- 2021年8月4日
- 日常風景
教員がいま語りたい、いくつかのこと【第一回・山田隆道先生】
こんにちは、文芸表現学科です!
本日より月一回、学科の担当教員に執筆してもらう「先生ブログ」をスタートさせます!
一括りに文芸の先生といっても、作家や小説家、書評家、文学研究者、詩人、編集者など、さまざまな「ことばのプロ」が勢ぞろいしています。
ブログ記事の内容もそれぞれの先生の個性が爆発する予感しかありません!楽しみにしていてくださいね。
記念すべき第一回目は、学科長・山田隆道先生です。
学科長ならではの目線で、文芸表現学科について紹介してくださいます。
山田先生の特徴はズバリ、声がとっても大きいところ!
大きな声で語りかけられているのをイメージしながら読んでみてください。
(以下、山田先生による執筆)
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こんにちは、文芸表現学科・学科長の山田隆道です。
こうして学科ブログに寄稿するのは、実は初めてのことだったりします。なんか緊張しますね。
さて、どうしましょうか。定番ですが、まずは簡単に自己紹介でもしましょうか。
えっと、専門は文芸創作です。すなわち僕自身も創作者、いわゆる作家だったりするわけですが、とはいえ、みなさんがイメージしている作家とは少しちがうかもしれません。
僕の場合はもともとお笑いやバラエティ番組の放送作家からキャリアをスタートさせて、その後に脚本、小説、エッセイなど、いろいろなジャンルの文章を書き散らかしながら、文芸領域の各所で拾い食いしてきたような作家です。マルチといえば聞こえはいいですが、落ち着きがないだけかもしれません。あと、よくしゃべります。
では、お次はそんな山田の視点で、我が文芸表現学科の紹介をさせていただきますね。
えっと、うちは芸術大学の中にある文芸表現学科なんです。ですから、一般大学の普通の文学部とはちがって、芸大の「文芸」ならではの特色があるわけですが、それは簡単に言うと「読む」「書く」「編む」の3点を主軸として、言葉による多様な表現を追求しているということです。一般的な文学部が文芸作品の読解・研究に重点を置いているのに対して、我が文芸表現学科は読解を基礎としながら、学生たちが新たな文芸作品の創作・執筆・編集に取り組み、社会に発信することに重点を置いているわけです。
▲学科の本棚には、日本・海外さまざまなジャンルの本がびっしりと並んでいます。
そんな文芸表現学科ですから、うちの在学生たちは1年生~4年生まで、それぞれが多様な創作活動に取り組んでいます。ざっと挙げると、以下が代表的です。
「小説(純文学、エンタメ、ライトノベルなど)の創作・執筆⇒各種新人賞への応募」
「脚本(ドラマ、映画、演劇)の創作・執筆⇒各種新人賞への応募」
「現地取材やインタビュー取材、資料文献などをもとにしたアーティクル、ルポルタージュ、批評・評論、エッセイなどのノンフィクション作品の執筆」
「詩、短歌、俳句の創作⇒展示会の運営や、短歌サークルの活動」
「雑誌や書籍の企画・取材・執筆・編集・制作(グループでの取り組み)」
上記で一番多いのは、やはり小説を書いている学生ですかね。この学科では、小説が好きな若者同士が互いの作品を読み合い、意見を交わし合うという光景が日常的に見られます。過去には在学中に小説家デビューした人や、卒業後にデビューした人もいます。読書離れが叫ばれる昨今、一般社会ではなかなか小説好きの仲間と出会えないかもしれませんが、ここにはごろごろいるからおもしろいものです。
▲同じ作品を読み、意見・感想を話し合う「百讀」という授業。この授業も日常で小説について話し合う一つのきっかけになっています。
もちろん、この他にもTRPGなどのゲームシナリオの創作に取り組んでいる学生や、大阪の「よしもと漫才劇場」で制作進行の仕事をしつつ、お笑いの勉強をしている学生、写真・映像・イラストなどのヴィジュアル表現と文芸表現を組み合わせた活動をしている学生など、本当に多種多様な取り組みを行っている学生がいます。共通点は「言葉による表現」といったところでしょうか。
だからこそ、この多様な学生たちを指導する教員陣も実にさまざまです。小説家、脚本家、放送作家、ノンフィクション作家、ライター、編集者、書評家、文学研究者、文芸評論家、詩人、歌人、俳人、ブックデザイナー、書店員など、文芸(言葉)領域でのさまざまな専門家や、経験豊富な実務家が教員(非常勤含む)となって、学生のニーズに応じた指導を行っています。言葉は誰でも使えるからこそ、その表現には無限の広がりがあるのです。
▲結局、先生って何してる人?という疑問に答えてくれるのが「プロフェッショナル特講」という授業です。授業についてのブログ記事はこちらの画像から読むことができます↑
あっというまに1400字を超えてしまいました。そろそろまとめます。
最後に山田の密かな野望、いや、そんなたいしたものではないですが、一丁前に学科長として今後のヴィジョンみたいなものを少し語らせてください。これ、今の段階では僕の極めて個人的な想いです。なので、実現するかどうかはまだわからないのですが、ぼんやり以下のことを考えています。
それは現在の文芸表現学科の主軸となっている「読む」「書く」「編む」に、新たに「聞く(聴く)」「話す」を加えたいということです。「読む」「書く」「編む」はいずれも「書き言葉」の領域ですが、我々が普段なにげなく使っている「話し言葉」だって立派な言葉による表現活動です。
すでに文芸表現学科では、他人の話を傾聴する「インタビュー」について演習形式で学ぶ授業があったり、プロの落語家さんの教員による落語の授業があったりします。今後はアナウンサーの教員による「話し言葉」についての全般的な授業、もしくは朗読やナレーション、実況など、ジャンルごとの演習授業なんてあったらおもしろそうだなと思っていたりいなかったり。
実は僕自身、文筆業の一方でイベントの司会業やラジオパーソナリティの仕事を盛んにやっていた時期がありますから、話し言葉の奥深さは実感してきました。立て板に水のごとく話すという、言わば巧みな「話術」ばかりが「話芸」とは限りません。「うまい話術」と「おもしろい話芸」はまた異なるものだったりします。そのへんのことを、噺家やアナウンサーの方々と一緒に深めていきたいものです。
あ、ちょっと油断したら長くなってしまいました(2000字超えた)。おしゃべりは厄介ですね。
この「話し言葉」についてはもっと語りたいことがあるのですが、それはまた稿を改めることにしましょう。ビリー・ワイルダー脚本でいうところの「それはまた別の話」ってやつです。
(文芸表現学科 学科長・山田隆道/構成:学科ブログライター 1年・中島明日香)