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(大学院)工芸デザイン分野 八木 典子(ヤギノリコ)

つるつくるつーる準備


「アルモンデザイン」でつながる、生きのびるための流域内連携

1.制作研究の概要
【主題】
山が荒れていることや気候変動といった社会問題に対し、自分にできることについての探求。
【方法】
入学当初は、山に蔓延り林業家の邪魔者になっている蔓を活かして籠を作ることやワークショップをすることで、広く山の手入れの必要性を呼びかけることができると考えていた。しかし2年間の研究により、手掛けるエリアも対象も広がり、「流域内連携」や「流域内の自給率の向上」を目指し、「アルモンデザイン」という方法を提唱するに至った。
「アルモンデザイン」これは「地域の中で余っていて放置されている『あるもん』を見出し活用する工夫を行う」という意味の私の造語だ。
【活動の成果】
「あるもん」の代表例として、蔓を従来とは違う方法で活用した。山で蔓を採り、防虫滅菌のため茶で茹で、880個分の蔓のリース(円環)を作り「アルモンデザイン」した。具体的には、これらのリースを私の専門分野でもある保育ともかけあわせ、主に子ども向けのワークショップに活用した。
また、このワークショップの中で問題意識を共有した人たちと共に、「流域探検隊うじたわら」を結成した。この会で宇治川(淀川)流域の源流部であるわが町を探検しながら、「アルモンデザイン」を市民活動として行っていくという行動指針を得た。

2.制作研究の背景・意図
【山が荒れていること】
日本の国土の約7割が森林で、そのうちの約4割が人工林である。多くの人工林には高度成長期に植林されたスギやヒノキが生えている。人びとの生活が化石燃料に頼る暮らしに変わったことや、建築材も海外から輸入したものを使った方が安くて効率がいいことから、日本の山の木々は使われずに放置されるようになった。特に人工林は手入れをされないと荒れてしまう。荒れた山には下層植生も育たず、保水機能も低下し、森林の水源涵養機能や土壌保全機能が損なわれる。
【気候変動】
気象庁のデータからも明らかなように、世界の年平均気温が年々上昇している。地球温暖化の進行に伴い、線状降水帯を含む極端降水が増加することが明らかになっており、近年日本の各地で起こっている。豪雨による災害は今後も増加する可能性が高い。
【防災・減災】
気候変動に対応する対策として、国土交通省は2021年より「流域治水」に舵を切っている。これは、従来のダムや堤防などの設備だけにたよるのではなく、流域内の各エリアで対策をするというものだ。
この「流域治水」の観点で見ると、山は源流部にあたる。荒れた山を放置しておくことは、天然のダムである山の保水力を低下させ、表土や放置した木々が土砂災害で流れやすくなることにもつながる。

これらの課題を受け、源流部における山の手入れを促進すること。気候変動を緩やかにするための地域内資源の活用による自給率の向上。災害を防ぐための自然観察。災害が起こっても対応できるための教育的側面も視野に入れた子どもたちの自然体験の場づくりなどを「流域探検隊うじたわら」や「アルモンデザイン」で今後行っていこうとしている。

3.制作研究の位置づけ
わたしの活動は、山林管理、環境保全、地域資源の活用、教育活動など多岐にわたる重要なテーマを含んでいる。それぞれの分野で優れた実践や活動がある。しかしこれらを包括し、全体のグランドデザインにつながるような活動は、あまり見受けられない。
「流域探検隊うじたわら」のモデルとなっているのは、「流域思考」の提唱者、岸由二氏が代表の「NPO法人鶴見川流域ネットワーキング(TRネット)」である。40年以上前から鶴見川流域では流域治水が行われており、それによってかつての暴れ川であった鶴見川の流域は、急激な都市化した地域にも関わらず、浸水などの被害を免れている。
流域内の特徴は地域によってさまざまである。TRネットの実践を参考にさせていただきながら、わが町に合ったやり方を模索し貢献していくことに、これからの活動の意義があると考える。

2年間の研究で、そもそもの目的であった、「山が荒れていることや気候変動という社会問題に対し、自分にできることについての探求」という意味では、目的を達成できた。山を山の表面だけ見るのではなく、流域のなかの山としての視点を得られたことで、大きく視野が拡がった。
また、気候変動を抑えるためのアクションを考えたときに、流域としてつながった地域内で自給率を上げていくことが有効だ。これに対しては「アルモンデザイン」を提唱し、すでにあるものを活かすことを普及していくという行動指針を得られた。「流域探検隊うじたわら」で問題意識を共にして活動できる仲間も得られた。
今後も活発に行動し、実践を続けていく所存だ。



個人webサイト

流域探検隊うじたわら https://note.com/r_t_ujitawara

ヤギ工房 https://www.instagram.com/yagikobo_88

つるつくるつーる里山の蔓で遊ぼう! 

「流域探検隊うじたわら」はじめます!

八木 典子(ヤギノリコ)

(大学院)工芸デザイン分野

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