- 2023年7月5日
- 日常風景
「作品も自分も、変化していくんです」 大学で、現役の作家からじかに学ぶ意義は……? 【文芸表現学科学生によるレポート】
文芸表現学科4年生の下平さゆりです。
アイスがおいしい季節になりましたね。もう7月…京都では祇園祭もはじまります。すっかり夏が来てしまいました。
文芸表現学科の学生が他学科の授業などに潜入取材をするシリーズ。
今回は、「第一線で活躍するアーティストが教員を務めている」というこの大学のおもしろさについて、油画コース・神谷徹先生の個展にお邪魔したようすからお届けします。
なによりも「心がほぐれる」時間の中に没頭して
いま、神谷徹先生による個展「portraits」が、2023年の7月15日(土)まで、川端丸太町を東に入ってしばらく歩いたところにあるイムラアートギャラリーにて開催されています。
イムラアートギャラリーは、丸太町通りに面した真っ白な建物。やわらかい自然光がほのかに差し込む、真っ白の室内では、神谷先生の絵のグラデーション、さまざまな色たちが鮮やかに、おだやかに映えていました。
キャプションは置かれておらず、ただただ、目の前にある作品と遭遇する時間。絵と自分しか、この場には存在しないかのように感じられる、一対一の空間。ひとつひとつの絵の前に立ち止まり、ゆっくり見つめていきながら、それぞれの絵の前で過ごす時間や抱く感情はさまざまです。
大小さまざまな大きさ、長さの支持体に塗り重ねられた色のグラデーション。真正面や斜めから、引きで見たり、至近距離で見たりして、少しずつ、色のもつ表情の差異を見つけることに没頭する時間は、なにより心がほぐれます。
「画面には、線がひとつもない」という独特な作品群
会場にいらしていた神谷先生は、ご自身の作品を「考えているけど、考えていない」と言います。混ざり、なじんで、あたらしい色を生むそのグラデーションからは、なにかに従ったり縛られたりしすぎずに、しかし緩みもしないで絵と付き合っているというような、神谷先生のしなやかさが感じられました。
今回展示されている作品はおもに、神谷先生が京都に移り住んでから出会った人々の肖像画だといいます。しかし画面には、線がひとつもありません。線によって描き出される、人物や風景のような具体的な対象がないのです。あるのは、色の重なり。じっと覗き込むように、色の重なりを見ます。色と色が最も混ざり合う、明るい色合いの広がる画面の中心部は、すっ、とひとすじの光が差しているように見えました。
技術的な面や描かれた背景を理解して作品を鑑賞したい、テーマやメッセージを読み取りたい――常々、少なからず抱いてしまうそんな焦りが、ここでは関係ないのだと思わされました。作品から試されるようなことも、作品に対して自分がかっこつけることもなく、手ぶらで「みる」ことに夢中になってしまう。それは、グラデーションを生きもののように感じられたからでした。
だから、飽きない、そして終わりがない……
胸を打たれたのは、「作品も自分も、変化していってるんです」と、神谷先生が仰ったことでした。
絵も自分も、変わり続けていく――。絵にとっても、自分にとっても、「いま」というこの一瞬と同じ瞬間は、もう訪れません。一見止まっているように思える絵にも、その日、そのときにしか感じられない手ざわりがあります。自分自身も、絵から受けとる感覚や発見、深さは、そのときどきで異なります。だから、飽きない。そして終わりがない。絵と自分、変わり続けていくものどうしが出会うことは、お互いがお互いによって、つくり続けられている、ということ。
だからどんな日にも、新鮮な気持ちで絵や自分に会うことができるのだ、とギャラリーからの帰り道で思いました。
一回限りの偶然に出会うために
訪れたときの会場の雰囲気も、自分自身のコンディションも、そのときにしかない、一回かぎりの偶然です。見え方も感覚も、毎日変化します。今日見た絵も、明日には、その色使いに惹かれたり、明るく見えたり、また異なる角度や解釈で見えているかもしれません。
展覧会を通して、「変わり続けていくこと」の一部にぜひ、出会いに来てみてください。
↑作品の前で、撮影に応じてくださった神谷先生。ありがとうございます…!
◼️神谷徹先生(画家・美術工芸学科油画コース教授)
プロフィール https://www.kyoto-art.ac.jp/info/teacher/detail/00016
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