本文へ移動

(大学院)工芸デザイン分野 田中 哲也

時器 TOKI‐光の器 記憶の器 永遠の器 3rd version
Vessel for Light, Vessel for Memory, Vessel for Eternity-3rd version 2024年
ミクスドメディア、信楽透土、蓄光材、落ち葉(一部展示場所で採取)



現在陶芸論  —土まみれの机上より—

我々陶芸家は、器をつくるが、見えないものや、形のないものを盛る器をつくることにより、新しい表現が可能だと考え、最新のシリーズとして、時のための器、「時器TOKI」をつくっている。
枯れた落ち葉を採集し、それらを焼成すると半透明になる陶土、信楽透土の泥漿(粘土を液状にしたもの)に浸し、乾燥し、焼成する。葉の一部は、焼成中に焼失し、一部は灰になり、ガラス化し釉薬になる。
写真は、二次元にて時を切り取るものだと思うが、このシリーズは、三次元にて時を切り取る。また陶は、何万年も腐らない。割れない限り、その形、色を永い間保つことが出来る。本来ならその場所で土に還って行くものを陶に置換することによって、半永久性を与えた。作品には、蓄光材が焼き付けてあり、日光により蓄光され、日没後光る。日々繰り返された光合成の記憶を蓄光と発光と言うプロセスに置き換えた。

1.制作物・研究成果物の客観的記述
研究に関しては、主題として今日の現代陶芸の動向や展開を述べた。時間軸的には、戦後の八木一夫(1918~1979)や走泥社の展開から始め、安永正巨(1982~)や岩村遠(1988~)等の若い世代の今日の展開を述べ、私自身の陶芸家としての立ち位置や作品について述べた。資料としては、陶芸史や評論文等を参考した。また、今まで陶芸家として培った情報や知識、思考や哲学、を基に論述した。自身や自作品については、今まで語ってきたことや考えてきたことを文章化し述べた。このことにより、今までの陶芸の歴史や自身の作家活動の振り返りが出来、今後の作家としての指針を宣言するものともなった。
制作の主題に関しては、時のための器というコンセプトで、制作した。技法としては、陶を主体としたミクスドメディアを当初から展開しているが、制作に関しても今後の指針を示す作品となった。

2.制作研究の背景・意図
外舘和子氏は『現代陶芸論』のなかで、四耕会や走泥社から始まる抽象・半抽象の造形を自由造形的陶芸と称し「田中哲也(1970~)ら様々な空間的アプローチを試みる作家も、俯瞰すればこの自由造形的な陶芸表現のベクトルの先に現れてきたといえよう」 と記している。この文章に対して当人にとって、はじめは、疑問あるいは、違和感を持った。例えば、参考にしている作家やコンセプトの打ち出し方等多くの面で違っているので全くの別物と言えよう。しかし技術面では、ある意味同ベクトル内にあるのかもしれない。角のエッジを立て作品にシャープな印象を与えるというテクニックは、林秀行(1937~2024)先生に教わったものである。彼もこれを辻晋堂(1910~1980)から学んでいる。私の作品は、先人のスタイルや様式と違うが、技術面で踏襲していると言えよう。このような先人作家と現役作家の繋がりについても八木一夫や鯉江良二(1938~2020)を挙げ、先人からの影響について述べた。
制作に関しては、先人陶芸家の展開は、陶芸界の中で行われていたが、私と同世代、若い世代の陶芸家は、その境界を超越し現代美術のフィールドでも活躍している。現代美術と陶芸のボーダーを超えるだけではなく、新しい領域や様式を創造したいと考える。

3.制作研究の位置づけ
近現代において、美術史は、美術館学芸員や評論家によってアーカイブされ歴史化されてきた。博物館制度の確立やジャーナリズムの発展以前には、ジョルジョ・ヴァザーリ(1511~1574)の美術家列伝等の作家の目線から書かれた史書も存在する。私は、この修士論文において陶芸家からの視点で論述した。美術は私事であり、歴史は、他人事である。主観、客観のバランスを取りながら、新しい視点による現代陶芸論を展開できたと考える。
制作に関して。新しい素材が出てくると、新しい表現や技術が展開される。私は、2009年に信楽窯業技術試験場で開発された焼成すると半透明になる土、信楽透土を使い制作している。その土を使い今までには無い新しい表現を展開することが出来た。素材を理解し活かすと言う、工芸的観点に立ち現代美術を展開している。陶芸からコンテンポラリーアートにアプローチする作家は、多いが、特にイタリア、韓国はその傾向が強い。一概には言えないが、私を含めて日本は、素材を理解している作家が多い。これが新しい領域を形成させる一因でもあると考える。

時器 TOKI‐光の器 記憶の器 永遠の器 3rd version
Vessel for Light, Vessel for Memory, Vessel for Eternity-3rd version 2024年
ミクスドメディア、信楽透土、蓄光材、落ち葉(一部展示場所で採取)

時器 TOKI‐光の器 記憶の器 永遠の器 3rd version
Vessel for Light, Vessel for Memory, Vessel for Eternity-3rd version 2024年
ミクスドメディア、信楽透土、蓄光材、落ち葉(一部展示場所で採取)

田中 哲也

(大学院)工芸デザイン分野

このコースのその他作品