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最強つよつよママチャリ号

貯金ギリギリ限界レーシング自転車

(大学院)工芸デザイン分野 溝上 将也

クロームモリブデン鋼とカーボンチューブのハイブリット

【製作期間1年、費用は70万円ほど費やしました。来年度は電動化も考えており、もう半年と20万円が追加で掛かりそうです。製作中にも「3万円のママチャリで十分では?」という邪念が度々脳裏によぎりましたが、なんとか挫折することなく、修士製作としてママチャリを完成させることができました。経済合理性を一切考えず、理想を追い求めた自転車になります】

この作品のコンセプトは、「日常の移動を、最高水準の快適さと美意識で再設計した“21世紀のママチャリ”をつくること」です。作者自身の「毎日乗る理想の自転車とは何か」という問いから出発し、通勤・買い物・街乗りといった生活の移動におけるストレスを徹底的に減らすことを目的に設計されています。単なる趣味性の高いカスタムバイクではなく、生活道具としての実用性を本気で突き詰めた結果として、前後ハブダイナモ、ベルトドライブ、電動変速(Di2)、フルインターナル配線、ドロッパーシートポストなど、現代的な機能が一台に統合されています。

同時にこの作品は、工芸作品としての成立も強く意識されています。フレームは伝統的なダイヤモンドフレームをベースにしつつ、カーボンチューブと金属ラグを接着・ブレージングで接合したハイブリッド構造を採用し、素材や技法の異質な組み合わせそのものを造形の核にしています。さらに塗装を施さないRawフィニッシュによって、真鍮の流れた痕跡、接着の存在、削り込みの輪郭といった「製作の痕跡」を隠さず見せ、完成品であると同時に「どう作られたか」を語る作品にしています。これは、工業製品のように均一な外観を目指すのではなく、制作過程の必然性を価値として可視化する姿勢だといえます。

また、作者の経験(ロングライド志向とママチャリ整備の実務感覚)を統合し、速さよりも“楽に、快適に、長く使えること”を重視する価値観が作品全体を貫いています。つまり本作は、「実用性を追求すると造形はどう変わるのか」「生活道具はどこまで美しくなれるのか」を問う試みです。見た目の新しさのために機能を盛るのではなく、生活の課題を解決するための技術選択が、結果として未来的な造形を生み出している点に、この作品の本質があります。

溝上 将也

(大学院)工芸デザイン分野

1998年 大阪府大阪市で生まれる(現28歳)
2016年 大阪市立扇町商業高校 卒業
(1浪)
2017年 高知大学人文社会科学部 入学
(2留)
2022年 陸上自衛隊 予備自衛官 任官
2023年 高知大学人文社会科学部 卒業
2023年 丸紅株式会社 入社
2024年 京都芸術大学大学院 工芸デザインコース 入学
2025年 東京製菓学校 パン専科 入学

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