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つながりあうのって難しいよねって話

文芸コース 鈴木良輔

つながりあうのって難しいよねって話

本制作では人と人がつながることの難しさをテーマに据え、その構造を哲学と言語学、さらに数学的視点を用いて多層的に記述した。
日常生活の中で誰もが経験する、言葉がうまく伝わらない感覚や、同じ出来事に対する受け取り方の違い、異文化間での違和感などを出発点に、それらが単なる誤解ではなく、言語・認識・社会的秩序の絡み合いから生じる現象であるという仮説を立てています。

その構造の理解のために最初はフェルディナンド・デ・ソシュールの一般言語学講義の概念の紹介から始まり、言語の恣意性や差異の体系等の概念を通じて人や物が互いを理解する際の構造的なずれを整理しました。言葉の意味は世界の事物に対応するというよりも、他の言葉との区別の中で立ち上がるというソシュールの視点を手がかりに、同じものを見ているはずなのに、同じようには見えていないという状況を説明します。
次にジャック・ラカンの大文字の他者や対象a等の概念に続けていき、人間社会の秩序や無意識が見え方に与える影響も示唆しました。
そこから字数の関係で詳しくはできませんでしたが、メルロ・ポンティの現象学や科学哲学の知見等につなげていくことでさらに知覚や認識等が文化によってどのように歪んでしまうのかについても触れました。
それらの哲学概念を引用した後で、拡張して人の知覚や認識が言葉や社会環境に大きく依存している状況を描きいくつかの概念を新しく導入することで、つながることが難しいとは具体的にどういう状況なのかを表わしました。

前半は哲学的な側面からの記述が多かったですけれど、後半以降はゲオルグ・カントールの集合論とベルンハルト・リーマンの多様体論、射影幾何の概念を引用して人間関係や文化差を「集合の分け方」「多様体上の位置」などとしてモデル化することで、つながりの難しさを構造の断絶として数学的に記述する試みを行いました。

ここは文芸領域ですので、詳しい数学的な記述は避けて概念中心に引用して数学モデル構想の提示で留めておきました。その過程でつながることの延長として個数問題や距離問題、差異数空間、正負成立条件等の概念についても提示しました。
論文とは違い哲学エッセイですので、構想中心で次回以降の論文制作のためのメモ書きとしての側面が強いです。論文では数学や文献、他論文からの引用含めて作成していきます。

鈴木良輔

文芸コース

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