(大学院)文芸領域 鍋山 友梨馨
SNSから形成される若者の流行
「推し活」を通した新たな表現の進化
<作品名>
本人不在
大学生の紬は何かに熱中することもなく淡々と日々を過ごしていると、SNS で今年アニメ化が決まった「君を釣りたい」という漫画に出会う。それは、主人公の男の推しであった女アイドルにオタクとの熱愛が発覚し、自分もアイドルになって推しに復讐するという物語だった。紬は夢中になって読み進めているうちに、とあるページで手が止まってしまう。それが、紬の推しとなる「幸也」との出会いだった。
紬は幸也のことをより深く知るために、ネットサーフィンを始める。公式サイトの情報を一通り確認すると、X でも幸也について検索をかけた。漫画の考察や感想、ファンアートまで様々な情報を調べていくうちに、キャラクターとの恋愛や友情を創造する「夢」という文化にハマる。紬は、毎日幸也の夢絵や小説を読むことが日々の癒やしとなっていった。
ある日、好きな夢絵を描く絵師の X のアカウントを覗くと、幸也と特定の人物が描かれている夢絵が投稿されていた。そこに描かれていたのは、幸也のオタクとして有名なみるという人物だった。紬はみるについて知っていくうちに、自分もこんなオタクになりたい、来年の幸也の誕生日には自分も本人不在の誕生日会を行いたいと思うようになり、同世代の女オタクたちの推し活に関する SNS を片っ端から漁り、推し活に詳しくなっていった。
グッズは積める時に積まなきゃ意味がない、買わない後悔より買う後悔という女オタクたちの言葉に感化された紬は、資金集めのためにバイトを増やし、始めは数個しか買っていなかったグッズを何十という単位で買い、大量に同じグッズを集めるようになる。
グッズが届いたら開封、写真を撮って加工し SNS に投稿。それを繰り返していくうちに一つの投稿がバズってしまい、一気に憧れていたオタク側へと自分も足を踏み入れてしまう。日々フォロワーが増えていく中、ある時、一件のメッセージが紬の SNS に届く。それは、とある匿名掲示板のリンクだった。掲示板を読むと、みるが自分に対して誹謗中傷を行っていることや、幸也を利用して幸也の声優と繋がっていたことが判明する。
みるに対して怒りを覚えた紬は、幸也の誕生日を利用してみるに一泡吹かせようと友人の知恵を借りて計画を立てた。しかし誕生日当日、新たな標的が現れ紬の作戦は失敗に終わるのだった。
鍋山 友梨馨
(大学院)文芸領域
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