です。

 

村上

折れ癖がつくってことはないよね(笑)

 

菊竹

はい、大丈夫だと思います。

 

村上

ではこれからも頑張って下さいな。ではインタビュー収録ありがとうございました。

 

菊竹

ありがとうございました。

 

 

 

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