(大学院)文芸領域 林 一
彼らはここを目標としなかった・・・
青春ジャズ小説を通した小説造り、特に文体造りの研究
<作品名>
モノクロームの夕陽
偶然知り合った普通の高校生三人(男子二人、女子一人。男子の間に友達以上の感情ありそう)が校内の文化祭でジャズを演奏するまでの話。決して上手いわけでもなく、観客に大ウケするわけでもない。それでも三人は楽しい。そんな、普通にありそうで、ないかもしれない話。
カオリ、ケイ、リュウの三人は東京から50kmほど離れた進学校に入学する。それぞれに期待と不安を抱いた三人はクラブ活動の選択でそれぞれ小さな挫折をする。ケイとリュウは鈴木杏奈の魅力に引き寄せられるようにして彼女のポップス系のバンドに入部する。カオリはクラシック研に入部するがその実態は帰宅部であった。
野球部の応援に駆り出されたリュウはそこで先輩からジャズのリズムを教えてもらい、その楽しさを知る。練習を重ねたリュとケイは少しずつ上達するものの、テンポとリズムが合わない。音楽堂の戸締りをしに行ったカオリはリュウ、ケイと偶然出会う。そしてちょっとした諍いの結果、ジャズの魅力に取り憑かれる。合わせて二人に演奏へのヒントを与える。カオリのヒントで演奏のコツをつかんだリュウとケイの成長によって、杏奈のバンドは文化祭の演奏会で大成功を納める。そしてその日はまた杏奈のバンドの解散の日でもあった。
今後のバンドをどうしようか思案しているリュウとケイのところにカオリが押しかける。それまでお互いに名前も知らない間であった。カオリはリュウとケイをなんとか説得してジャズバンドを結成する。しかし、ジャズの演奏は簡単なものではなく三人は苦戦する。カオリはバンドのために特別の楽譜を用意してそれを打開する。そのころ、リュウは勉強の成績が落ちてきて先生に注意される。これはケイが勉強の仕方をアドヴァイスすることで乗り切る。
二年生の夏休み、三人は山里のペンションで合宿して結束を固めて秋の文化祭のライブに臨む。三人は楽しく演奏するが、観客には理解されない。もしかしたら、彼らは大学に進んでもジャズを続けるかも知れない。
このように高校生がジャズの演奏を楽しむに至る過程を何の奇跡も挟まずに描いた作品である。この設定の中で、ストーリーの構築と文体の研究を行なった。ストーリーについては「当たり前」を逸脱しないように注意を払った。また文体の研究についてはジャズのオノマトペ表現、地の文でもジャズのリズム感を感じさせるような工夫を行なった。
林 一
(大学院)文芸領域
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