キャラクターデザインコース

ゼミ通ヒーローズVol.13 岩本穂ノ実と「ゲーミフィケーション」について語るの巻 Part 1

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今回のゼミ通ヒーローズは、村上ゼミ2年生の岩本穂ノ実さん(大阪市立工芸高等学校出身)をピックアップします。

 

 

村上

ゲームの領域を希望したのはどうして?

 

岩本

高校の卒業制作でゲームを作ったんですけど、その反応が良かったので。あと、門瀬先輩(門瀬菫/ゲームゼミ4年生)が「私は毎週企画を考えて村上先生に見てもらったよ」て言ってたので、じゃあ私も見てもらおうかなって思って。

 

村上

岩本は毎週ゲームの企画を考えて簡易の企画書を持ってきたもんね。なんか凄く熱心な学生が入って来たな、っていう印象だった。どれも遊びのコンセプトをしっかり言語化した企画案になってたし。コンセプトをまとめるのはプロも苦労するんだけど、逆に言うとそこさえ固まってしまえばあとは装飾の問題だけなんでね。そんな一番大事なところを週に一回考えて持ってくる姿勢が素晴らしい。

 

岩本

前期一杯は週に一本企画を考えてましたけど、でも後期に入ると二週間に一本くらいのペースになってましたね。

 

村上

それでも二週間に一本は凄いな。ネタは何本くらい溜まった?

 

岩本

ネタ自体はたくさんありましたね。でも去年の台風のときに全部消えました(笑)

 

村上

あの被害の大きかった台風21号ね。

 

岩本

私の部屋は三階なんですけど、向かいの家の一階にある物置が飛んできて私の部屋を直撃して、机の上に置いてあった全ての企画書が雨風と共に全部消滅しました(笑)

そこから、企画書は手書きじゃなくてデジタルデータで保存しなきゃって思いましたね。

 

村上

三階に直撃って凄いな。

 

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村上 つまり、こう…で、

 

 

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村上 こう…てこと?

 

岩本

はい、そうです。今となってはもう、これですらネタですけどね(笑)

 

村上

…壮絶やな。でも思考のプロセスはもう理解できただろうし、題材が変わろうと何だろうとナンボでも企画を立てられるようになったよね。

 

岩本

はい、できますね。

 

村上

最初の一年で経験値も溜まって企画レベルも上がって、結果的には良かったね。消滅した当時はかなり荒れてたけど…。

 

岩本

そりゃ、なんでやねーん!てなりますよ。物置は空を飛ぶものじゃないですもん。

 

村上

いっそのこと、これをネタにして風を使ったギミックとか考えられないかな。例えばコントローラを握って、LRのスティックを回転させてつむじ風を起こして、LRボタンで強度を調整したり。

 

岩本

風を起こすでもいいし、風を利用して主人公を動かすって形でもいけそうですね。

 

村上

キャラクターやストーリーよりも、岩本の場合そういうインターフェースの面白さだけで勝負するような企画を考えるのが得意だもんね。昔からそういうゲームが好きなの?

 

岩本

いや、別に…。私はそんなにゲームが好きじゃないんで(笑)

特にこれが好きっていうのはなくて、自分の作ったものに対して何かしら反応がくるのが楽しいから作ってるって感じですね。

 

村上

表現したいものは特にないってこと?

 

岩本

特にないです。その場その場で作りたい内容も変わるので。

 

村上

共通のテーマみたいなものはあるの?

 

岩本

共通のテーマは、大体私の不満からきてます。今回授業で考えた出席カードのゲーミフィケーション企画も、普段授業で使ってる出席カードが糞つまらないので、それを変えたくて考えたものだし。

 

村上

…ゼミ生は担当教員に似るっていうけども、「糞つまらない」とか。入学当時は素直ないい子だったのに、そんなところ似てしまって…。

 

岩本

そうです。先生のせいですよ。

 

村上

じゃあ、何か不満を抱えたときに、そこからどうするの?企画の方法として。

 

岩本

不満をLINEにメモしてるんですよ。一回書き出すことによって、自分が何に対してどう怒ってるのか、というのをより客観視できるんですね。で、それを解決するためにゲームの形にしたり。

 

村上

ゲームシステムに落とし込む前段階のプロセスはどんな感じ?

 

岩本

以前書いた企画で、カップルが二人で並んで座って、お互いに近づきたくなるゲームの企画があったじゃないですか。あれは私が電車に乗ってるときに、目の前でカップルがイチャついてて腹が立ったんですね。で、別れさせたかったんです(笑)

 

村上

な、なるほど(笑)で?

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岩本

ゲームをクリアできなかった時に、二人の間でモヤモヤするというか、ちょっとしこりが残るようなゲームを作りたいなって思って。あの時は日本ゲーム大賞のお題にもなってた「☆」をテーマに企画を考えてみたんです。

「織姫と彦星」をモチーフにして、邪魔な星をスワイプで弾いたり、飛んでくるハートを弾いて隣に座ってる人のスマホの画面に飛ばすんですよ。送ったハートの数によってエンディングが変わるっていう内容でした。でも結果的にカップルを仲良くさせるゲームになっちゃいました。

 

村上

新人さんがゲームの企画書を作る時って大抵キャラクターやストーリーありきの企画を考えるんだけど、岩本の場合はこういう感じでコンセプトありきで考えることに慣れてるよね。

 

岩本

そうですね。キャラクターから入るってことはこれまでなかったですね。ゲームはやっぱりルールと仕組みの面白さが大事だと思ってるんで。今回の企画でも、最初は織姫と彦星って設定にしたら何かがうまくいかなかったんですよ。それよりも、吊り橋効果というか、二人で協力することで絆が深まるような「体験をデザイン」してみようって思ったんですね。

 

村上

なるほどね。そんなコテコテのゲームデザインを学んで、そして今は授業でそれを別の方向に活かしてみようとしてるけども、ここから本題の方に移ろうかな。今回はゲーミフィケーションね。

 

岩本

世の中の問題点に着目して、ゲームの仕組みを利用して解決しようってやつですね。人に命令とか強制をするんじゃなくて、自分から動きたくなるように仕向けるっていうか。

 

村上

その通り。で、ゲーミフィケーションという言葉は授業を受けるまでに聞いたことはあった?

 

岩本

いや、初めて聞いた言葉だったんですけど、授業で聞いた時は最初「ゲー」ってついてるからゲームに関係する何かなのかなと思いました。

 

村上

「ゲーミフィケーション」は「ゲーム化する」の意味ね。2008年以降海外で浸透してきた考え方なんだけど、実は日本ではまだあまり認知されていない。デザインと名の付く仕事をしてる人が感覚的に理解してるくらいかな。

とはいえゲーミフィケーションなんて言葉を使わなくても、単純なところでいうと「ポイントカード」なんかが分かりやすいけど、既に生活の中に浸透してるといえば浸透してる。

 

岩本

男子トイレのハエのやつとかは有名ですよね。よく考えられてると思います。

 

村上

小便器の内側にハエの絵柄が焼き込まれてて、ついそこを目指して用を足したくなる。すると尿が飛び散らなくなるのでトイレが清潔になるっていうゲーミフィケーションね。

そんな基礎知識を得た上で、今回の課題としては「学内の問題を、ゲーミフィケーションを使って解決してみよう」って課題を出した。で、実際に企画に入る前に、「つまらない授業を面白くする方法とは」という話も出たね。

 

岩本

フィードバックのない授業はつまらない、とか。

 

村上

ゲームの7要素を当てはめて考えた時に、そのどれにも該当しない授業はつまらないから学生が寝ちゃう。やっぱりその中でもフィードバックって一番大きい要素かな。

 

ゲームの7要素

1:即時フィードバック

2:達成可能な目標設定

3:称賛演出

4:成長の可視化

5:自己表現

6:自己統制感の演出

7:PDCAサイクルの体得

 

岩本

そうですね。教員が一方的に説明するだけの授業は聞きたいと思わないですよね。それならわざわざ出席しなくたって、YouTubeでええやんってなりますし。あとはレジュメに書いてる内容を話すだけだったらそのレジュメを配布してくれればそれでいいし。

 

村上

パワポを使えば使うほど聞き手の心が離れていくって学生から聞いて、自分の授業内容を見直したことがあった。

 

岩本

それ、本当に人に見せるつもりで作ったパワポなの?て思う時ありますよね。文字がギッシリ詰まってたりして。学生たちは授業を聞かずに必死でスクリーンの写メ撮ってますよ。パワポに限らず、文字がいっぱい出てきた時点でやる気はそがれますよね。

 

村上

ゲームの授業でも、特に1年の序盤はパワポを使った座学が多かったけど、やっぱりキツかった?

 

岩本

はい、寝てました。ごめんなさーい(笑)

 

村上

ほほう。

 

岩本

部屋が暗いから寝てても気付かれないし、別にいいかなって思って。頬杖ついて、反対の手でペンを持って寝てると、暗がりで見たとき一生懸命授業を聞いてるように見えるんですよね(笑)

 

村上

なるほど、そうきたか。じゃあインタビューの主旨を変更して、「寝ないための授業デザイン」という内容で議論しようぜ。

 

岩本

最初の頃って、結構学生に語り掛けてくれてたり、その回答を膨らませて議論をさせてくれたり、そんなフィードバックがたくさんあったじゃないですか。その参加意識が授業の面白さだと思うんですけど、授業が進むとだんだん情報量が多くなってきて、話が一方的になっていくっていう(笑)内容的には仕方がないとは思うんですけどね…。

 

村上

要はプレゼンテーションがスピーチになってしまってるってことかな。ただ、この授業を立ち上げたのが8年前で、その頃は学生をいじりながらじっくりと進めてたんだけどね。受講生も10人くらいしかいなかった時代だから座談会感覚で授業ができていたんだけど。

 

岩本

人数が増えたら一人ひとりと話すことができなくなりますよね。

 

村上

ゲーム概論を語るときの情報量も年々増えていくんだよね。ゲームの世界って、世の中の動きに合わせて凄まじい速度で開拓されていくし、インターフェースに応じてゲームが進化してるので。しかも立ち上げ時からの8年分の蓄積だけでも物凄い量だから、年を追うごとにいつの間にか授業時間が圧迫して説明だけで終わる感じになってきてるんだね。かといって古い情報を切り捨てるわけにもいかなくて、端折りながらも説明していかなきゃいけないわけで。

 

岩本

それ、言い訳ですよね(笑)。

 

村上

いや…そうなんだけど…。何か解決する方法があればとは思うんだけどね。

 

岩本

結局学生に寝られたら意味ないんですけどね(笑)

 

村上

今日は随分辛口でくるな(笑)。だんだん悲しくなってきたけどもう少しだけ頑張るよ。

 

岩本

いやいや、私がゲームゼミに入ったのは村上先生がいたからなんですよ。

 

村上

散々ボロカスに言ったくせに(笑)

 

岩本

だって毎回企画書を持っていったらちゃんと読んでフィードバックくれるし。

 

村上

ゲーム業界にいたからフィードバックをちゃんとするのは慣れてるというか、それがあって当たり前の世界だったんでね。

 

Part2に続く

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