- 2023年7月4日
- 日常風景
『本』っていったいなんなんだ?
こんにちは、文芸表現学科です!
『本』と聞くと、みなさんはなにを思い浮かべますか?
小説、絵本、雑誌、専門書、辞書……などなど、多くの方が思い浮かべるものには、文字が所狭しと並んでいるのではないでしょうか?
「文字」とはつまり「ことば」を可視化したものであり、「ことば」を届けるツールのなかに「本」があります。
一方で、世の中には「文字が一切存在しない本」というものも多く存在します。そこには一体なにが書かれていて、なにを伝えようとしているのでしょうか。
文芸表現学科には、そんな『本』と『ことば』について考える「ビジュアルメディア論IV」という授業があります。
グラフィックデザイナーやアーティストとして活躍されている外山央先生、林葵衣先生、シュミット・ニコール先生の3名による共同授業となっており、視覚表現としてことばを扱う方々からの視点で「本」や「ことば」についての可能性を探ります。
6月2日から6月16日の授業テーマは『言葉と視覚表現』。担当教員はアーティストの林葵衣先生です。
撮影:守屋友樹
林 葵衣(はやし・あおい)
2011年 京都造形芸術大学 情報デザイン学科 映像メディアコース卒業(当時・旧名称)
2013年 京都造形芸術大学 修士課程修了(当時・旧名称)
音声をはじめとする身体のふるまいに独自の形を与え提示している。
展示会場での公開制作やワークショップを行うなど、幅広く活動を展開。
関西を中心に個展、グループ展にて作品を発表。
2020年度第4期常設展「画家の痕跡」高松市美術館、2018年「VOCA展」上野の森美術館に参加。
2022年 第一回白髪一雄現代美術賞 受賞
2015年 第63回芦屋市展 吉原賞受賞
出典:林 葵衣ホームページより(https://www.hayashiaoi.com/)
林先生第一回目の授業では、先生がこれまでどのような作品を作られてきたのか紹介していただくところから始まりました。
▲《Phonation piece -こえ|Koe- 》《Phonation piece -ふれる|Fureru- 》《Phonation piece -あ|a- 》撮影:守屋友樹
固いような、柔らかいような、透明のような、不思議な形をした彫刻は、林先生の「声」からつくられたもの。口のなかにポリエチレン樹脂を含み、それぞれ「こえ」、「ふれる」、「あ」と声を発しながら押し固めてつくられています。
▲phonation《palindrome》撮影:守屋友樹
壁に押し付けられた模様が印象的なこちらは、口紅の跡が残されたもの。口紅を塗った唇を壁に押し当てながら、ことばを発することでつくられています。
魚拓ならぬ唇拓(しんたく)と称された独自の技法を用いて、林先生を代表する作品が多く発表されています。
林先生がこれまでにつくられてきた作品には『声』がテーマとなったものが多くあります。
自分から発せられているものでありながら、発した瞬間に身体を離れてしまう声。録音以外での記録方法を探り、『写しとる』という方法に着目されました。
実態のないものに形を与えることによって、他者にことばがどのように伝わるのか、文字媒体以外でのことばの表現方法を模索されています。
このように「ことば」は、視点や角度を少し変えて注目してみることで、「書く」以外の全く新しい伝え方があることがわかります。
次に林先生が見せてくださったのは、さまざまな形の本です。
紙やプラスチック、布、ビニール、木、フェルトなどさまざまな素材や綴じ方で作られた子ども向けの本や、黒いシートを動かすことで、まるで描かれている模様が動いているかのように見える本、縦57.5cm・横74cmにもなる超大型本など、ほかにもたくさんの本をご紹介いただきました。
▲『I PRELIBRI』1979年にイタリアのデザインショップから刊行された知育絵本。本書に文字はなく、さまざまな素材や仕掛け、製本でつくられており、読むものではなく五感で楽しむための「本に出会う前の本」となっています。著者:BRUNO MUNARI
▲新たな<音と文字の関係>を考察するアーティストユニット「phono/graph」がNISSHAグループと制作した大型本。本書には、当授業担当の先生方も携わられています。(参照:https://www.ameet.jp/digital-imaging/2724/)
「ことば」を文章として綴り、「本」はその文章が書かれたものだという認識で学ぶ学生たちにとって、視覚的・感覚的な本の数々はとても印象深かったことと思います。
第二回目の授業は、実際に構内を探索しながら「フロッタージュ」をしてみるというもの。
フロッタージュとは、表面がでこぼこしたものの上に紙を置き、鉛筆でこすりつけることで模様を写しとるという技法のこと。10円硬貨などで試したことがあるという方も多いのではないでしょうか?
今回は、ただやみくもにフロッタージュをしてみるのではなく、素手や足で触り心地の良いものを見つけ、感触や周りの状況も一緒にメモしていきます。
普段生活している場所をどのように理解し他者に伝えることができるのかを考え、『触覚の地図』をつくることが目標です。
▲普段何気なく登っている階段手すりに手形を発見した学生。人がよく触るところは錆びて塗装が剥げてしまっています。平面ではなく円柱状のフロッタージュはとても難しそう。
▲散策途中で林先生に遭遇した学生たち。どんなものを写しとってきたのか、進捗を報告。
第三回目の授業では、前回フロッタージュしたものを『本』にしていきます。
金具でとめる学生、糸で綴じる学生、フロッタージュ部分のみを切り取り図鑑のように編集する学生など、みんな思い思いに「本」の形にしあげていきます。
最後は自分の作成した『触覚の地図』を紹介してもらいました。
木や葉など自然物の模様は不規則で、人工物の模様ははっきりしているという違いを一冊にした学生や、構内から構外、そしてまた構内に戻って来るまでの動線を一冊にした学生など、フロッタージュの最中から編集を行いながら制作をしている学生が多かったようです。
また、触るとツルツルしている石を写し取ると、本当は小さなでこぼこが付いていることが分かったり、逆に凹凸が大きすぎるときれいな模様を取れなかったりと、触覚と視覚のギャップに注目した学生も多くいました。
文章を紙に打ち出し、簡単に綴じただけのものははたして本と呼べるのか。もしくは、文章は書かれていなくてもきれいに綴じられ、いわゆる本の形をしているのであれば本と呼べるのか。伝えたいことは文字以外でも伝わるのか。
三回の授業を通して、「本」や「ことば」の見方を少し変えるきっかけになったのではないでしょうか。
(スタッフ・牧野)
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