キャラクターデザインコース

ゼミ通ヒーローズVol.62 内田響己、藤井果凜、藤井凜と学科展作品「TERAS(テラス)」について語るの巻 Part2

※「ゼミ通ヒーローズ」とは、京都芸術大学キャラクターデザイン学科ゲームゼミの学生の研究や取り組みについてピックアップし、担当教員村上との対談形式で綴る少々マニアックなブログ記事となっています。

 

ゼミ通ヒーローズVol.62 内田響己、藤井果凜、藤井凜と学科展作品「TERAS(テラス)」について語るの巻 Part1の続き

「TERAS」制作チームの3人。内田響己さん(左)、藤井凜さん(中央)、藤井果凜さん(右)

 

 

村上

ゲームシナリオではなくゲームストーリーはどうなってる?

 

内田響己(以下内田)

洋館で一人で住む少女がいるんですけど、その子はお母さんを亡くしていて、そのお母さんの皮を剥いで自分が身につけることで鏡に映った自分をお母さんに見立てているんです。

 

村上

いいじゃないか!

 

内田

そこから更に色んな少女を襲ってはお母さんと似たパーツを見つけて奪っていきます。

 

村上

いいじゃないか!

 

内田

で、主人公の少女はそこから娘さんに襲われながらも洋館からの脱出を目指すっていうストーリーになっています。

 

村上

いいじゃないか!

ちなみにそれはゲーム内では明かされる?

 

藤井凜(以下りん)

明確に語りたくはないので、何となくうっすら分かっていくようにしています。

 

村上

バックストーリーとしては存在するけど、ゲーム内では言葉としては語られず、マップのビジュアルだったり敵の行動から何となく分かってもらいたいと。

 

内田

そこはプレイヤーに考察してほしいところですね。

 

村上

実況向けのゲームかもね。

 

 

内田

全体的に薄暗いステージなので、主人公の頭に赤いリボンをつけて視認性を上げたり、自然と敵の弱点が分かるようにしたり、そういうことを意識してキャラクターデザインをしました。

 

村上

授業でも言ってるように、ゲームキャラクターって実はキャラクターデザインそのものがUIデザインなんだよって話ね。可愛いとか格好いいではなく、ゲーム内のUIの機能としてプレイヤーの視線を誘導したり行動を促したりするデザインになってることが肝心だね。

ゲームデザインとしてはどんな工夫をした?

 

りん

企画で一番困ったのは、鏡を置く場所によっては鏡一つだけでクリアされ兼ねないので、そういうのを防ぐように結構頑張りましたね。

 

村上

どうやって対応した?

 

りん

鏡を動かしてもギリギリ光に届かないようにするとか、レベルデザインに気を配りました。自由度はあるけど簡単にしたくないので、さっきも話したようになるべく2~3通りの攻略法を想定してクリアルートを作りました。

 

 

村上

攻略法を発見させるプロセスは、仕様書の段階で全て設計されてた?

 

りん

そうですね。一旦プログラミングで実装されたものを確認しながら、配置を変えてテストプレイを繰り返して、とにかく触りながらどんどん光を繋げていくような感じにしたくて、自分たちでもいくつかの攻略法を見つけていきながら調整しましたね。

 

藤井果凜(以下かりん)

Google Driveに「ステージデザイン」っていうフォルダがあって、そこにステージ案を何回も上げてくれて、実際にUnityに実装しながら、伝わりにくい点とか不具合を見つけていって、その都度またりんりん(藤井凜の呼称)に直してもらって…っていうのをひたすら繰り返して作ってました。

 

村上

「仕様書用意したんであと宜しく!」じゃなくて、本当に緻密に連絡を取り合いながら細かく調整してたよね。このチームはアジャイル方式の制作を徹底してたから、早い段階でダミーデータだけでゲームが進行する基本プログラムが完成してたし、そのお陰でゲームを面白くする作業とクォリティを上げる作業に専念することができてたね。

 

りん

そうですね。ちょっと制作終盤で予想外の事態が起こったりしたんですけど、途中ぐらいまでは結構予定通りに進みましたね。

 

村上

予想外の事態って…?

 

りん

エラーもなくテストプレイでもちゃんと動いてたのに、実際に学科展で展示をしたら突然仕様通りに動作しなくなる箇所が出てきて…結局今では改善したんですけど…。

 

内田

各ギミックに3パターンの攻略法を用意しておいて、本来であればプレイヤーが自分でそれを見つけて攻略するんですけど、なぜか3パターンのうち攻略法がランダムで1つに絞られてしまうという謎のバグが発生してまして…

 

かりん

展示会のときには臨機応変に口頭でアナウンスしながら別の攻略法を教えて回避してもらったりして、何とかなりました。

 

村上

なんじゃそら。そんなことあったの…?

 

かりん

普段であればUnityのコンソール上にエラーが表示されるので、それを頼りにバグを修正するんです。でもエラーが表示されないのでどこで不具合が起きたのかが全く分からないままで…あれは大変でしたね。

 

村上

エラーが出ないのであれば、それ多分プログラムのバグじゃなくて仕様バグの可能性もあるね。RPGとかアドベンチャーゲームを開発するときによく発生するんだけど、そもそものシナリオとか仕様の設計に矛盾があって、永久ループしてハマったり部屋から出られなくなるような、いわゆるゲームが進行不能に陥るSランクバグってやつで、プログラムとしては仕様書通りに正しく動作してるのでエラーは出ない。シナリオバグとかハマりバグとか色んな言い方がある。

 

りん

それってプログラマーじゃなくてプランナーの責任ってことですね(笑)

 

村上

いや、それは分からんよ。デジタルゲームのデバッグはどこで何が起きるか分からないから、ひたすら時間と手間をかけて何度も繰り返して検証しまくるしかない。ゲーム開発は、作ったら終わりじゃなくて、仕様が全部実装されてからが本当のゲーム作りの始まりですよって話してるのはそういうこと。だから早い段階でダミーデータを実装してエンディングまで確認できるバージョンを用意する必要があるわけ。これができないと、一応ゲームっぽい形にはなるけど全然面白くない謎のモノが出来上がってしまう。今回の作品はかなり複雑な要素を盛り込んでいてゲームとしてのボリュームもあるから、もしこのチームがアジャイル方式じゃなくてオープニングから順番に作り込んでいってたら、多分学科展の展示には間に合ってなかったと思う。

 

かりん

なるほどー(笑)

 

村上

ゲームプログラミングの授業課題以外でゲームを作るのは今回が初めてだった?

 

かりん

勉強しないといけないなと思って、練習でブロック崩しみたいなシンプルなゲームを作ったことがあるくらいで、三人がかりでこんな大きなゲームを作るのは初めての経験でした。

 

村上

会議を重ねるたびに大作になっていったもんね(笑)

 

かりん

りんりんの仕様を忠実に再現したいけどやり方が分からない部分もあって、完成した後でも「これで大丈夫か!?」みたいな不安がずっとありました。

 

村上

よくこれだけのクォリティとボリュームのゲームが完成したね。

 

かりん

今回は3人チームということで企画とデザインを二人にお願いできたから、私はプログラムに集中できたのが良かったんだと思います。

 

りん

このゲームの企画の前に企画が2回ボツになってまして(笑)

 

村上

あー、そうだったそうだった。この企画に変わってから実際に制作がスタートしたのが5月末くらいだったかな?6月頭に仮実装したα版をプレゼンして、前期最終授業で完成…と考えたら、制作期間2カ月。なかなか恐ろしいスケジュールだったね。

 

かりん

ほんとよく出来ましたね(笑)

 

内田

途中体調崩したり、色々ありましたね。

 

村上

後期は新規プロジェクトと就職活動と同時進行でこの作品をコンペに出品するために完全版を制作すると。なかなかの作業ボリュームになるね…

 

内田

充実してる(笑)。生きてるって感じしますよね。

 

りん

ヒマになるよりはよほど良いです。

 

村上

ゲームゼミ向きの体質だね(笑)

というわけで、現場の生々しい話も含めて「テラス」のメイキングについてお話を伺いました。

ではここから先も忙しい日々が続きますが、ぜひ頑張ってください。

 

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