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(大学院)文芸領域 越智 良子(敷村 良子) 【研究科長賞】

イメージ作成:越智良子(Adobe AIによる)



連作小説における続編の制作手法の研究と実作作成
—群像小説の連作をおもしろく展開する技巧とは—

<作品名>
もひとつ、がんばっていきまっしょい

1960 年度生まれの篠村悦子と高校の部活仲間の物語。
2023 年4 月、愛媛県松山市。篠村悦子( 63 才)は高校ボートの練習場の内湾を見下ろす料亭で女子ボート部を復活させた同期やコーチと再会、人生の岐路となった1990年、29 才の出来事を思い出していた。
悦子は初めて瀬戸大橋を渡り10 年ぶりに実家に戻った。高校の校内ボートレース模範漕に同期で出漕するためである。高校卒業後、悦子は父親の反対を押し切り、カメラマンを目指して上京、写真専門学校で学んだが、バイトから正社員になった職場は赤羽の印刷工場付設の貸しスタジオで仕事は雑用だった。父は悦子を穏やかに受け入れる。姉の産んだ孫の写真で溢れる茶の間で、悦子はじぶんの結婚を望む父の願望を察知し、恐怖を感じる。悦子の伯母は見合い斡旋専門の仲人。悦子は姉も見合いだったと知る。恋愛結婚を望む悦子だが、釣書の中に、幼馴染でボート部同期の関野暢幸に似た写真を見て衝撃を受ける。また、再会した同級生の姿に、悦子は人生の周回遅れになっている現実に焦る。
帰京すると写真スタジオの社長は経理の女性と失踪、悦子は失業した。天引きされていた雇用保険は嘘で悦子に収入の目途はない。職安で悦子は同期の中浦真由美と出くわす。真由美は親に黙って高校教諭を辞め上京、パッと就職先を決め、悦子に帰郷を促す。
悦子は実家に戻り、祖母を頼り帯状疱疹の灸をおろしに来たカメラマン、高市春海の事務所で働くことになる。松山で商業写真の仕事ができると気づき、悦子はU ターンを決めたが食べていくのは難しい。ボート部の先輩で母校の体育教諭、同期の敦子の夫・安田に頼まれ、悦子は鬼コーチ入江晶子の息子、翔を見守ることになる。コーチは関野暢幸。商船大学を卒業後外国航路の海員となり、休暇をとって新人戦に向け後輩を指導している。舵手付きフォアの主力選手の怪我で、シングルスカルから転向するが孤立する翔を、関野は理性的な対応で他の部員になじませ、悦子は関野を見直す。悦子は敦子経由で、真由美の上京の目的はボート部の先輩・青木高志との結婚だったが、青木は中田三郎と恋愛関係で共に海外赴任したと知る。失恋した真由美は悦子の伯母の仲介で見合いし結婚、披露宴の時、真由美は妊娠していた。
悦子は町の写真館に就職、じぶんの取り組みたい写真を見つける。落ち着いた日々を送る悦子に関野暢幸は求婚。見合い結婚するのは暢幸の兄だった。真由美と同じく性のお試しを経て、悦子は関野と結婚する。
2023 年4月、同期と歩みを確認しあい、悦子は人生の終盤に向けて、気合を入れる。もひとつ、がんばっていきまっしょい、と。

越智 良子(敷村 良子) 【研究科長賞】

(大学院)文芸領域

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