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再生古民家・豪楽園

―セルフリフォームの実践とシュロの樹―

(大学院)工芸デザイン分野 伊藤 豪昭

 還暦の頃、これまでの人生の挫折を経て「帰る場所」を求め、祖父母の残した古民家のセルフリフォームを始めた。本来は住居としての再生が目的であったが、そこには電気・水道などのライフラインが無く、生活は工夫と試行錯誤の連続であった。都市生活の利便性を離れ、環境に合わせて身体を使い続ける時間が日常となった。

 敷地には強靭に自生したシュロの樹があり、その姿に励まされるように、池を掘り、石を据え、庭を整え始めた。当初それらは生活環境を整えるための行為であり、作品を制作している意識は無かった。設計図も完成像も持たず、その都度の状況や自然の形に応答しながら手を動かし続けた結果、空間は徐々に変化していった。

 大学院での学びを重ねる中で、これらの行為が単なる修繕や造園ではなく、時間の蓄積によって形成される表現行為であったことに気付いた。制作は特定の素材や技法に限定されず、生活の持続そのものが形を生み出していた。自然と人の関係、未完成を保ちながら変化し続ける環境、その過程自体が作品として成立していたのである。

 本制作は「再生」を目的に始まりながら、結果として生活と制作の境界を失わせた。生きることと創ることが分離しない状態において、場所は単なる住居ではなく、時間を素材とした表現の場へと変化した。本作は、完成物ではなく継続する過程そのものを作品と捉える実践である。

左手前は豪楽園への扉 奥にシュロの樹を中心に池を掘った。

Before 1980年頃筆者撮影 建築後約30年で大改装直後の姿

After 2026年筆者撮影、建具は貰い物に交換、屋根にはソーラーパネルを並べている。

After 柱を取り大広間にして、囲炉裏を設置した。

After 貰い物の中古建具を積み重ねただけ。

After シュロの樹を中心に池を掘り「豪楽〇(園)」の看板も設置。

伊藤 豪昭

(大学院)工芸デザイン分野

私は喜寿で大学院を卒業しました。それまでは芸術とは全く関係な生活をしてきており、突然飛び込んだ京都芸術大学院で学び、自分の生まれ持った才能があったのか、生まれ育った環境に影響されたのか、ここを「豪楽園」と名付け、これからも創り続ける基盤が出来ました。

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