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(大学院)文芸領域 片岡 友理

輪廻転生と存在意義を描く不条理劇の探求

<作品名>
アプシュルディテの境界

死後の世界で魂の真理に触れる女性と、現世で彼女の記憶を胸に未来を紡ぐ男性。生と死、絆と縁が交錯する長編ファンタジー。
宗像沙織(28 歳)は、大手新聞社の雑誌編集者として困難な家庭環境を乗り越え、懸命に生きてきた。映像会社に勤める理想の男性・目黒聡(30 歳)と出会い、結婚を控えた20××年 7 月 29 日、花火大会に向かう途中で交通事故に遭い、聡の目前で急死してしまう。
死後、眷属のキツネ・巻物とキーマンに導かれ、輪廻転生の仕組みを学び始める沙織。人間の経験は「パズルのピース」として蓄積され、魂はやがて平等に達するという壮大な世界観が描かれる。一方、現世では深い喪失感を抱えた聡が、沙織のいない現実と向き合いながら生きる道を模索する。
悲しみの中、生まれ故郷のカナダへ旅立った聡は、旧友ライアン・タキガワに案内された養子縁組施設で、女児ヨンと出会う。ヨンは過去生の記憶の断片を持ち、聡との間に特別な絆を築いていく。聡はヨンに沙織の存在を感じながら、記憶を未来へと繋ぐ決意を固める。
本作は、輪廻転生や魂の成長を通じて、不条理とされる人生の意味を問い直すと同時に、社会問題や個人の生き方への洞察を交えている。死後の世界と現世を舞台にした二重構造の物語は、哲学的テーマをファンタジーという形で昇華し、読者に考察を促している。
第 1 章:狭間
宗像沙織は婚約者・目黒聡と花火大会に向かう途中、交通事故で急死する。あの世とこの世の間にある「狭間」に導かれた沙織は、戸惑いながら自らの死を受け入れていく。
第 2 章:人界
沙織は現世での記憶を思い返す。聡との出会いや、家庭環境の中で育まれた自身の価値観について向き合い、心の整理を始める。
第 3 章:水槽
眷属のキツネ・キーマンに連れられ、沙織は現世を展望できる「水槽」に向かう。自分の葬儀や悲しみに暮れる聡の姿を目の当たりにし、死を受け入れることの難しさを実感する。
第 4 章:構成
沙織は輪廻転生の仕組みを学ぶ。キツネたちの正体が幼い頃に可愛がった近所の犬「ウーちゃん」であること、2 人が同一の存在であることを知り、驚きと安堵を覚える。
第 5 章:再生
狭間での学びを終えた沙織は、キツネたちに見送られながら、次なるステージ「あの世」に進み、転生の準備を整える。
第 6 章:地上
視点は聡に移り、沙織との出会いから別れを振り返る。ヨンとの出会いが沙織の人生と重なり、新たな家族を迎える覚悟と決心を固める。

片岡 友理

(大学院)文芸領域

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