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(大学院)工芸デザイン分野 中兼 雅之

「アダム」、人間とAIが融合する新しい生命体。人間の表情を保ちながら金属的風合いの頭部
に覆われる進化脳を表現


⽇本の美意識が「ポスト・ヒューマン」を担う  〜 AI(⼈⼯知能)に搭載されるべき、⽇本固有の美意識・感性とは 〜


1. 制作研究の概要
現在は、数多くの紛争や混乱の絶えないVUCAの時代であり、人工知能(AI)の指数関数的進化を遂げるテクノロジーの加速度的発展によって、人間の行動様式もパラダイムシフトの過程にいる。そして人類はかつて経験したことのない世界規模の人口減少を迎えようとしている。
地球規模で、改めて「人間とは何か」が、真に問われるタイミングに差し掛かっているのだという問題意識を、私は強く持っている。
一方、日本には、古代から現在まで脈々と伝わる多くの固有な美意識・感性・価値観が存在してきた。それらを改めて抽出しその本質を見極めたとき、上記の課題感を含めた今後の未来に向け、この日本固有の美意識・感性・価値観の持つポテンシャルは、あらゆる文化・宗教・思想を超えた全人類にとって普遍的価値として十分通用するはずだと確信した。
本修士論文では、「⽇本固有の美意識、感性とはどんなものであり、それらは何に由来するのだろうか、そして、これら⽇本固有の価値観は、⼈類への普遍的価値となり得るだろうか、その中に、世界を少しでもより良くするためのヒントは隠されていないだろうか」、の問いに対して仮説と考察を行なったものである。

2. 制作研究の背景・意図
古代より脈々と続く様々な二項対立構造。文化、民族、宗教、思想、政治等、世界中の様々な場面で対立と分断の歴史は絶えない。そして日本に限らず、世界の人口は間もなく減少トレンドに転じる。更に、昨今話題のAIの飛躍的進化とその先にあるシンギュラリティ(技術的特異点)後に起こる世界も人類にとって大きな脅威であることは言うまでもない。
現在の我々は、混沌とした不安定で先の見えない「答えのない世界」に生きている。もはや左脳ベースの効率性や合理性だけでは物事は解決できない。これまで以上に、直感や感性を極限まで磨くことが、あらゆるジャンルで求められていると感じる。
そんな中でも我々は、「人間とは何か」という根源的な問いに対し、そろそろ答えを出さなくてはならない。
これから未来を担う人間、もしくはそれに変わる生命体、あるいはAI、なんにせよその思考のベースに、直感的で感性的な美意識や価値観のようなものが必要になる。そしてもしかすると、古来より伝わる日本固有の美意識や感性・価値観がそれを代替できる可能性が十分大きいと考えた。
その仮説を持って、それら美意識や感性・価値観を有する未来の生命体ないしはAIを、「ポスト・ヒューマン」と呼んだ。この「ポスト・ヒューマン」(人類2.0)なら、少しは安心して未来の地球の運営を任せることができるかもしれないと考えたからだ。
日本固有の美意識・感性・価値観こそが、かつて世界経済を席巻した日本が再び世界で貢献できる「輸出可能なソフトウエア」かもしれないと信じている。
我々日本人がやるべきことは、再び日本の価値を世界に周知し、世界平和に貢献することで存在感を高めることであり、それが唯一の生き残る道ではないだろうか。
それが、仮に、AIを搭載したアンドロイドOSへの機能搭載という方法であっても、である。

3. 制作研究の位置づけ
日本独自の美意識や感性に関して、前述のようなアプローチを通じて仮説を行った論文は、これまでどこにも見当たらない全く新しい仮説であり、新規性がある。これらを普遍的な価値と位置付け、改めて日本の優位性を少しでも多く広めたい。
人類の未来を思考するとき、AIの飛躍的進化を横目に見ながら、「⼈間とは何か、どこに向かうべきで、そのために今何をすべきなのか」、という根源的テーマを避けては通れない。
修士論文と修士作品は、この本質的テーマに沿った「人類へのアンチテーゼ」として位置付けており、一人でも多くの方に考えるきっかけを与える一つの媒体となってほしいと願う。
この一貫したテーマを通じ、今後も様々な制作・表現活動を継続してゆくつもりである。

右は「ヤハウェ」、旧約聖書における神の名で、「私はある」とい
う存在そのものを示す自己宣言の神名 左は「エゼキエル」、旧約聖書に登場する預言者

全体インスタレーション

中兼 雅之

(大学院)工芸デザイン分野

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