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家族論を論ずることなく考察する小説の制作

家族のかたちとは、そこから見えてくるもの

文芸コース 鈴木芳江

「雫の食卓」
 この作品は、突然の夫の死を受け入れ、家族というものを模索しながら新たな人生を歩んでいく、雫という一人の女性を主人公にした物語である。
 主人公と夫、息子二人、そして姑の五人家族が、姑の施設入居を機に四人家族として生活をすることになり、そこから本当に自分らしい暮らしが始まる。しかし、姑のいない自由な生活を楽しもうとしていた矢先、夫が事故で亡くなってしまう。大きな悲しみを抱え、息子たちと賢明にそれを乗り越えようとする主人公は、険悪な仲だった姑と正面から対峙することになり、姑の過去を知る。それは、思いもしなかった彼女の過去と、主人公の夫の家族の複雑さを改めて知ることになった。
 そして、亡くなった夫の車に同乗していた女性と子どもが、夫の妹とその娘であることがわかり動揺する主人公だったが、天涯孤独になってしまった少女をどうしても放っておくことができず、引き取る決心をする。
 母を亡くしひとりぼっちになった少女は、雫の家に引き取られても、言葉を発しないままだった。主人公の息子たちはそれぞれの人生を生きていたが、転職や結婚に向け悩みを抱えていた。温かい家庭を知らずに育った次男の婚約者は、そんな雫の家族の在り方に憧れていた。
 雫の家で新たな生活を送っていくなかで、彼らは改めて家族というものを実感する。
 そして雫も、迎え入れた少女、次男の婚約者と雫の三人で出かけた女子旅を通して、この娘たちをずっと大切にしたいという想いを強くする。
 血のつながりだけが絆ではない。一緒に生活していても絆が強いかどうかはわからない。家族とはどういうものなのか。それぞれのエピソードが語られるごとに、それを考えてもらえたら、という思いでこの物語を執筆した。

鈴木芳江

文芸コース

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