(大学院)工芸デザイン分野 吉田 富美子
「組む」
ハギレの化け方 ― 不用なハギレの活用法 ―
1.制作物・研究成果物の客観的記述
「ハギレ」とは、「端切れ」「端布」と表記されるように、物を製作するために布を裁断したあとの残り布のことであり、いわゆる半端な布のことである。布を使って、服やクッション、バッグなどを製作した後に出る布端のことである。この段階での「ハギレ」は、まだ用途が決まっていないだけの布端に過ぎない。
しかし、使用しないとなると、廃棄されることになる。この段階で、「不要なハギレ」となる。しかし、この「不要なハギレ」を、未だ用いていないだけの「不用なハギレ」と捉え直す。いかに小さなハギレでも、「廃棄=命を終える」という方向には進まずに、「命を吹き込み、活かせる物」、「未だ用いていないだけの物」という方向に歩み進めることを考える。「廃棄される不要なハギレ」を、「新たな命が吹き込まれるまで待機させているハギレ」と捉え直し、発想と技とのタイミングが合った時に、いよいよ出番を迎えて「必要なハギレ」となる。その「必要なハギレ」とするための活用法を提示するものである。
「化ける」とは、本来の姿や形が変化して別のものになることであり、思いがけない物に変化を遂げることである。「化け方」とは、「廃棄」する物を「待機」させ、「好機」を迎えた時に、別の物に変化させ、活かすための方法である。
その「ハギレの化け方」を、本研究では以下の31の方法として提示した。
縫う、固める、組む、貼る、引き抜く、描く、組み合わせる 、綯う、空ける、通す、裂く、丸める、折る、分解、巻く、なびく、挟む、摘まむ、包む、切り刻む、結ぶ、重ねる、回転、染める、繋ぐ、刺繍、絡める、刷る、書く、型を抜く、組み入れるの31の方法である。
2.制作研究の背景・意図
私は、31年前に、福岡県教育センター技術・家庭研究室で、「物を大切にする心を育てる家庭科指導の研究」をテーマとして、「不用なハギレ(布)」を活用した家族に役立つ物の製作に関する研究をした。その研究を通して、児童一人一人がハギレを活用して家族の役に立つオリジナルの物を製作することができるとともに、製作活動を通して物を大切にする心の醸成を図ることができるという結果を得ることができた。
当時から環境教育の必要性が打ち出され、その後SDGsの提言などが行われてきている。しかし、前研究から31年を経過した今も、大量の物が家庭や地域、職場などから排出されている実態がある。そこで、家庭とともに地域にも目を向けながら前研究をさらに進めていこうと考えた。芸術作品制作(ハギレでは製作)においても、時代の流れを考えて、ごみを減らす、物を使いきるという課題を受けることは必要なことであると考える。
前研究では、指導、支援する立場からの研究であったが、今回は、製作する立場からの提案とする。また、前研究では、小学校高学年児童を対象とした研究であったが、今回の研究では、乳児から高齢者までの幅広い年齢層の人を対象に考えたい。小学生同様に、一人一人が既習体験や生活背景を基盤とした独自の発想で、製作活動を展開することができるようにしたい。老若男女を問わず一人一人が独自の発想を活かした作品作りをするためのイメージ化への手助けとなることを考え、「ハギレの化け方」をより多く提示する。
3.制作研究の位置づけ
地元福岡県の伝統的工芸品の素材としては、紙、竹、布、木、石、金属、土(陶器)などがある。そのそれぞれの素材に関しては、3R(リデュース、リユース、リサイクル)やSDGsの考えのもとにした理論研究または作品提示は多くある。布(ハギレ)に関しても、「縫う」という方法での研究、出版本は多くみられる。しかし、本研究を進めるに当たって、布(ハギレ)の多様な活用法に関する先行研究を調べたが、見つけることはできなかった。図書館でも協力を得て探してもらったが、布(ハギレ)の多様な活用法に関する書物は見つからず、図書司書の方々も、そのような研究や本は見たことがないということであった。そこで、先行例のない研究であるという点から、本研究は意義あるものであると考える。
「絡める」
「分解」
吉田 富美子
(大学院)工芸デザイン分野
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