(大学院)文芸領域 金澤 稀愛
閉鎖空間における自己の形成を描いた文芸作品の制作
<作品名>
独房クッキーと感染
閉ざされた町に住む若い女性が、脳内にウイルスが侵入したことで、ジンジャーマンクッキーに変化する様子を描いた、奇想ファンタジー長編作品。
新型コロナウイルス感染症の流行とともに、日本では人間がジンジャーマンクッキーに変化する病が流行した。2040 年、クッキー化していないのは、防火壁で囲まれた町・氷蔵市の住民のみとなった。しかし、氷蔵市住民・西條奏芽(19 歳)が町の外に出たのが原因で、奏芽を含めた氷蔵市住民たちがクッキー化していく。二週間後、氷蔵市住民全員がクッキー化したのを機に、奏芽は移住を決心する。その際に、生き別れとなっていた両親と再会した。
クッキー化には、クラッカーが脳内に侵入する現象が関わっていた。奏芽の脳内では、型抜きクッキーを作る「カラ」と、アイスボックスという独房にいる「メル」の、奏芽と同じ姿形をした生命体たちが暮らしている。
奏芽が町の外へと出た日、クラッカーに型抜きクッキーを破壊される。クラッカー退治に奔走するカラは、型抜きしないクッキーである「アイスボックスクッキー」を作ることが、クラッカーへの対抗策だと気づく。カラがクラッカーに対抗したことで、奏芽のクッキー化は進行しなくなった。現実世界と脳内世界の物語を交互に展開させることで、他者の言動によって自己形成に歪みが生じる様子を描いた作品。
第一章では、奏芽が幼馴染・瀬崎深紘(25 歳)とともに、防火壁に開けられた穴を通って氷蔵市の外へと出る。奏芽の同居人・伴野莉子(33 歳)や職場の上司・井元正継(42歳)に警戒される中、二人はクッキー化をした理由を探る。一方、カラはクラッカーに対抗する道具を取り出すために、アイスボックスの鍵探しをしていた。
第二章では、莉子と正継のクッキー化が始まる。正継は、穴を開けた犯人として逮捕された。莉子は、正継逮捕の情報提供をしたと責められ、家を出ることになった。脳内世界では、クラッカーが人体の形をした型を使って、クッキーの型抜きをしていた。さらに、クラッカーの手によってアイスボックスが急冷し、メルの生命に危機が迫る。
第三章では、穴を開けた真犯人が深紘だと判明する。深紘から逃げる奏芽を、莉子が助ける。カラはアイスボックスの鍵を見つけ、室内に型抜きクッキーの抜かれなかった部分の生地を発見した。
金澤 稀愛
(大学院)文芸領域
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