(大学院)文芸領域 永岡 英則
企業小説の経営ミステリー的拡張性について
企業小説における人間ドラマと謎解きの融合
<作品名>
幻影が消えるとき - 総合飲料メーカーに伴走 -
北大路晃一は企業や経営者の抱える問題や悩みに徹底的に寄り添い、実効的な解決策を発見、創造し提案する「経営伴走業」のプロである。自ら構える事務所の経営パートナーである 3 歳年下の田崎香織とはコンビを組んで 10 年近くなる。
大学教授である尾上茂樹から総合飲料メーカーである「岡田飲料」の社長岡田孝之の伴走依頼を受ける。同時に尾上ゼミの学生である五十嵐礼音(レオン)をインターンとして参加させて欲しいという。
晃一は香織とレオンを伴いプロジェクトを開始する。孝之の話や香織の初期的調査から、自販機部門を主体として成長してきた岡田飲料は孝之が社長になる少し前にピークアウトし、業績が下がり続けていることが分かる。それも事業環境を背景とした構造的な理由によるもので、簡単には事態を打開できそうにない。晃一らは岡田飲料の業績を反転させる突破口をみつけるべく、関係各部署のキーマンに話を聞きにいく。
自販機営業部長の山崎は、日本でも最強を誇る自販機部門は厳しい環境下でも防戦に奮闘している、伸ばす鍵は商品開発や量販部門だと主張する。卸(繁進会)部長の川嶋は、細っていく卸部門の下落を食い止めるのがやっとだと訴える。繁進会会員の高山飲料社長の富樫は、岡田飲料がもっと投資や支援をしないとダメだと詰め寄る。ロケーション部長の時田はインドアロケーションなどで台当たり売上を短期間に伸ばすのは不可能だと言う。量販店部長の片山や商品開発部長の竹下は、量販はるかに激戦で価格が低く利益は出せない、良い商品を開発してもそれを育てる考え方が営業部門にないことを嘆く。製造部長の北川はコストダウンの余地が乏しい実態を説明する。
またインタビューに答える者全員が社長とその父である会長岡田義孝との関係がしっくりいっていないことを示唆する。自販機中心の総合飲料メーカーに強い誇りと拘りを持つ会長と、方向転換を図ろうとする社長の路線の違いからくるものらしい。
八方塞がりな晃一はいつものバーに行き、レミーマルタンをロックで飲みながら一人沈思黙考する。バーテンダーである今橋美樹との何気ない会話の中からヒントを見つける。
最終報告の中で晃一は「あなたたちは本当に総合飲料メーカーなのか?」という根本を問う。むしろ自販機オペレーター、つまり小売業として定義し直せば、過去の延長戦にはないブレークスルーがもたされると。そこから岡田飲料は躍進へと転じる。
永岡 英則
(大学院)文芸領域
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