- 2019年10月30日
- 日常風景
ゼミ通ヒーローズvol.14「菊竹茉由と制御について語るの巻」Part1
ゼミ通ヒーローズ Vol.14
菊竹茉由と「制御」について語るの巻 Part1
今回のゼミ通ヒーローズは、村上ゼミ2年生(12期生)のゼミリーダーである
菊竹茉由さん(福岡県立八幡中央高等学校出身)をピックアップします。
村上
まずは定番の質問なんだけど、なんでうちの大学に来ようと思ったの?
菊竹
中学3年生の時、高校入試のために塾に行ってたんですけど、そこに大学一覧が壁に貼ってあって、その中からキャラクターデザイン学科っていうのを見つけて「面白そうだな」って興味を持ったのが始まりでしたね。
高校も美術系に行っていたので、デザインとかそういう進路を目指してて、その気持ちのままストレートにここに来ました。あと、学べる領域として「ゲーム」って書いてあって、他にはCGにも興味があったので、これらも含めて総合的に学びたいなと思って。
村上
菊竹は絵も描けるし企画も出来るし、幅広くやれるからこの学科がハマったのかもね。
菊竹
確かに最初は絵を描きたくてここに来ました。
でも授業の中で段々企画の方が向いてるんじゃないかと思ってきたんですね。
村上
その切っ掛けは?
菊竹
一年生の時の「ゲーム制作基礎」の中で、架空のプロットからゲーム画面を作るっていう課題があったじゃないですか。絵を描くだけじゃなくて企画者の視点からも見なきゃいけなくて、この課題を「面白い」って思ったあたりから段々気持ちが変わり始めました。
村上
まあ、よくあるパターンだな(笑)。出だしとしては皆キャラクターとか世界観を作りたいって思うんだろうけど、それは後に回して、最初はUIデザインの話しかしないようにしてる。皆綺麗に絵を描き込んでくるけど、あえてそこは一旦無視して、ゲームをプレイする上での操作性とか視認性の話ばかりしてたな。皆「え、そこを評価するんすか?」「キャラクターは見てくれないんですか?」って驚いたと思う。そこで初めてUIデザインがゲーム企画の根幹を支えるものなんだって気付くんだね。で、段々キャラクターを描くよりも仕組みを考える方が面白いって思うようになる。
菊竹
そうですね。私も元々はゲームのキャラクターデザイナーを目指してました。
スマホゲームのガチャで出てくるキャラクターの立ち絵がカッコいいとか可愛いとか、そんなことばかり言ってましたね。でも段々自分の描いたキャラが動いてるのを見たいって思い始めました。
村上
誰しも最初は絵がうまくなりたいっていう気持ちはあるんだろうけど、ある程度力が身についてきたら今度はその絵を使ってどんな風に遊ばせようかって考えるわけだね。
ちなみに、うちら世代がゲームキャラクターっていうと、マリオとかソニック、パックマンみたいに記号化されたものを想像してしまって、立ち絵っていう意識が全くない。Aボタンを押したときにこんな動きをしたら面白いなとか、そういう発想でしかキャラクターを見てなかったから。
菊竹
操作したいというか、もちろんそれも大きいんですけど、それ以上に物語とか世界の中に入りたいって思ってましたね。でも最近はスマホ向けでもゲームシステムが面白いものも出てきてるんで、ゲームそのものも楽しめるようになってきたかなって思います。
村上
スマホでもコンシューマ志向のガチなゲームデザインが増えてきたよね。
菊竹が好きなゲームってどんなの?
菊竹
ちょっとマニアックかも知れないですけど、ストーリーの中に哲学的な要素があるのが好きなんです。
「MOON」とか「MOTHER」とか。もちろんゲームとしても面白いんですけど、ストーリーがすごく良くて。一見可愛いのにどこかゾッとするような要素を含んでるような。
あとは平成中期のゲームが好きですね。ゲームキューブとかPlayStation2とか。当時のCMも好きなんですよね。
もしかしたら単なるノスタルジーなのかも知れないですけど。
村上
ちなみに、最初にハマったゲームって何?
菊竹
最初にハマったのは、4歳の誕生日に親から買ってもらったポケモンです。
そこからゲームが好きになっていきましたね。毎年誕生日とかクリスマスには必ずゲームを買ってもらってました。
村上
ついさっきうちの娘から「テストで100点とったからマリオメーカー2買ってきて」てメールがきてた(笑)
約束は約束だから帰りに買わなきゃ…。
菊竹
私も、高校生の時に成績が学年10位以内に入ったらwiiUとスプラトゥーンをセットで買ってあげるって親から言われて、めっちゃ勉強頑張りました。多分「どうせ無理やろ」って思われてたんでしょうね。
村上
ご褒美があるから頑張るのか、頑張った結果としてご褒美があるのかでモチベーションは全然違うよね。
たしかに、娘には100点とったらマリオメーカー2を買ってあげるとは言ったけど、実際にとってしまうと、本当に勉強を楽しんでるのかなって心配になってくる。
菊竹
でもその頑張る過程で「自分ならできる」って思えるのが嬉しいし、
モチベーションも保ててたんで、それはそれでいいかなって思います。
村上
なるほどね。ちなみに菊竹は今ゲームゼミ2年生のリーダーをやってるけど、実際ゲームゼミってどんな感じ?
菊竹
アナログゲーム、デジタルゲームだけじゃなくて、遊びの力で社会をいかに面白くするかっていうゲーミフィケーションの研究をやってますね。後期からは脱出ゲーム制作も始まります。ゲームといってもかなり幅は広いと思います。
村上
一通りやってみてどうだった?
菊竹
昔から作りたかったのはデジタルゲームだったんですけど、実際にアナログゲームの制作もしてみて、どっちも面白いじゃんってなりました。元々アナログゲームについてはあまり興味なかったんですけど、遊びを作る上でそこの考え方は変わりましたね。
デジタルだと自分一人だけで進むとか、対戦だったとしても相手の顔が見えない場合が多いじゃないですか。でもアナログだと人同士が向き合って遊ぶので、相手の表情を読んで戦略を考えるとか、遊びが広がって面白いですよね。
ていうか、そもそも紙が好きなんです(笑)触れるから。
村上
紙が好き(笑)そうそう、そういう素朴な動機がすごく大事。
菊竹
でも最初のアイデア出しとか、5人のチームで全員意見がバラバラの状態で、それをまとめていくのが大変でした。
でも紙に書いてテストプレイが一瞬でできる点がすごく良かったです。フィードバックも早くて、どんどんアイデアが出てくるので。
村上
今、一年生の時の話をしたけど、今現在2年になってからはどう?
菊竹
このゼミでは、最初にウォーミングアップで「日本ゲーム大賞」を想定したゲーム企画をやって、
「ゲームジャム」「Japan Expo」向けのゲーム制作、そのあとは京都のホステルに置いてもらうための外国人観光客向けのアナログゲーム制作をやりましたね。
村上
Japan Expoについては以前伊藤舞(ゼミ通ヒーローズvol.11)が語ってくれたけど、ざっとおさらいしておこうか。
菊竹
Japan Expoでは、フランスに持っていくゲームということで、言葉が通じなくても遊べるゲームとしてメンコのゲームを企画しました。ゴールデンウィークの間に大急ぎでまとめた企画でしたけど、同時進行でゲームジャムの企画も動いてたからゴールデンウィークはまるごとなくなりましたね(笑)
村上
ゲームジャムの方は、テーマの発表があったのがゴールデンウィークの半ばで、
連休明けの土日にイベント本番っていう(笑)
菊竹
二日でゲームを完成させるのはなかなか難しかったですけど、初めて自分が関わったものがああやって画面の中で動いてるのを見て感動しましたね。「本当に完成しちゃった」って。
アナログゲームは作っていく過程がその場でわかるじゃないですか。でもデジタルゲームの場合はプログラマーさんにデータを渡してから形になるまでに時間がかかるし、それがどんな風に動いたり表示されるかわからないので。
参加者全員仲の良いメンバーだったこともあって、先輩とも打ち解けて、わいわいやれて楽しかったです。
村上
そこ大事。先輩の考え方を後輩が受け継ぐっていうのをやりたくて今回ゲームジャムに参加したんだけど、
今度は君らが次に入ってくる後輩のゼミ生に対してゲームゼミの「イズム」を継承していっていただかないとね。
菊竹
とにかくチームワークが大事なゼミなので、そこは同年代だけじゃなくて上下のつながりもキッチリ作っていかないとダメだなって思いますね。
村上
前期後半にホステルに置くためのアナログゲーム企画を進めたけど、菊竹のチームは全員黙々と作業をしていて、あまりディスカッションをしてる印象がなかったね。ワークフローも明確だったから、なんだか会社みたいだなって思いながら見てたけど。
菊竹
もう早い段階で仕様が固まってたんで、あとは時間までに完成させようってなって、ただひたすらデータを作り込んでました。
村上
プロジェクトではないけど、ゲームの通常授業の中だと体育館を使って「鬼ごっこ」もやったよね。
↑体育館を使ったゲーム授業の風景。
鬼ごっこの新しいルールを考えてはその場で試し、ゲームがゲームになる瞬間を体感しました。
菊竹
あの時は暑くて大変でした…。鬼ごっこだけであれだけ種類があって、その場ですぐに考えられて、実行できるって。体だけを使うっていうのがすごくいいなって思いますね。
村上
お金もかからないし、デバッグも即座にできるし、結果がすぐ出るし、体を動かすと勝手に場も盛り上がるし。
まあ、盛り上がらない鬼ごっこって見たことないけどね。
菊竹
プロジェクトとかデジタルゲームとかアナログゲームとか、あと鬼ごっことか…。ゲームの授業やゼミって、色々あって盛沢山なんですけど、でも「あれもできます、これもできます」だと、限られた時間で全てを学ぼうと思うと時間が足りなくなって、少しずつ触れていくだけになっちゃうのが勿体ないんですよね。
村上
かといって、色んな種類のゲームの専門家をたくさん呼んできて、授業数を増やして教室も増やして…てなったところで、どうなんだろう?結局幅を広げて色んな領域をつまみ食いしたけど、最終的な将来の夢を消去法で決めていくことになったりしないだろうかっていう心配はあるね。「鬼ごっこの授業が楽しかった」って言って、だからといって鬼ごっこのプロを目指すためにやったわけじゃないよね、て判断になってしまう。
目先の就職の事を意識するのは大事なんだけど、それ以前にこれらの授業で培ってきたものを社会のどんな側面に活用するかっていう考え方にしてほしいわけ。
菊竹
それは全部活用できますよね。直接ゲームとは関係ない、先生との世間話とかでも、活用できそうなネタもたくさんいただけてるし。
一年生のときのゲーム授業で、「感情を動かされたできごとを元にゲームの企画を考える」っていう課題があったじゃないですか。それと同じように、その場その場の思い出を面白い企画に変換する力っていうのもゲーム業界以外でも応用できると思いますね。鬼ごっこの企画を考えたのもじゅうぶん役立つと思いますし。
鬼ごっこの企画を考えてるときに、先生が「実際に体を動かしながら考えたら」って言ってくれたんですよ。話だけだと全然進まなくて皆で「うーん、どうしよう」ってなってたんですけど、動きながら考えたらすぐにアイデアが固まったんで、これ大事だなって思いましたね。
村上
鬼ごっこのいいところは、さっき菊竹が言ってたようにすぐに考えてすぐに実行できるっていう点。即時フィードバックがあって、「さあ次!」てなるから、小さい創作のサイクルを一瞬で体感できるし、この小さいサイクルは段々大きくなっていって、大きな学びになる。学びになると自信につながる。これってどんな仕事にでも応用できるよね。鬼ごっこである必要はまったくない。「とりあえずやってみよう」の精神と喜びのサイクルを理解する事こそどんなところでも応用できるよね。
Part2に続く