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「自分史手毬」の制作と手毬のある生活の提案

─日本における手芸手毬のこれまでとこれから─

(大学院)工芸デザイン分野 中山 咲

 まず制作研究の手法については、日本における手毬という工芸品について、その制作手法を現代から振り返るに当たり、江戸時代以前の遊具としての手毬から現代における鑑賞品としての手毬の姿の変遷を、年表を作成することで俯瞰した。その流れの中で現代の手毬の制作は教材化によって制作の入口が広範化している一方で、その制作が均一化され、工業的素材を用いた制作では誰が作っても同じような手毬になる点に対して、江戸時代頃の手毬にあった材料や柄などに属人性の宿った手毬の制作手法について提案するために「自分史手毬」と名付けた制作手法の研究を実制作の記録を通して行った。媒体としては、展示会、図録の作成、論文誌の制作を通して研究の成果を得た。

 次に手毬という工芸品の歴史を振り返ると、江戸時代頃の作る人によって様々な表現が宿されていた形態から現代では教材化・品質の均一化が進み、手毬を作る・親しむという入口が広げられている一方でその表現の可能性に踏み込んだ手毬の制作が忘れられつつあるのではないかという課題を発見した。そこで、現代から再度、材料から自分なりの表現を行う制作手法のアプローチとして「自分史手毬」という形態で、自分自身の手元にある材料や手に入れた材料から作品を制作するなどの取り組みを実践的に行うことで提案・研究を行った。

 手毬の研究という視点で見れば、手毬を主題とした年表は筆者の調査範囲では見受けられなかったので日本国内の文献から手毬の姿の変遷を整理した研究としての意義があると考える。また「自分史手毬」や手毬のある生活の提案についても、一律化した手毬の制作だけではなく、制作した人によって自分なりの手毬を制作しその手毬と過ごすというこれまでの教科書的制作の手毬とはまた違った手毬を未来に受け継いでいくための提案を行った。

参考作品

中山 咲

(大学院)工芸デザイン分野

【経歴】
有限会社アイラ・ラボラトリ デザイナー
京都芸術大学 通信教育部 芸術教養学科修了
京都芸術大学 通信大学院 美術・工芸領域工芸領域工芸デザイン分野修了
柳川伝承まり・さげもん研究会 所属
【研究テーマ】
民具 民芸 公共彫刻 手毬 手仕事
【特に最近ホットなもの】
草木染め  
そこらに生えている野草や野菜の皮などを煮詰めて糸を染めています。 様々なアプローチがあり、また出てくる色もまったく予想通りではないのでそこが面白いです。
糸紬ぎ  
「スピンドル」という道具を使って綿を主とした糸紬ぎにはまっています。均一に紡ぐことが難しく、またほどけないようにする「撚り止め」もまだ研究中ですが、突き詰めて思い出の品々を糸に入れられるようなものづくりに展開していきたいです。

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