キャラクターデザインコース

ゼミ通ヒーローズ Vol.13 岩本穂ノ実と「ゲーミフィケーション」について語るの巻 Part 2

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村上

長い長い前置きを経てようやくここから本題ね。学内の問題をゲーミフィケーションで解決しましょうってやつ。

「ゲーム制作応用」の授業の中でゲーミフィケーションを学んでいて、学内の問題解決とか、つまらない授業を面白くする方法を学生が考えて、実験・検証をして、実際に役立ててみようという課題ね。

 

岩本

私たちのチームは、出席カードのフォーマットを大幅に変えて、出席カードを使ってレイドバトルをしてみようっていう企画をやりました。

出席カードをぱっと見て、単純に書く気が起きないんです。なんというか、書かされてるような義務感を強く抱いてしまって。

 

村上

書く主旨としては、本来であればその授業の振り返りであったり次の授業に向けての質問があれば書くというものだったんだけどね。

 

岩本

枠の中に罫線しか書かれてなくて、しかもそこそこ量が多いんですよ。これを全部書いて埋めようと思ったら、書くことが決まっていても5分以上かかりますね。あとは実習系の授業のときなんて何も書くことがないので無理矢理言葉を絞り出すのが結構大変で。

 

村上

でも、例えば実習であれば「今日はこういう作業をしたけどここで失敗した。つまりここに問題があったということなので来週はこうやって対処したい」とか、書きようはあるはず。そんなことが書かれていると「あ、この人はちゃんと学んでるな」て評価できるわけ。

 

岩本

でも義務感が強すぎることと、課題の成果物の方が点数が高く見られるだろうと考えると、どうしても出席カードの存在は気持ち的にも後回しになってしまいますよね。

 

村上

確かにね。ではそれが大前提としてあって、それをどう解決しようとした?

 

岩本

まずは各項目を明確に分けて書きやすくしました。「はっけん」と「はてな」ですね。

その授業の中で自分が気付いたことと、それによって生じた疑問とか、先生に対する質問などですね。これを大きく二つの欄にまとめました。あとは所属の欄を消しましたね。キャラクタ―デザイン学科なのは分かり切ってるので、数秒とはいえわざわざその文字を書く時間が無駄だと思って。

あとは、ゲーム関係の人はドットのフォントが好きそうなのでドットにしました。見ただけでゲームであることが分かるようにしたかったんですね。やっぱりドラクエのインターフェースがゲーム画面として印象的だったので、それをイメージしました。

 

 

 

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ゲーム領域の授業のみで実験的に使用している出席カードのフォーマット

 

 

岩本

で、見た目はそんな感じなんですけど、そこにレイドバトルの仕組みを入れてます。

レイドバトルっていうのは、みんなで協力して一人の敵を倒す仕組みのことなんですけど、この出席カードの場合であれば敵は先生となって、一行書くごとに10ポイントのダメージを与える形になります。10行あるので、全部埋めれば100ポイントのダメージを先生に与えることができますよ、という意味です。授業ごとに目標となるダメージ値が決まってて、受講生全体のポイント数がその数値を越えていればその週は学生の勝ちで、越えなければ先生の勝ちとなります。例えば「ゲーム制作基礎」では先生のHP3000という設定なので、受講生全員で合計300行以上を書けば学生の勝ちということです。

 

村上

ちなみに今は「はっけん」と「はてな」は5:5の割り合いになってるけど、授業も後半になってくると「はっけん」の比率が多くなってきて「はてな」が減ってくるんじゃないかな。もしかしたら6:4の割り合いでも成立するような気もする。

 

岩本

うーん、そうですねぇ…。

 

村上

でも、「はてな」といっても質問とは限らなくて、自己完結したり自問自答するような内容も含まれると思うので、そう考えると今のボリューム感でもいいのかな。

 

岩本

ただ「はてな」も無理やり捻り出す必要もないので、先生の言う通り6:4でも良いのかなと思いますね。

 

村上

普段授業では1年生には「はてな」を多く作ることが重要だって言ってる。疑問がなくなったらクリエーターとしてはダメなので、無理やり捻り出すよりも自然に「はてな」が生まれてきて然るべきかなとも思うわけ。

ちなみに1年生の授業だと、23回目くらいまでは割とシリアスな質問が多いね。授業の内容に関わる質問とか、技術的な質問とか。これに対して一度「ネットで調べれば済むようなことは自分で調べて下さい」と言ったんだけど、そしたら次の週からは「先生の好きなラーメン屋さんはどこですか」「好きなポケモンは何ですか」と来るわけよ。確かにネットで調べても出てこない(笑)

 

岩本

なるほど、構ってちゃんシステムになるわけですね。

 

村上

多分フィードバックがあるという喜びがモチベーションになって、何でもいいから質問を投げてきてる印象。そんな中でこの新しい出席カードを導入したことで変化があったね。

 

岩本

そうですね。一年生の出席カードを一通り読ませていただいて、まあ構ってちゃんの質問もあるにはあるんですけど、明らかに授業の本質に迫るガチの質問が増えましたね。

 

村上

そういう意味では、この実験はとても良かったと思う。

 

岩本

質問の量もかなり増えましたね。先生が毎週書いてくる「ゼミ通(学生の質問に対するフィードバックシートのこと)」だって、それまでは12ページだったのが、この仕組みを導入した次の週から45ページになってきましたよね。先生大変だなぁって思いましたけど(笑)やっぱり「書きたい」っていう意思が生まれてきたのかなと思います。

 

 

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授業ごとに毎週配布している「ゼミ通」。出席カードに書かれた様々な質問に対する解答を記述。

当初は12ページだったものが、岩本方式の出席カードを取り入れた次の週から45ページに増えた。

 

 

村上

ゲーミフィケーションって、本音と建前が混在していて、運営側が誘導したいことと、ユーザーが突き動かされるポイントが違ってたりするんだよね。今回の企画でいうと、運営側としては「授業の参加意識を高めてほしい」で、学生は「レイドバトルを楽しみながらフィードバックをいただきたい」。なんだけど、レイドバトルとかフィードバックとか言いながらその結果として授業にしっかりのめり込んでる証拠なので、両者WinWin

 

岩本

何か書こうと思ったらちゃんと授業を聞いてないとダメですしね。

 

村上

座学と合評の日は物凄く質問が多くて実習の日は少ないんだけど、これは授業の特性上仕方ないかな。

今って先生のHP3000と決めて、毎週毎週倒せるかどうかのフィードバックがあるよね。「ゲーム制作基礎」は受講者数が45名で、全員が全行書いたら4500ポイント。その中でも半分しか書かない人もいるだろうから3000ポイントくらいの設定にしとこうか、てなったよね。三週に一回倒せるくらいがモチベーション維持にはちょうどいいという仮説をもとにバランスを調整して、毎回毎回「今週は倒せたかな?」っていう楽しみを作ろうとしてるよね。

 

岩本

そこは概ね狙い通りのバランスが実現したと思います。

 

村上

そこでちょっと思ったんだけど、例えば15回分の授業全体を通して、45000ポイントと設定しておいて、毎週少しずつ削っていって最終授業日に先生を倒せていたかどうかのジャッジを確認するというのもまた面白いんじゃいないかな。でもその場合は「数値」じゃなくて「ゲージ」にしないといけないだろうね。体力が削られていく様子が可視化されてると没入感も高まるだろうし。

 

岩本

ただその場合、途中で結果が分かるというか、もし序盤のポイント数が少なかったら、ある段階でもう全員が全行埋めたところで絶対に勝てないって分かっちゃうんですよね。そうなるとモチベーションが維持できないかと。

 

村上

ゼミ通ヒーローズのインタビュー記事を収録してるつもりが段々我々だけでガチのやりとりになってきたな(笑)

 

岩本

そういう風に夢中になれるのって大事ですよね。

 

村上

まあとにかく、これはゲーミフィケーションとしてとてもよく出来た企画だと思うよ。

 

岩本

え、そうですか?じゃあ成績上がるかな。やったぁ。

 

村上

そうやって目先の数字で一喜一憂する癖は直した方がいいな。

 

岩本

むー(苦笑)

でも、問題を発見するプロセスを理解できるようになったという意味ではこの授業を履修して良かったなって思います。

 

村上

アクティブラーニングって、「問題解決力」っていうよね。でも個人的には解決する力の前に「問題発見力」の方が大切なんじゃないかって思うわけ。周りを見渡して観察して、疑問や不満に思うことがあればその本質を見極めて解決策を考える。そういう力の方が大事なんじゃないかなって思うね。そこを面白いと思ってくれてるならこの授業はやって良かったよ。

というわけで、かなり長くなってしまいましたが、これからも頑張って面白いことを考えていきましょう。

 

岩本

ありがとうございました。

 

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