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いつもの食卓がもしもの食卓になる ワークショップ

非常時にも”おいしい”を届けたいー安心と活力を生む防災食のデザインー

食文化デザインコース 有住朋子 (LAWS)

同窓会賞

日本は世界有数の災害大国であり、ひとたび災害が起これば、私たちの立場は「生活者」から「被災者」に一転し、心身に大きな負担を抱える。物流の停滞や都市機能の低下は、日常の営みの基盤を揺るがす。その中でも「食」は、生命維持と日常性の双方に関わる行為として、心理的影響が顕在化しやすい領域だ。非常食は、命をつなぐ重要な役割を果たす一方で、炭水化物過多や野菜不足などの栄養面の問題にとどまらず、心にも大きな影響を及ぼすとの指摘がされている。
熊本地震の被災時、友人の畑の小松菜で作った一皿は、張りつめていた心と体を解きほぐした。食べることは、命をつなぐだけでなく、心を支える行為なのだと実感した。この体験をきっかけに「心を支える防災食」のあり方を探るようになった。
非常食を「我慢の象徴」ではなく「安心の象徴」として捉え直す試みを模索する中、調査やインタビューを進めると、多くの人が必要性を感じながらも行動に移せていないという現状が見えた。そこで、防災食を特別なものとして切り離さずに、日常の延長として取り入れる“きっかけ”を届けるために、「いつもの食卓がもしもの食卓になる・ワークショップ」を企画することにした。
ワークショップは①日常の延長で自然に備えが身に付くこと、②心と体に寄り添う食であること、③すぐに始められ、続けられること、の3つをコンセプトにした。災害時の食の課題や備蓄、熱源の可能性などをスライドで共有し、味噌玉や保温ジャーで戻す炒り玄米ご飯など、身近な食材と手法を活かした防災食を試食として取り入れた。また、3日間メニューの考案で、「味気ない」から「おいしい防災ごちそう体験」へとつながる可能性を示した。
ワークショップを通して、「小さな工夫で防災食を普段の暮らしに取り入れることが、未来の自分や家族を守る備えにつながる」という理念に共感が集まった。今後は、暮らしに根ざした防災食の研究を続け、地域の防災教育や防災力の向上に貢献できるような、持続的な取り組みとして広げていきたい。

《導入》課題をひもとき、過去事例からヒントを探る 《提案》無駄なく備える 《実演と試食》保存食づくりや熱源を学び試食 《まとめ》「自宅避難3日間メニュー」の考案 《アンケート》行動変容が読み取れる設計

《味噌玉みそ汁》すぐにホッとできる 《ひよこ豆バター醤油》乾燥豆が身近に 《保温ジャー炒り玄米炊飯》炒り玄米とお湯を注ぎ1時間 《固形燃料炊飯》ほったらかし炊飯 《ベジシート》このベジシートの原料は?

はじまりは、友人の畑の小松菜でつくった緑のパスタ。 余震で不安が続く中、そのみずみずしい苦味と香りが心と体をつなぎとめた。 特別ではない一皿が、人を支える。ーいつもの食卓が、もしもの食卓になるー

有住朋子 LAWS

食文化デザインコース

CONTACT

熊本出身。幼い頃からカラスミに酒をハケで塗って炙る係を任される家庭環境で育ち、酒飲みにならない方が無理な人生を歩む。3カ国に住んだ後、オランダに流れ付き、「レッカー!(おいしい)」だけを連呼し気づけば在住18年。筋金入りの食いしん坊で、旅の優先事項は常に食。妥協できず一晩でレストランを4軒はしごすることも。サンセバスチャンでは「一皿たりとも逃すまい!」と、バル攻略マップを作成したものの、気合いが空回りして知恵熱で戦線離脱。傷心のまま、たどりついた港町ゲッタルガで、人生最高のイカの炭火焼きにありつき、復活を遂げる。以降、理屈はさて置き“良い塩とオリーブオイルと炭火”があれば幸せと悟る。旅の失敗も多く、ビルバオのグッゲンハイム美術館を予約したつもりが、NYを予約し、エジプトでは砂漠に置き去りにされかけ、ミイラになりかけた。食に導かれ30年以上世界を彷徨っていたが、余生は日本を拠点に探求予定。

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