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「お野菜仲人」が取り持つ直売所の縁

―狛江市和泉本町での検証を例に―

(大学院)工芸デザイン分野 内藤 雄

素材:和紙、とうもろこしの皮、木工ボンド、柿渋
サイズ:200・200・200(mm)

 工芸が及ぼす人と人との関係性の変化を研究テーマとした。
 現代社会においては生活圏内で偶発的に人との繋がりを意識できる機会は少ないが、執筆者の生活においてそれを強く意識できるタッチポイントとして野菜直売所の可能性を見出した。市内に多く存在している野菜直売所では、生産者との対面型の野菜販売が行われており、立ち話や情報交換などのコミュニケーションが展開されている。実証実験の場として市内の野菜直売所を選定し、そこに工芸を介在させることで、どのような人同士の繋がりの変化が起きるのかを確認、得られた結果から人と人の繋がりにおける工芸の役割を探索することを目的として研究に取り組んだ。具体的な制作物として、直売所において収穫された野菜や果物を乗せて売る野菜トレーに注目し、工芸の観点で野菜トレーを制作、それを「お野菜仲人」と命名した。そしてお野菜仲人に、収穫された野菜を載せて陳列・販売することで起きる人同士の繋がりを観察、考察した。
 野菜直売所という場所は全国に2万4千ヶ所あるとされ、日本においては一般的な存在であり、人との接点がある場所という認識はある程度一般的である。地域振興の観点での道の駅などの事例もあるが、人との繋がり構築という観点では、繋がりの質よりも量を増やす方向性での取り組みであり、そもそも人同士の繋がりを意図していないケースも推察できる。つまり、野菜直売所が秘めた人と人との繋がりを構築できるポテンシャルを無意識下で認識しているにも関わらず、その方向性で直売所を取り扱った取り組み事例は多くないと言える。
 このような背景の中で、本研究は直売所という場所の人同士の繋がりへの可能性を見出すと共に、人の手によって紡ぎ出される工芸というものの元来の在り方を改めて認識できるものとしての意義を研究として取りまとめた。

「お野菜仲人」を直売所に陳列した様子

売り手側から見た「お野菜仲人」の様子

内藤 雄

(大学院)工芸デザイン分野

過去にプロダクトデザインを学ぶ中で、プロダクトにはユーザーとだけではなく、そのユーザーと周囲の人々との関係性にも変化を与える可能性があると考えました。プロダクトが及ぼすユーザーと周囲の人々との関係性への影響は特に工芸の領域で多くの事例が見られ、そのキーアンカーとして工芸的な魅力が働いているのではないかと仮説を立て、本学に入学しました。
普段は医療業界で、直接的な医療では解決されない、隠れた困りごとの探索と解決策の提案・実装について、デザイン的アプローチで取り組んでいます。

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