(大学院)文芸領域 東川 達三
江戸時代の豪商「淀屋常安」の青年期に関する創作的アプローチについて
歴史的背景を基にしたフィクションの研究
<作品名>
小説・淀屋常安
物語は、伏見の炭問屋「角屋」の手代である三吉(後に「与三郎」と改名)が、山城国筒城村に住む炭焼き職人の忠兵衛のもとへ冬の炭を仕入れに行くところから始まる。忠兵衛が腰を痛めていたため、与三郎は主人の了解を貰ってから行商を手伝う約束をする。店に戻った与三郎は番頭の喜助から与三郎という新しい名前をもらい、忠兵衛を手伝って商人として一人前になる覚悟を決めて店を出る。与三郎は道中で立ち寄った茶屋で美しい娘と出会い一目惚れをしてしまう。
忠兵衛と一緒に暮らし始めて、忠兵衛が不思議な能力の持ち主であることに気が付く。行商では、満月の夜に光を放つ『竹取の花入』を所有する庄屋の善右衛門や茶人で大名の古田織部と出会う。善右衛門と悪徳商人の山城屋の関係や盗人の万次が登場し、悪と善が表裏一体であり、商売は金儲けだけではなくて人助けでもあると忠兵衛が主人公に教える。
ある日、古田と細川忠興が男山の空中茶室で極秘の茶会を開き利休の供養をしていたところ、突然秀吉が現れて謎の名物『竹取の花入』を献上するよう要求する。古田は善右衛門に竹取の花入を譲ってくれるように懇願するが、実は作り話だったことが明らかになる。思案した善右衛門が忠兵衛に制作を頼むと、与三郎が偶然見つけた夜光苔を使って夜目に輝く花入を作った。古田は花入に黄色のツツジを添えて秀吉に献上し難儀から逃れることができた。
第二部でも与三郎はさらなる困難と成長の機会に直面する。金閣寺の茶会の夜、伏見城の普請に必要な追加の材木供給の依頼が古田の元に舞い込んでくる。だが、大手門の建設地にある巨岩のために工事が遅延していることを知る。古田は再び忠兵衛にこの難題を解決するよう依頼する。忠兵衛は善右衛門の商売敵の山城屋に元伊賀忍者を集めさせ、巨岩の爆破作業を計画する。忍者たちの活躍で大岩が粉々になり、工事は大成功を収める。山城屋には伊賀の再興という大義があることが工事の過程で明らかになり、忠兵衛たちが手助けをして、山城屋と万次を改心をさせる。
与三郎は、伏見城の次に大規模な淀川堤の普請を任されることとなり、宇治川の川筋の付け替えで革新的な競争普請の仕組みを導入する。効率的な普請によって与三郎の評価は一層高まり「淀屋」として名を上げる。淀川で成功を収めた与三郎は江戸時代の商人として豪商「淀屋」の礎を築き大きな名声を得るきっかけを得る。
東川 達三
(大学院)文芸領域
このコースのその他作品