食の道具は宝物
食文化デザインコース 十枝内祐美
「これは、私にとっての宝物かもしれない」
長く使われてきた食の道具に触れたとき。その表面に刻まれた時間や、手の記憶に気づいたとき。何気ない日常の中に、確かな価値があると感じる瞬間があります。
作品「食の道具は宝物」は、畑から食卓までの営みを支える食の道具に宿る記憶に目を向けた映像作品です。
母が40年以上使い続けている落とし蓋との出会いをきっかけに、道具の価値は値段や機能だけではなく、暮らしの中で重ねられてきた記憶や思い出にあるのではないかと考えるようになりました。
現代の暮らしは、効率や便利さを重視する一方で、道具と向き合い、そこに宿る記憶に気づく機会が少なくなっています。しかし、道具を通して振り返る日々の営みには、人と人をつなぎ、暮らしを支えてきた確かな時間があります。
本作品では、音とイラストを用いた構成で、誰かの物語を説明するのではなく、鑑賞者自身の記憶と重ねられる表現を目指しました。畑、台所、食卓という三つの場面を通して、食の道具が働く場所と、その先にある人の気配や生活の温度を描いています。
鑑賞者が映像を「観る」ことで想像が広がり、やがて「気づき」が生まれ、「これは、私にとっての宝物かもしれない」という感覚にたどり着く。そんな心の流れを、大切にしています。
暮らしの中にある宝物に気づいたら、私たちの毎日は、もっと豊かになる。そして、その物語を、きっと誰かに語りたくなる。
この作品が、あなた自身の小さな宝物に気づくきっかけとなり、その物語が、また誰かへと静かにつながっていくことを願っています。
【鑑賞ポイント】
イヤフォン、ヘッドフォン推奨。ときどき目を閉じて、あなたの暮らしの音と重ねながら、あたたかさ、やさしさ、ぬくもり、なつかしさ。思い出や記憶の気配を感じ、想像しながらお楽しみください。
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