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(大学院)文芸領域 荒木 智子

人生は花火のごとく、あっという間
チル前に何を選び、どう生きるか、チルまで生きる

<作品名>
『花火、チルノカ』

私は本研究の制作物として、小説『花火、チルノカ』を執筆した。作品の梗概は以下の通りである。
女優を夢見て新潟から上京したハナビ(本名 松岡よしこ)は 38 歳になっても鳴かず飛ばずの毎日である。花粉症の診療のために訪れた耳鼻咽喉科にて劇団の養成所の同期で現在は人気 YouTuber となったケンジと再会する。その後、ケンジに半ば騙される形で動画配信の手伝いをすることになり、沖縄へ向かう。元社交街であった宜野湾市真栄原の表向きは『カフェ』として営業している違法風俗店に潜入するという設定のヤラセ動画への出演協力である。動画配信では 10 万人を越える視聴者数を獲得。ハナビは引き続きケンジの沖縄の戦争遺跡を巡る動画制作を手伝うために自動車教習所に通うことになる。養成所時代に10代だったハナビとケンジは恋人同士だった過去があり、再びケンジに惹かれはじめると共にその関係に戸惑いを感じるハナビ。
ハナビは本免の学科試験のために、住民票のある新潟へと一時戻る。そこで、何年も会うことのなかった母親が介護施設にいることを知り、会いに行く。母親はハナビを心配し、子供の頃から様々なことに対して反対をしていた。久しぶりに再会した母親は随分と年をとっていた。そして、時間が経っていることを認識する。
最終試験を合格し、免許を取得したハナビ。ケンジと共に沖縄の戦争遺跡を巡る中で家族を守るために戦い、『生きて虜囚の辱めを受けず』という同調圧力の基で集団自決をした沖縄の歴史を知り、『家族』について改めて思考するようになる。
終戦記念日の前日、8月14日に新潟の弟より電話があり、ハナビの母が急逝したと報告を受ける。急いで、新潟に向かうハナビ。8月15日、冷たくなった母親と再会し、これからは自分一人で選択し、人生を歩んでいくのだと覚悟を決めるハナビ。もう動かない母を見ながら、今まで自分を縛っていた母からの圧力がなくなり、自由になっていくのを感じる。花火が打ち上がるのか、そのまま散っていくのか、ここからは自分次第。母に反対されて別れてしまったケンジに電話をかける。ここでもう散ってしまうかもしれないけれど。

荒木 智子

(大学院)文芸領域

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