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「時の異邦人(エトランゼ)」における首藤剛志創作技法研究

― 物語創作の三女神 コーラ(場)・カーラ(時)・ポーラ(極)を探す ―

(大学院)文芸領域 菊池加奈

「時の異邦人(エトランゼ)」における首藤剛志創作技法研究
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 本論は脚本家首藤剛志(1949-2010)の創作技法と、全作品を貫くテーマや作風の礎となる原体験を、研究者視座のみならず、家族であり共作者でもあった筆者の視点を加えて分析解読したものである。芸術大学大学院文芸領域の作家創作技法研究の修士論文として、新規性と固有性のある研究手法と論述手法に挑戦した。中心となる論述は、首藤のオリジナル脚本による映画『時の異邦人』と本人によるノベライズ小説の時間表現の差異分析、筆者が口伝として授かった脚本技法の分類、将来の作家性を示す芸術論が書かれた首藤15歳時の随筆解読の三点である。
 各章の内容を紹介すると、「序論 方法論の構築 ―二重のドキュメンタリーと論述のキュレーション―」では、本論の土台となる構成を提示した。本論の中心はドキュメンタリー手法である。映像作品のドキュメンタリー手法と同様、論述においても一般的な研究リサーチ記述ではなく、メタ視点からの解釈や介入を加えた。この研究手法との邂逅は第1章に記録した。二重とは、二年間の研究過程と成果のドキュメンタリーと首藤と筆者の間にあった現実生活のドキュメンタリーを意味している。また「論述のキュレーション」とは、過程と成果の論述を展示とみなし、その内容の個々をどう展示すれば作品としてより魅力的であるか、既視感から外れることができるかの挑戦の記録として表題とした。「第1章 研究手法の構築 ―先行研究と本論におけるメタ・リサーチアプローチ―」は、先行研究の有無と修士1年後期ゼミ1に生じた「メタ・リサーチアプローチ」をドキュメンタルに紹介してある。「第2章 首藤剛志と『時の異邦人』 ―未完であること―」は『時の異邦人』の内容紹介と首藤剛志の経歴と作風、シリーズ化された小説の多くが未完であることが首藤にとって何を意味しているのかの考察である。「第3章 首藤口伝創作技法を「コーラ(場)・カーラ(時)・ポーラ(極)」で読み解く」では筆者が受けた口伝をコーラ(場)・カーラ(時)・ポーラ(極)として分類した。「第4章 「時の異邦人」としての首藤剛志 ―15歳の随筆『薬師寺』より―」は15歳の奈良薬師寺来訪随筆で表している芸術論と61歳薬師寺拝観のために奈良にて客死した縁(えにし)を踏まえ、晩年の首藤を追想しながら彼の芸術への求心を論じた。「結論 未完のキュレーション」は作家の創作に完了はあるのかという問いと、作家論の論述は「未完の展示」であるという本論の結論を提示している。なお本研究における首藤作品使用は著作権継承者の許諾をうけて行われた。

菊池加奈

(大学院)文芸領域

日本脚本家連盟・日本放送作家組合・デジタルアーカイブ学会所属
研究領域:方法論・言説分析
哲学学士論文『福島原子力発電所事故調査報告書における「想定外」言語分析-ミシェル・フーコー「回折点」からの解析-』(慶應義塾大学通信教育課程)
学業に入る以前は文筆業。脚本家舟橋和郎(1919-2006)に21年間師事。1991年24時間テレビ『夜が明ける前に 恵子の選択』で脚本家デビュー。ルポルタージュ、ドキュメンタリードラマ、アニメ脚本、作詞等。首藤剛志(1949-2010)晩年の19年を共にした。首藤との関連作品として『魔法のプリンセスミンキーモモ』『超くせになりそう』(シリーズ構成首藤・菊池アニメ脚本担当)『都立高校独立国』(原作首藤・菊池オーディオドラマ脚本担当)等。

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