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食と向き合い、守りたい味と出会う 「わたしと食のノート」

食文化デザインコース 大本ひとみ

ファイル(A5・間伐材使用)、用紙(A4・A5 古米を使用した紙)

あなたが、未来に残したい味はなんですか。

それは、誰かが作ってくれた家庭の味かもしれない。
子どもの頃は当たり前にあったのに、気づけば特別なものになっていた味かもしれない。

食にまつわる社会問題は、どこか遠くの話に感じられがちです。
気候変動、生産者の高齢化、食文化の消失——
知ってはいても、日々の忙しさの中で自分ごととして考えるのは難しい。

けれど、ふと「この味がなくなったら嫌だな」と感じる瞬間があります。
近所の豆腐屋の豆腐、季節に一度だけ食べる料理、誰かの手で作られた安心する味。
そんな小さく個人的な感情こそが、社会とつながる入り口になるのではないでしょうか。

『食と向き合い、守りたい味と出会う わたしと食のノート』は、
自分の食の記憶や日常を振り返りながら、「守りたい味」に気づくためのノートです。

味や食感、体調や生活習慣、心に残る食の記憶を書き留め、
「なぜその味を守りたいのか」「その背景には何があるのか」を、無理なく言葉にしていきます。

そこから思いついた小さな行動を“たね”として記し、実際に動けた日は“芽”として残すことで、
行動のプロセスも可視化できる構成になっています。

このノートが目指すのは、
自分の食を知る → 守りたい味に気づく → 食の背景を知る → 小さな行動へつなげるという循環。
義務感ではなく、「あの味を未来に残したい」という感情から始める、やさしい社会との関わり方です。

忙しい毎日を生きる20〜40代を中心に、
食べることを通して、自分の感情や価値観を取り戻すきっかけとして。
そして、今日の食卓から未来を守るための、最初の一歩として。

大本ひとみ

食文化デザインコース

食べることは生きることであり、日々の当たり前の中にその人らしさが表れる──そんな思いから、私は「食」をテーマに制作を行っています。埼玉県出身。保育士資格所持。大学卒業後は宮内庁に出入りする花屋に勤務し、儀式や式典を通して、伝統や受け継がれていく文化に触れてきました。一方で、30歳前半まで会食障害があり、家族以外と食事をすることに強い困難を感じてきた経験があります。だからこそ、食は楽しいだけでなく、ときに不安や記憶、感情と深く結びつく行為だと実感しています。現在は、個人の食の記憶や感情に目を向けることから、社会課題を自分ごととして捉え直すデザインを探っています。グラフィックデザインコース(2023年卒)では、都道府県の食や名産品、観光地などを色で表現(静岡うなぎブルー、宮城腹いっぱいはらこ飯ピンクなど)した卒業制作を制作。

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