文化財保存修復・歴史遺産コース

はじめての1day 芸大体験 ご参加ありがとうございました!

こんにちは。歴史遺産学科の木村栄美です。

 

12/25(土)に開催しました「高校1,2年生のための1Day、芸大体験」における体験授業の様子をお届けします。歴史遺産学科の授業には、15名の方にお申込みいただき、13名の方にご参加いただきました。ご参加くださったみなさま、ありがとうございました!

 

今回の授業は、「江戸時代へタイムスリップ!—名所図会に色を塗ってみよう—」というテーマで、江戸時代におけるガイドブックのベストセラー『都名所図会』など京都に関する名所図会シリーズを取り上げました。

 

体験授業の様子

 

 

都名所シリーズは、安永9年(1780)に刊行された『都名所図会』を皮切に、『拾遺都名所図会』(1787年)、『都林泉名勝図会』(1799年)が刊行されました。京都の名所、旧跡、名産、行事の由来等について、当時の人々の目にどのように映っていたのかを学び、名所シリーズの挿絵部分に、顔料か色鉛筆で着色してもらいました。課題は6つ。

 

6つの絵図に着色を施した例

 

 

まずは京都を代表する桜について。京都における桜の名所はいくつかありますが、『都名所図会』から取り上げたのは、祇園の桜です(図1)。

 

(図1)

 

当時桜の品種は69種あったこと、特に洛東の桜は他の地よりも優品であったことが記されています。授業では省略してしまったのですが、桜の文字については中国の桜桃(すなわちさくらんぼ)から桜を切り取って充てたこと、当時の中国(清)では日本から桜の実を持ち帰り育て、鉢に植えて鑑賞していたようです。挿絵は左に殿方、右に婦人方(約1名酔っ払いが混じっていますが)描かれていて、桜に短冊が掛かっているので逢引の約束を取り付けるところでしょうか。

 

その他『都名所図会』からは、豊臣家ゆかりの方広寺前で売られていた幻の銘菓・大仏餅に関する挿絵を取り上げました(図2)。

 

 

(図2)

 

大仏餅の店の屋根に掲げられている額看板は、唐破風で“大仏御餅所”は、17世紀中ごろに活躍した書家・井出松翠(正水)の書と伝わっていたようです。

 

 

『拾遺都名所図会』からは、かつて名産だった鳥羽の真桑瓜の収穫を描いた挿絵(図3)、祇園祭の鉾に乗る稚児の由来に関する挿絵(図4)を取り上げました。

 

 

(図3)

 

(図4)

 

真桑瓜の挿絵では、収穫の様子が描かれていますが、右側の人たちは収穫しつつも、獲れたてのみずみずしい(おそらく)瓜を食しているところが描かれています。真桑瓜は近世には、お中元等でよく贈答品として用いられていました。

『都林泉名勝図会』から、祇園社前の東西にあった二軒茶屋の由来と豆腐田楽のパフォーマンスに西洋人(オランダ人)が見入っている挿絵(図5)、現在愛知県犬山市にある国宝の茶室・如庵を描いた挿絵(図6)を取り上げました。

 

 

(図5)

 

(図6)

 

『都名所図会』『拾遺都名所図会』が名所、行事、名産品に関する歴史、由来を取り上げているのに対して、『都林泉名勝図会』は名勝の庭、景観を中心に描き、その歴史や時代経過における変化に触れています。織田信長の弟・織田長益(有楽斎)ゆかりの茶室が、当時から名所として注目されていたことを窺わせています。

 

受講者のみなさんには、好きな課題を選んでもらい、塗り絵開始です。祇園祭における稚児の挿絵が人気だったのか、手に取っている人が多かったです。思い思いの色を選びながら、塗り絵作業に熱心に取り組んでいましたが、過去を想像しながら色を付けることが難しかったこと、また顔料における色の配合等が難しかったようです。色合いによってかなり斬新な作品になっていました。印象深かったのは、雷が轟く中まるで稚児が天から降臨したかのようなイメージを起こさせる色合いの作品があったことです。

 

塗り絵の様子

 

 

最後に一人一人に色を塗った感想などを述べてもらいましたが、やはり見たことのない景色に色を塗る、ということがとても難しかったようです。

 

 

最後まで楽しんでいただけたでしょうか。

短い時間でしたので、物足りない部分もあったかと思いますが、今回取り上げた都名所図会シリーズの挿絵は、実測に基づいてかなり正確に描かれています。塗ることのできなかった課題はお土産として持って帰ってもらったのですが、京都を観光するときはぜひそうした挿絵を参考にしていただいて、現在と過去を見比べその相違に気づいていただき、歴史的変遷を学んでいただけたら、と思います。

 

ぜひ歴史遺産学科へ!!お待ちしております。

 

 

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