アートプロデュースコース

梅田哲也/「エコー」するアーティスト・トーク

6月21日、高槻芸術時間「インタールード」のプレイベントとして、参加アーティストの一人である梅田哲也のアーティスト・トークが、高槻現代劇場 市民会館の大ホールで行われた。

 

火曜の夜。

外は大雨。

観客は、客席を素通りしてステージ上に誘導され、客席側を眺めるように並べられた椅子に着席する。

開始5分前、劇場では聞き慣れたあのブザー音が響く。トークイベントには似合わないブザー音が、このイベントの「おかしさ」を予告していたのかもしれない。その「おかしさ」に拍車をかけるように、トーク開始の合図として、学校のチャイムが流される。

 

まず、現れたのは司会を務めるアーティスティック・ディレクターの山城大督だ。

 

聞き手 アートプロデュース学科 山城大督

 

初めに、山城から「インタールード」の紹介が行われる。(「インタールード」について別の記事を参照されたい。)

 

そしていよいよ、梅田が登場する。

本人曰く、トークイベントを行うのは梅田にとって、とても珍しいことらしい。

梅田は、自身の作品を「ツアー型の展覧会」あるいは「ツアーパフォーマンス」とも似ている形式のものだと説明する。

その試みは、今まで私たちが出会ってきたさまざまな「場」と、出会い直す機会を与える。

 

次に梅田は、自身の活動をまとめた映像をみてもらいたいと観客に案内する。

 

梅田哲也

 

映像が流れ始める。

それに加え、梅田が解説を入れていく。ここまでは「よくある」トークイベントだ。

しかし、次の瞬間から本トークイベントは「よくある」イベントのかたちから「ずれ」ていく。

 

 

作品紹介の様子

 

最初の「ずれ」は、梅田ではない誰か(声)が梅田の解説を追随し始めたことによって生じる。
観客は、何が始まったのかと、そわそわし、戸惑い、ざわついた空気を隠せない。
しばらくすると、追随する声が止み、梅田の声がディレイし出す。
ついに梅田はマイクを置き、ディレイだと思われていた音声だけが再生される。実際は録音された音声を梅田が先に発していただけだったのだ。
マイクを置いた梅田は映像の鑑賞者へと変態する。
つまり、大過去の映像にあてられた現在形の梅田の声が、現在形の他者の声へと共振し、過去形の声へと「エコー」していく。こうした時間と距離の旅へと、劇場という船は出航したのだ。または、現在形の時間・空間に立脚する観客を、大過去の映像へと移入させていく仕掛けだったとも言えるかもしれない。

 

そうだ、この劇場も過去になろうとしているのだ。

暗転された劇場に点々と灯る非常口のランプが、劇場内の私たちを、その扉の向こうに広がる現在から隔絶しているようにさえ思えた。

 

大過去へとさらわれたような気になっている私は、さらに遠くへと連れていかれる。

度々、複数人のため息のようなものや、感嘆の声が突然再生されるのだ。それを聞いた私は、「いまここ」にいる観客以外の観客の存在を想像せざるを得なくなる。

 

映像も終盤に差し掛かると、梅田が再びマイクを握り、解説を始める。過去の声と、現在の声の重奏を観客は聴くこととなる。私たちの知らない時制・空間が、その重奏により生起する。いや、これこそ「いまここ」なのだ。

しばらくしてから、梅田がいつからか口パクをしていることに気づく。「いまここ」に立脚する身体が、過去によって振り付けされる。これは梅田の制作過程にも通ずる態度なのかもしれない。

つまり、観客は、映像を単に視聴していたのではなく、梅田作品の持つイメージをまさに「いまここ」で体験していたのだ。

 

次に、梅田が構成・演出を手がけたシアターコクーンでのライブ配信、『プレイタイム』のハイライトが上映される。上映中、観客のはるか頭上に吊られたミラーボールが、懐中電灯によって照らされる。劇場全体に「エコー」するミラーボールの光をみながら、私たちはこの劇場とそろそろ「さようなら」をしなければならないのだと、私は少し感傷的になった。そう、すでに私たちは「インタールード」に位置しているのだ。

 

ミラーボールの演出

 

 

客席の灯りがじわりとつき、ブザーが鳴る。そして、サックスの音がして第一部が終了する。

 

第二部では質疑応答が行なわれた。観客からは、作家自身に対する質問と、さきほど行われたパフォーマンスについての質問があった。全容は、後日公開されるアーカイブ映像を見ていただきたい。

第二部も終了し、いざアーティスト・トークを終わろうとしていると、拍手喝采の音が流される。

 

本アーティスト・トークは、作家のクリエイションについて、言葉を頼らず、体験を通じて伝ようとする、もはやパフォーマンスと呼べるものであった。

この試みは、芸術にまつわるトークイベントの在り方を問い直す力を持っている。

今後、このような非言語的なコミュニケーションの可能性に、トークイベントの企画者のみならず、言葉に頼りきった社会は目を向けていくべきだと、最後に私は主張して、この記事を閉めたいと思う。

 

 

(アートプロデュース学科 3年 村上太基)

 

 

梅田哲也アーティストトーク|高槻芸術時間「インタールード」

 

 

お知らせ

 

9月に開催する高槻城公園芸術文化劇場開館プレイベント「高槻芸術時間『インタールード』」の参加作家orangcosongさんを招いてのアーティストトーク。これまでに発表された作品を作家本人の言葉で解説・紹介し、高槻芸術時間「インタールード」で発表される新作への展望も語ります。

 

出演:orangcosong(オランコソン)
司会:林田新(京都芸術大学)
 

■費用 参加無料(要事前申込)
■会場 レセプションルーム(全席自由)
■定員 40名予定(先着順)
■開場 19:00
■開演 19:30
■申込方法
〇WEBから…下記URLからお申込みください。
〇窓口、電話から … 高槻市野見町2-33高槻現代劇場 072-671-9999
◎受付期間 7月5日(火)~8月3日(水)
■主催 高槻市、公益財団法人高槻市文化スポーツ振興事業団
■お問合せ 高槻現代劇場 072-671-9999(10:00~17:00)
■URL https://www.takatsuki-bsj.jp/contact/1862bac87c56886/

■orangcosong(オランコソン)
横浜を拠点にアジア各地で活動する藤原ちからと住吉山実里によるアート・コレクティブ。名称はインドネシア語のorang(人)とkosong(空っぽ)から。演劇やダンスなど舞台芸術の経験をベースにしながらも、ジャンルにこだわらず、プロジェクトごとに様々な他者と結びついて創作を行っている。「冒険の書」を手にして町を歩く遊歩型ツアープロジェクト『演劇クエスト』(2014-)は、これまで横浜、城崎、マニラ、デュッセルドルフ、安山、香港、東京、バンコク、ローザンヌ、マカオ、妙高、マカンダで展開されてきた。そのほか、多国籍のアーティストたちとつくりあげるテーブルパフォーマンス『IsLand Bar』(2017-)、完全な沈黙のもと筆談のみで対話する『筆談会』(2017-)、映像作品『Stay Home Labyrinth』(2020)、ライブ配信『Good Morning, Yokohama』(2021-)など。https://orangcosong.com/
アート・コレクティブ:プロジェクトごとに様々なメンバーとともに創作を行い、新たな表現方法や仕組みづくりを模索すること。

 

 

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