- 2019年10月15日
- 日常風景
ゼミ通ヒーローズvol.12「西村涼と自主制作について語るの巻」
ゼミ通ヒーローズ Vol.12
西村涼と「自主制作」について語るの巻
今回のゼミ通ヒーローズは、
村上ゼミ2年生(12期生)の西村涼さん(大阪府立港南造形高等学校出身)をピックアップします。
物静かな佇まいながら、ゲームジャムでの企画立案の他、普段から様々な技術検証等を行なうなど、
内に秘めた熱いものがあるはずと睨み、その素顔と本音に迫りたいと思います。
村上
まず、西村ってあまりゲームで遊んでるイメージがないんだよな。
でもゲームゼミに所属してるということはきっとゲームが好きなんだろうし、
その辺りから色々話を聞いていこうかな。
西村
ゲーム結構やりますよ。最近は「ビートセイバー」っていうVRの音ゲーがあって、運動がてらやってます。
好きなゲームでいえば「UNDERTALE」ですね。
村上
いきなり割とコアなところからきたね(笑)
西村
でも一番ハマったのは「MINECRAFT(以下マイクラ)」ですかね。
村上
世界的なヒットコンテンツだよね。今、うちの娘がマイクラにどっぷりとハマってて、一日中ずーっとこればっかり。
家族で旅行するときも車の中でSwitch版のマイクラやってるし。西村はこのゲームのどこに魅力を感じるの?
西村
自由度がすごくあって、
村上
ていうか自由度しかない(笑)
西村
まずは自分で家を建てたり、自給自足みたいな感じで生活できるじゃないですか。
それに加えて大勢でやるときもあって、中にはドラゴンがいるんですけど、このドラゴンをやっつけるために30人くらいで集まってタイムアタックするようなところもあるし。
あとは海外のサーバーに繋げることができて、そこで何でも出来てしまうんですけど、アスレチックみたいなものだったり、鬼ごっことか。
マイクラという世界の中で色んなゲームができてしまうところが魅力で、そのお陰で一番やり込んだと思います。
村上
世界がそのまま存在するから、「今日はそこで何をしよう」みたいな感じで遊ぶことを考える楽しみがあるんだね。
西村
キャラクターが登場する類のものであれば、がっつりやり込んだものとしては「オーバーウォッチ」がありますね。
あとはVRの「バイオハザード」とか。
村上
なるほど、結構幅広く色々やってるね。
西村
どのジャンルにも色んな魅力があって好きなんですよ。
村上
何となく西村の印象としては、普段は課題を真面目にコツコツやってて、
作業の合間にちょっと「ツムツム」やって時間潰すみたいな、そういうライトユーザー的なタイプかと思ってた。
西村
私の場合、生活のメインがゲームで、まずはやりたい事をやって満足したら、
本来やらなければいけない大学の課題をやるんです。
やっぱり最初にモチベーションを上げておかないと何もできないので。
村上
逆だと思ってたな。最初にやるべき事をやって、残り時間でどう遊ぶかっていう。
西村
やりたいことを先にやってしまわないと、多分やる時間を失ってしまうので、
課題とかはその後の時間でやりますね。それが自分としても理想なので。
村上
そう考えるとゲームゼミに入った理由も割と自然な流れだったのね。
でも、そもそも何を目指してゲームゼミに入ったの?
絵を描いたりプログラミングをしたりプランニングをしたり、色々幅はあるけど。
西村
ゲームプランナーですね。元々はコンセプトアーティストを目指してたんですけど、両方ともやる事が似てるかなと思って。
ゲームプランナーは文章でイメージを伝えて、コンセプトアーティストは絵で伝えますけど、
そこに「伝える」っていう共通点を感じてゲームプランナーも面白いなって思い始めて、それでゲームゼミに来ました。
村上
多くの人はキャラクターを描きたがるけど、取っ掛かりがコンセプトアートだったんだ。
じゃあこの大学を目指した理由って何?
西村
ただ単にゲームを作りたいっていうだけだったら専門学校が良いと思うんですよ。確実に作れるようになるし。
でも自分に足りてないものは何なんだろうって考えた時に、やっぱりコミュニケーション力かなって思って、
そのコミュニケーション力を一番強化できそうな所はどこかと考えた時に京都造形大だと思ってここに来ました。
村上
オープンキャンパスとか体験授業でそれを感じたと?
確かに、技術だけだったら、極端なことを言えばネットで調べたり独学でもできるしね。
西村
最初高校の時はグループワークをするタイプじゃなくて、
先生からも「向いてないんじゃないか?」とか「雰囲気が合ってないんじゃないか?」って言われたんです。
でも大学に入ったら、やりたくなくてもやらなきゃいけない環境が作られるじゃないですか。
最初はグループワークが嫌だったんですけど段々慣れてきて、今では楽しめるようになってきました。
村上
どういう風に楽しくなってきた?
西村
プロジェクトで何人かで集まって意見を出し合ってるときとか一番楽しいです。
村上
そこに慣れることが出来たんならこれからも大丈夫だと思うよ。
さてそれとは別に、西村は常に何か色んな表現とか実験を繰り返してるみたいだけど、
早速作品の方を見せていただこうかな。
西村
分かりました。まずはこちらですね。
高校の時に作ったポートフォリオで、今も新しい作品ができれば更新をしてます。
村上
すごいな、高校の時からポートフォリオ作ってたんだ!?大学3年になって初めて作るって人がほとんどなのに。
当時は油絵を中心にやってたみたいだけど、今はもう全部デジタル?
西村
この間水彩画を少し描いたんですけど、基本的にはほとんどデジタルですね。
デジタルの方が効率も良いし、今なら油絵のタッチとか色鉛筆のタッチとか自由に表現できるようになりましたし。
村上
CGの作品もあるけど、CGにも興味がある?
西村
そうですね、特にモデリングに興味があります。モーション付けよりはモデリングですね。
村上
元々コンセプトアートをやりたいところから始まってるから、動きじゃなくて静止画で見せたいって気持ちがあるのかな。
西村
それもあるんですけど、「VRチャット」っていうゲームがあって、それをやってみたくて人物のモデリングもできたら良いなって。
村上
そのアバターとなる3Dモデルを自分の手で作りたいって事ね。
西村
どのみちCGのスキルがあったらゲーム会社に入った後でも色々役立つと思うので。
村上
この学科だとデザイナーとしてゲーム会社への就職を希望する人が結構多いんだけど、3DCGができる人は重宝されるよ。
もしできなければ、イラスト以外の付加価値を求められるしね。UIデザインとかエフェクトデザインとか幅広く。
西村は去年はドット絵もやってたよね。
西村
ドット絵は1年の時に独学で始めて、先輩の作品のお手伝いをさせていただいて、今も自分でやってます。
村上
去年の学科展用の作品で山中(山中楓/4年生ゲームゼミリーダー)の作品のドット絵を西村が作成したよね。
西村
山中さんとはTwitterで元々知り合いで、私が0年生の時に山中さんと同じ大学だって知る機会があって、そこからTwitterのDMでご挨拶させていただきました。
私も何度かTwitterでドット絵作品をアップしてたので、それを見て作品制作のお手伝いの声がかかったんだと思います。
西村
あとはやっぱりゲームを作りたいなと思っていて、UNITYを使って自主制作をやってます。
授業で習った断片的な技術を組み合わせていくと色々な表現ができそうだったので。
これはまだ作り始めたばかりなので全然ゲームの形にはなってないんですけど、とりあえず動かしてみて何か面白い表現ができないかと探ってるところです。
村上
なんか柔らかい動きで、見てるだけで楽しいね。
西村
これは一応シューティングゲームなんですけど、主人公が吐き出した雲が気持ち良く流れる描写をやってみたいなと思って。
村上
なるほど。このゲームもそうだし、以前のゲームジャムのときもそうだったんだけど、
ゲームの仕組みを考えてから作るというよりも、感覚的に「こんな動きだったら面白いな」っていう面白さの着地点を決めて、そこから徐々に仕様を詰めてゲームの形にしていくやり方が得意なのかな。
西村
そうですね。色んな方面からアイデアを出すのが好きで、今回だと動きからの発想ですね。
ビジュアルから考える時もありますし、システムから考える時もあればストーリーから考える時もあって、本当に色々ですね。ゲームって色んな考え方があって良いと思うので。
村上
授業ではいつも宮本茂さん(任天堂のゲームプロデューサー)やら(故)横井軍平さん(元株式会社コトの代表取締役)の例を出しながら企画の進め方を教えてるけど、
あれが全てというわけではないし、もちろんコンセプトを詰めるやり方は理想的ではあるけども
企画内容によっては全てが彼らの方程式に当てはまるわけではないんでね。
西村
プログラマーさんが考える面白いゲームと、イラストレーターさんが考える面白いゲームって
やっぱり違うと思うんですよね。それぞれ特徴があって面白いですよね。
村上
自分はゲームの企画を考えるときは大抵「音」から考えてたな。
映画のサントラを聞きながら外を眺めたり散歩をしたりして、その時の情景や色んなものの動きと音を合わせて、
ここでこういう曲が流れたらこんな鳥肌が立つような演出になるな、とかね。
音楽を聴きながら町を練り歩いて得た体験をシステムに落とし込むっていう考え方が多い。
といっても別にリズムゲームを作るわけではなくて、何かのストーリーだったりアクションの構想を膨らませるために役立てるっていうね。
西村
私は、ゲームを企画する上でシステムは二番目でいいと思ってます。
創作の切っ掛けとして、まずは自分が興味がある事とか、面白いなって思った事とかを重視したらいいと思います。
村上
システムに落とし込むときにはそのこじつけ方として違和感がないように融合できたら全然問題ないわけからね。
他に最近作ったものって何かある?
西村
これはCGを一切使わずにAfter Effectsだけで本物の海に見えるような表現に挑戦してみました。
村上
おお、すごいリアルだ。After Effectsを触り出したら、何でもできるからつい夢中になるよね。
ていうか、ゲームに限らずなんか色々やってるんだな。
西村
今は自分の経験値になるなら何でもやってみたいです。自分を成長させるのが楽しいので。
インターネット上でいくらでも情報が入るので、参考になりそうな画像や動画を見て、色々なツールとか手法を試してみてます。
村上
触ってて一番楽しいツールって何?
西村
今はUNITYが楽しいです。表現に不可能がないので。
プランナーとして、色んな表現が出来た方が将来的に得じゃないですか。イメージも伝えやすくなるし。
その手段として色々いじってみてます。
村上
今年のゼミ生はその考え方で動く人が多いね。
技術習得はもちろん大事なんだけど、「技術を習得した先に何があるのか」というのを最重要視して動いてる人が多い。
ちなみに西村の将来の夢は?
西村
私の好きな「UNDERTALE」を作った人ってほとんどの作業を一人でやってるんですけど、
そんな感じで何でもできちゃう人に憧れてて、一人で自分の技術を全て詰め込んだオリジナルのゲームを作りたいと思ってます。
村上
組織で動くよりは単独で動きたい?
西村
仕事は仕事で別にして、単独の創作は趣味でやります。
村上
UNITYが浸透してから、そういうことが実現可能になってきたよね。
自分の作家性って何だと思う?
西村
まだ良く分からないです。
今はまだ経験が浅いので、それを探るために色々なツールや表現方法に触れてみてるって感じですね。
村上
好きなものは?
西村
錆…ですね(笑)
村上
錆!?
西村
はい。なんかそういう自然に紛れてるちょっとした神秘的な物。
村上
朽ち果てたものが好きということ?例えば人間が死んでゾンビになった時に美しさを感じるとか。
ゲームジャムの企画案もゾンビだったし。
西村
ゾンビという発想の前に、死体ですね。魂を吹き込むことで暴れ出す。
死体は死後硬直するものですけど、それが動いたら面白いですね、っていう。
村上
鉄より錆の方が好きっていうのも何か共通してるのかな。醜さの中にある美しさとか。
西村
そうですね。さっき紹介したポートフォリオにあるダンゴムシの絵を描いたときも凄くビックリされたんですよ。
普通の人だったらもっと遠目から見た自然の風景を描くと思うんですけど、
私はなんかこのダンゴムシとジャリと落ち葉に魅力を感じて、こんな絵になりました。
村上
ダンゴムシのどこに魅力を感じる?
西村
カッコよさですね。
村上
カッコいい…よね(笑)。
王道でいうとカブトムシとかクワガタとかスズメバチって、いかにもカッコいいシルエットになって
見栄えもするしパワーも感じるんだけど、ダンゴムシって…。
西村
でもなんか良いんですよね。
村上
あと最後にこれも聞いてみたかったんだけど、西村のモノづくりのモチベーションってどこから来てる?
西村
やっぱり自分を成長させる事が好きなので、それが全てのモチベーションの基礎になってますね。
最終的に一人で全部やれるクリエーターになりたいっていう目標があるから
モチベーションが維持できるのかも知れないです。
村上
将来のビジョンが明確だからこそあとは突っ走るだけっていう理想形だね。
ではこれからもまだまだ色んな手法を試すことになると思うけど、ぜひ頑張って下さい。
では今日はありがとうございました。