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(大学院)文芸領域 五十嵐 加奈子

ハマボウの花(徳島県鳴門市・2024年7月2日筆者撮影)


美術館コミュニティの群像劇に関する研究

<作品名>
ハマボウ

都心の小さな美術館の学芸員が、作品の紛失事件に直面。すぐに事件は解決し、新たに浮上した絵画の謎を探偵と共に解決していく日常系ミステリ―であり、美術館というコミュニティに集まった人たちを描く群像劇。
第一章
〈ガーデンミュージアム品川〉・通称〈しながわのお庭〉は、庭園のある古い洋館で、都会のオアシスとして親しまれている。勤務して 5 年の茜部葵(34 歳)は亡くなった前館長の榊巻紅葉(当時 84 歳)の代わりに美術館を守っていくために奮闘していた。
令和 6 年 7 月 19 日に早見すい、本名・涼風信子の彫刻作品『夢』が損壊しパーツが紛失する事件が発生。展示室にいた 5 人は初対面で、偶然にも紅葉に関係している人物だった。赤松桂大(38 歳)は紅葉とカラオケ仲間、楡野百合(28 歳)と娘の蘭(14 か月)は信子の親戚、菊川悠(28 歳)は紅葉の孫、涼風桜(51 歳)は信子の娘だった。
ベビーカーが作品に触れ、落ちたパーツを蘭が持っていたことがわかり、すぐに作品は元通りになる。
第二章
令和 6 年 1 月、余命わずかの紅葉は次の館長に木田桂吾(68 歳)を任命し、葵は紅葉からこれまで守ってきた美術館への思いが込められた日記を預かる。
8 月、鳴門の菊川悠から美術館の『ハル』という絵には続きがあるのではないかと連絡が入る。葵は桂大と鳴門を訪れ、髪の長い人物の絵が『ハル』の続絵の片方だと確信する。ハマボウの咲きほこる続絵は紅葉の前の夫・楠本茂と一緒に逃げた信子が描き、16 年前に美術館に寄贈された絵だった。『ハル』の少年は菊川悠(はる)で、髪の長い人物は悠の母・葉月だろうか。なぜ紅葉は続絵の片方だけ鳴門に送ったのだろうか。
葵と桂大はバディとなり市川を訪れて百合に、那須を訪れて桜に会って話を聞いた。紅葉は元夫の茂や信子に会うことはなかったが、互いに相手のことを思っていた。鳴門の絵の中の髪の長い人物はヒッピー姿の茂で、ハマボウの咲く続絵は生涯会うことのなかった茂と孫の悠が絵の中で会えるようにという願いをこめて信子が描いた絵だった。
桂大と桂吾が探偵の親子であり、7 月に紅葉をめぐる人たちが美術館に集まったのは監視員(40 歳)と 3 人で計画したことだと判明する。
紅葉の日記には思い続けていた茂が余命わずかと知り、茂の絵を見るのが辛くて鳴門に送ったと書かれていた。
『ハマボウ』は再び 1 つになり、美術館に飾られた。それは亡くなった紅葉の最後の願いでもあった。

五十嵐 加奈子

(大学院)文芸領域

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