- 2024年5月15日
- イベント
5/12(日)「はじめてのオープンキャンパス」へのご参加ありがとうございました!▶︎▶︎▶︎Next ☞ 5/18(土)
こんにちは、文芸表現学科です!
5/12(日)に開催された「はじめてのオープンキャンパス」。
このイベントは、『美大ってどんなところ?』『普通校出身でも大丈夫かな?』といったように、進路について考えはじめた方に向けて、はじめの一歩を踏み出してもらうオープンキャンパスです。
プログラムには大学・入試説明会はもちろんのこと、選べる5種類の初心者向け講座が実施され、文芸表現学科からは、中村純先生による創作基礎講座「ことばの表現を体験しよう〜J-POPの歌詞や現代詩に触れる〜」が開講されました。
当日は遠方からお越しくださった方も……! ご参加くださった高校生・受験生のみなさん、ありがとうございました!
▲講師:中村純先生(詩人・編集者・執筆業)
講座は大きく分けて3つのトピックで進められました。
まずひとつ目は「小説から生まれる詩」。
いまや知らない人はいないほどの人気音楽ユニット「YOASOBI」の楽曲「夜に駆ける」を題材に、小説から作詞することについて学びます。
実はこの楽曲、元ネタとなる小説が存在していたことはご存知でしたか?
2019年にmonogatary.comに投稿された、星野舞夜(ほしの・まよ)さんによる「タナトスの誘惑」という短編小説で、現在は、ほか4編の作品を含めた『夜に駆ける YOASOBI小説集』に収録されています。
著者:星野舞夜ほか
出版社:双葉社
発売日:2021年9月16日
価格:693円(税込)
ご参加いただいた高校生・受験生のみなさんも、さすがに聞いたことがないという方はいらっしゃいませんでしたが、改めて、楽曲を聞きながら、じっくりを歌詞を鑑賞してみます。
すると、この詩には「隠喩(暗喩)」という技法が多く使われていることがわかってきました。
隠喩とはつまり、直接的な表現をせずに例えて表現をすることです。
今回でいえば、詩のなかで表現されている「夜に駆ける」「終わり」などがこれにあたります。
次に元となった小説「タナトスの誘惑」を、YOASOBIのヴォーカル・ikuraさんの朗読動画(※「夜に駆ける YOASOBI小説集」購入者特典映像)を鑑賞しながら、あわせて読んでいきます。
作品を読んでみると、テーマとしては重く、物悲しい雰囲気が漂っており、ここからポップでスピーディな曲調には到底結びつかないような印象です。
作詞作曲を担当したYOASOBIのAyaseさんは、『主人公から一歩離れて、物語を眺める必要がある(※「夜に駆ける YOASOBI小説集」巻末インタビューより)』といいます。
物語に登場するワードをただ入れ込むだけでは、鑑賞者にはなにが起きているかが伝わりません。
主人公たちの立っている場所の、あたりに漂う空気感や緊張感まで俯瞰的に把握し、詩という短いフレーズに落とし込む必要があります。
また、楽曲が配信され、ヒットした2019年〜2020年という時代背景も、この詩や曲調に大きく作用していると考えられます。
コロナ禍によって、自宅の外に出ることも禁じられ鬱々とした世の中で、あえてポップな曲調のなかにエモーショナルな詩を当てはめた楽曲に人々が魅了されたのにも納得がいきます。
ふたつ目のトピックは「エピソードから生まれる詩」。
1983年にリリースされた中島みゆきさんの楽曲「ファイト!」を題材に扱いました。
当時、本人がパーソナリティーをつとめたラジオ番組に、リスナーから送られた葉書のエピソードをモチーフに作詞されたといわれています。講義では、そのきっかけとなったラジオ音声を聞き、歌詞中にあるエピソード内容を鑑賞しました。
至って個人的なエピソードから描かれているにも関わらず、鑑賞者も共感せざるを得ない詩が印象的な楽曲。
1960年代以降のアメリカの学生運動や第二波フェミニズム運動では、『個人的なことは政治的なこと』というスローガンが掲げられましたが、この詩はまさしくこれに当てはまります。
ひとつひとつは個人的な悩みや問題であったとしても、それが他者の問題にもつながり、やがて社会や政治構造にもつながっていくという意の言葉ですが、中村先生は、これを泉にたとえ、「自分の泉が他者の泉とつながり、詩はその泉の深いところでつなつながっている」とお話しされました。
三つ目のトピックは「物語、ドラマから生まれる詩」。
現在放送中のNHK連続テレビ小説『虎に翼』(2024年4月〜)の主題歌として、米津玄師さんが書き下ろした楽曲「さよーならまたいつか!」を題材に扱いました。
日本史上はじめて法曹の世界に飛び込んだ、三淵嘉子(みぶち・よしこ)さんの実話に基づくオリジナルストーリーで、伊藤沙莉(いとう・さいり)さんが猪爪寅子役で主演を務めます。
主人公の同級生・山田よね役を演じる土居志央梨(どい・しおり)さん、主人公の兄・猪爪直道役を演じる上川周作(かみかわ・しゅうさく)さんは本学卒業生ということもあり、学内でも話題のテレビドラマです。
『虎に翼』というストーリー、伊藤沙莉さんが演じる猪爪寅子という主人公、そして三淵嘉子さんという一人の女性の存在。
さまざまな物語を知った上でつくられたこの楽曲は、実際のシーンを連想させる詩もあれば、猪爪寅子という女性を連想させる詩など、節々に『虎に翼』というドラマそのものを感じとることができます。
歌詞中に何度も言い方を変えて登場する「100年」というフレーズ。
「さよなら 100年先でまた会いましょう」
「100年先も憶えてるかな」
「100年先のあなたに会いたい」
三淵嘉子さんが法律を学ぶことを決意し、法科に進んだ1932年から、約100年後に生きる私たちに向けてのメッセージと捉えることもできるかもしれません。
すべてのトピックに関する詩の鑑賞が終わったところで、みなさんにも詩を考えてもらうワークを行いました。
①「タナトスの誘惑」を翻案※1した詩を構想する
②「ファイト!」の詩を自身の思うエピソードから構想する
③『私に翼』※2のドラマをイメージし、100年後の同世代、10年後の私に向けて、夢を実現しようとしている自身の詩を構想する
※1 翻案:原案を使用して別の作品をつくること
※2 私に虎:『虎に翼』の主人公が「私」だった場合のドラマタイトルをイメージしたもの
▲普段、詩を学んでいる2年生にも一緒にワークに取り組んでもらいました。
自身が生活のなかで体験したもどかしさをテーマに「ファイト!」の歌詞を構想した方、高校3年生ならではの悩みや苦しみを10年後の自分への希望に変えた詩を構想した方、「タナトスの誘惑」の本文中には一切登場しない第三者の視点での詩を構想した方など、短い創作時間でしたが、なかには構想を練るだけではなく、実際に詩を完成させた方もいました。
▲在学生にも自分の構想を発表してもらいました。書き始めた詩を朗読してもらう場面も。
よく、「音楽の力」というフレーズを耳にしますが、これにはビートやリズムにも増して「詩」が深く関わっています。
元気や勇気を与えるのみならず、時にはその逆の力を与えてしまう可能性も大いにあります。
詩を書くということで、ことばや歌が持つ影響力を深く考える必要があると中村先生は言います。
今回のトピックで取り上げた三つの詩は、どれもその影響力をしっかりと受け止め紡ぎ出されたものでした。
みなさんが好きな音楽には、どんな詩が紡がれているでしょうか?
いま一度、詩についてじっくり考えてみる。そのきっかけになっていれば幸いです。
(スタッフ・牧野)
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●開催日時
6月1日(土)2日(日)
午前…11:10〜12:50
午後…14:20〜16:00
※事前予約制。
※1日最大2コースまで受講可能。
※午前と午後で同じコースの授業を受けることはできません。
※両日、午前・午後の授業内容は同じです。
●実施形式
京都芸術大学 瓜生山キャンパスにて対面実施
●参加登録&詳細はこちら!
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●開催日時
6月15日(土)
13:00〜15:00
※事前予約制
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オンライン(ZOOM)にて開催
※参加方法などの詳細は、お申込みいただいた方に学科よりご連絡します。
●参加登録&詳細はこちら!
https://hs-lp.kyoto-art.ac.jp/online/form/cource_bungei_2023
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