高校生の「選ぶ力」を育む食体験
学びと体験から生まれる“食の実践プログラム”
食文化デザインコース 田畑 綾美
コース奨励賞
コンビニで何かを選ぶとき、
「なんとなく」「空腹だから」「いつもの」で手に取ってしまうことはありませんか。
高校生にとって、食を自分で選ぶ場面は増えていく一方で、
「何を、なぜ選ぶのか」を立ち止まって考える機会は多くありません。
私はスポーツ栄養士として現場に関わる中で、"補食"をとってはいるものの、
「何の目的で」「どのタイミングで」選んでいるかを説明できない場面に多く出会ってきました。
この“選択の曖昧さ”は、競技パフォーマンスだけでなく、将来の食習慣や健康行動にも影響していくのではないか。
そうした違和感が、本制作の出発点です。
本作品では、高校生の「選ぶ力」を育む食体験を企画・実践しました。
正解を教えるのではなく、日常の中で食を自分ごととして捉え、
「何を、なぜ選ぶのか」を自分の言葉で考え、行動につなげていくことを大切にしています。
「学ぶ→選ぶ→振り返る→成長」を行き来する設計のもと、
日常で選択機会の多い「補食」をテーマに、目的をもって選ぶ体験を行いました。
その過程で、他者の視点や考え方に触れることで、自分の判断基準を問い直し、日常の食選択を見直すきっかけが生まれていきます。
実践後のアンケートでは、
「どう摂るかで効果が変わると分かった」
「身体づくりのために補食を考えたい」
「栄養表示を見て買ってみる」
といった声があがり、学びが日常の行動へとつながり始めている様子がうかがえました。
教員からは、実施後も目的を意識して補食をとっている様子が見られたという報告があり、
他校教員からも、部活動や家庭科、探究学習など、学校のさまざまな学びの中で導入できそうという反応があり、教育的な価値についても評価が得られました。
高校生期に芽生えた、
「何を、なぜ食べるかを自分で考え、選ぶ力=フードリテラシー」。
それは、将来の生活や健康行動、さらには親となり次世代へと広がっていく可能性があります。
私はこの広がりを「フードリテラシーの連鎖」と捉えています。
本制作で実施した食体験は、
フードリテラシーの連鎖をひらく、行動の起点です。
高校生の生活リズムの中で、補食が『なんとなく』選ばれやすい場面の例
「なんとなく」から「目的をもった選択」へ。 体験を通して“選ぶ力”を育てるプログラムの構成図
STEP1 学ぶ:補食を「目的で考える」ための導入講話。競技や生活場面と結びつけながら、選ぶ視点に触れていく。
STEP2 選ぶ:目的に合わせた補食を選ぶ体験。商品や栄養表示を見比べながら、「なぜそれを選ぶのか」を自分なりに考えていく。
STEP3振り返る:選んだ理由を言葉にし、共有する時間。他者の視点に触れることで、自分の判断基準を問い直していく。
学びと体験を通して育まれる「食を選ぶ力(フードリテラシー)」は、未来の自分の生き方や、親となり次世代へとつながっていく。
田畑 綾美
食文化デザインコース
鹿児島県出身。
栄養士・管理栄養士として、調理、栄養指導、飲食サービス、商品開発など、食に関わる多様な現場を経験してきました。
「食」と「スポーツ」を通じて人を支えたいという思いから、日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士の資格を取得。2016年に仲間と共に株式会社KAGO食スポーツを設立し、現在は代表を務めています。
スポーツ現場は、子どもが食を“行動として選ぶ”場面が多い環境です。そこに、食行動の自立を育む可能性を見出し、スポーツと食の体験を通して、学びが行動へとつながるあり方を実践・探究しています。
“食べる力”は、子どもの成長を支えるだけでなく、将来の自己実現の基盤でもあります。
スポーツ・学校・地域をつなぎながら、“食べる力”が世代を越えて循環する未来を探究しています。
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