いろどり味噌
カラフルでかわいい次世代の味噌へ
食文化デザインコース 鈴木亜季枝
125㎜×85㎜
『 お味噌汁って”茶色でかわいくね 』
こんなふうに思ったり誰かに言われたことはありませんか?
幼い頃の娘からの一言が、私の卒業制作のはじまりです。
日本の食卓に長く根付いてきた伝統調味料である味噌は、美味しさだけでなく、栄養や保存にも優れています。しかしその一方で、若年層ほど購入量が少なく、近年では日常的に食べる機会が減りつつあるという現状があります。その理由の一つには、娘が何気なく発したように、「地味で古くさい・かわいくない」といった印象を持つものであるのかもしれない、と考えました。なぜならSNSなどではカラフルな料理が「映える」として頻繁に登場しているからです。
また、農業分野では、収穫された野菜のうち約13%が、形や大きさが基準に合わないというだけで、規格外として廃棄されている問題があります。これらの野菜を「別の価値」に変換できる必要性を感じました。この二つの課題を「かわいい」「カラフル」の視点から次世代につなぎ、楽しい体験として伝統調味料である味噌を伝承するため、本制作を試みます。
味噌の原材料である、麹・大豆・塩の3つに野菜を加え、ビーツ、カボチャ、サツマイモ(黄・紫)で野菜本来の色を生かした「いろどり味噌」を作り、配合や塩分比率を変えながら試作と検証を重ねました。
都内で行った実験的ワークショップ(味噌教室)では、大豆と野菜の割合を複数パターンで比較しました。その結果、野菜の量を多くするだけではなく、大豆の白さと混ざることで生まれる、やさしいパステルトーンが「かわいい」という印象に繋がることが分かりました。
さらに、味噌消費量第2位の岩手県で、親子を対象とした味噌づくりワークショップを実施しました。初めての味噌づくりとなった子どもたちからは、「めずらしい」「楽しい」「またやりたい」という声が多く聞かれ、味噌を知識としてではなく、「楽しい体験」として記憶してもらえた点に大きな手応えを感じました。
完成したいろどり味噌は、味噌汁として調理してもほんのりと野菜の色と甘味が残り、見た目も味も楽しめます。本制作を通して、「かわいい」という感覚が、食文化や社会課題への関心をひらく入口になることを実感しました。
当たり前の茶色い味噌汁ではかわいくない!?
いろどり味噌に使用した野菜。廃棄されてしまう野菜の自然な色を生かしています
9月から翌年1月までの発酵による色の変化や風味の経過観察をしました。
野菜と麹・大豆の配合と塩分比率を変えながら複数仕込みました。
ワークショップ(味噌づくり教室)では親子参加で開催し、楽しみながら味噌づくりを体験してもらいました。
「かわいい」を入り口に手に取りたくなる形へ。小冊子やラベルも制作しました。
いろどり味噌を使用した味噌汁。野菜の色がほんのり残り、見た目にも楽しい一杯となりました。
鈴木亜季枝
食文化デザインコース
”かわいい食”の探究家
人が生きるうえで必要不可欠な食、自分が大好きな食について学びたいとの想いから京都芸術大学・食文化デザインコースに入学しました。食の心はずむ、かわいさを探究し、かわいい食のデザインをしています。
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