(大学院)工芸デザイン分野 ⼤⻄ ⾹菜⼦
日々の暮らしのためのワークショップ/豊能町
「ともにする」からみえる、暮らしの耕し ―⼤阪府豊能町での取り組みを通して―
本論⽂では、 「⽇々の暮らしのためのワークショップ」とはなにかについて研究を⾏った。
私は 2017 年頃からこれまで各地で多数のワークショップを企画してきた。そして 2020 年、⼤学 4 年次から⽣まれ育った地域である⼤阪府豊能郡豊能町(以下、豊能町)でも活動を続けている。本論⽂は、筆者が豊能町(東地区)で⾏なったワークショップを中⼼に研究を進めていく。第 1 章ではまず、ワークショップという⾔葉について述べる。第 2 章では実際に筆者が関わったワークショップの実例を取り上げる。「とよのぼり」では、地域の⾒慣れてしまった⾵景をワークショップの体験を通して再認識しようと、⾃然にある素材を活かし、地域の⼈とともに作品の制作を⾏った。「とよのさんぽ」では参加者の視点や気づきに焦点を当て、ともに散歩をすることで視点の持ち⽅の違いを明らかにした。そして、2 つの取り組みから得たことをもとに、新たに「交感祭」を実施した。 「⽇々の暮らしのための祭」をテーマに掲げ、参加者も出店者もそれぞれの普段の気づきや視点を持ち寄り、共有できる場づくりを試みた。これらの取り組みから、「⽇々の暮らしのためのワークショップ」には2つの要素、 「ともにする」と「気づきを共有する」が重要であると判明した。ともに作業をし、気づきを共有することで多様な価値観に出会う。その気づきによって、⽇々の暮らしが捉え直される。そして⽇々の暮らしを耕す養分となって染み込んでいく。これが「⽇々の暮らしのためのワークショップ」であると定義づけた。
豊能町で活動を始めたのは、その当時コロナ禍だった⽇々のふとした体験がすべてのきっかけである。部屋から窓の外を⾒たとき、これまで気に留めたこともなかった美しい⼭々が⾒え、暮らしていた町の⾒え⽅が変化したことに気づいた。繰り返す⽇々も、⾒⽅を変えると彩りが⽣まれるのではないか?これまで学内外で染⾊体験を開催してきた私は、ものづくりを通して⾝の回りの⾒⽅を変えられないかと動き始めた。
本論⽂では、ワークショップの他者の視点を取り⼊れられるという点に着⽬し、それがどう個⼈の気づきや暮らしに結びついていくのか、具体的にどうすれば「⽇々の暮らしのためのワークショップ」となるのかを紐解いていく。
「ワークショップ」という言葉が意味する範囲は広い。ものづくりや演劇などの体験活動の他にも、課題解決や合意形成、まちづくりなどあらゆる場⾯でこの⾔葉が⽤いられている。ワークショップの第⼀⼈者は「講義などの⼀⽅的な知識伝達のスタイルではなく、参加者⾃らが参加・体験して共同で何かを学びあったり創り出したりする学びと創造のスタイル(1)」や「情報の⼀⽅的な伝達ではなく、学ぶ側・教える側双⽅の主体的な『気づき』『発⾒』を誘発する(2)」などと定義している。私は、ものづくり体験の場でワークショップという⾔葉と出会い、そして⾃らもワークショップを開催するようになった。当初ワークショップは⼿法を教え、体験してもらうものとして認識していたが、次第に⼿法を提供しているだけではないと気づいた。主催する⾃⾝もワークショップでの体験を通して、参加者から新たな気づきをもらっていたことがきっかけである。多様なワークショップの役割の中でも、他者の視点を取り⼊れることができる点に本論⽂では着⽬する。また取り上げるワークショップは「(企画者を含む)参加者全員が主体」であり「共同し⾏うこと」とした。本研究では、ワークショップの体験により何が得られるのか、そしてその体験が後の暮らしにどのように繋がっていくのか、という視点からワークショップを捉えていく。
繰り返す⽇々の暮らしの中で、他者の豊かな気づきに触れることは簡単ではない。しかし、ともに体験することで、他者の気づきに触れることができる。そして、気づきを共有することで多様な価値観との出会いとなり、⽇々の暮らしの捉え直し(暮らしの耕し)に繋がっていく。この循環をつくる⼀端を担うのが「⽇々の暮らしのためのワークショップ」である。だが、必ずしもワークショップでの気づきが暮らしに活かされるとは限らず、またいつ活かされるのかは分からない。私が約 5 年活動を続けてきた豊能町ですら、⼤きな効果はまだ実感できていない。だからこそ、今後も地域の⼈とともにワークショップ活動を続け、暮らしの耕しを⾒つめていきたい。
とよのぼり(2020-2021)/豊能町
とよのさんぽ(2023-)/豊能町木代地区
⼤⻄ ⾹菜⼦
(大学院)工芸デザイン分野
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