- 2020年5月1日
- ニュース
【歴史遺産学科】教員のおすすめ作品紹介!(その1)
こんにちは。歴史遺産学科学科長の仲です。
いよいよゴールデンウィークが始まりました。
しかし、新型コロナウィルス感染拡大防止のために非常事態宣言が全都道府県に出されている現在、
皆さんは外出を控え、いわゆる「巣籠もり」の状態だと思います。
そこで、前回に引き続き、歴史遺産学科新入生・在校生の皆さんはじめこの分野に興味を持つ方々に向けて、
専任教員からのお薦め作品を2回にわたってご紹介いたします。
今回は文化財保存修復領域の教員からのお薦め作品のご紹介です。
まずは、民俗文化財の保存修復ご専門の伊達仁美先生からの推薦です。
私がみなさんにお勧めする図書は、法政大学出版局の「ものと人間の文化史」シリーズです。
現在、184巻(実際には、複数にわたるものがあるため、211点)まで出版されています。
みなさんが興味をもつ分野も、きっとあるはずです。
私が初めてこの本を手にしたのは、『ものと人間の文化史12』「絵馬」岩井宏美實著(1974)でした。
1975年に購入してから、45年、ずっと側にあります。
それ以降、「ものと人間の文化史」シリーズは、何かを調べるときに、まず手に取る書籍となっています。
それぞれの分野で活躍する研究者が執筆されていて、入門書として読みやすく、参考文献も充実しています。
小説では、私の大好きな北森 鴻の著作を紹介します。
まず、『狐罠 』(講談社文庫)、『狐闇』(同)をお勧めします。
これらは私が初めて北森作品と出会い、それ以降彼の作品にのめり込むきっかけとなったものです。
古美術ミステリーの傑作長編と紹介されていますが、贋作の制作方法が専門的に描かれ、とても興味深い作品でした。
同じく、北森 鴻著『深淵のガランス』(文春文庫)絵画修復に必要なX線分析や絵具の分析などの
説明も分かりやすく描かれています。
北森は、民俗学の分野でもたくさん作品を残しています。こちらも面白い作品がいっぱいです。
次に、装こう文化財の保存修復ご専門の大林賢太郎先生からのお薦めです。
私が歴史学に関して影響を受けたのは手塚治虫の「火の鳥」シリーズと、
アイザックアシモフの「ファウンデーションシリーズ」シリーズ&「ロボット」シリーズでした。
アイザック・アシモフ(前のブログの図書推薦で増渕先生が挙げられていました)は、
化学だけでなく歴史でも学位を取った理系と文系にまたがる天才で、多数の本を執筆しました。
学術書もある一方で、SFの作家としても著名です。「ファウンデーション」シリーズ(ハヤカワ文庫)は、
銀河帝国興亡史という副題がついているものですが、「心理歴史学」という学問で未来予測するというストーリーです。1人1人がどう判断して何をするかは予測がつかないが、社会全体としての傾向は数学的な計算が可能だ
という学問と言う設定です。面白い設定で、有り得る話だと思っていましたが、近年では、
それがAIによって達成されつつあります。
ちなみに「ロボット」シリーズは、ウイル・スミス主演の映画「アイ,ロボット」のベースになっていたり、
鉄腕アトムにも影響を与えたと言われています。
最近、「文房具百年」というサイトにはまっています。
私は近現代の資料を研究していますが、それらには様々な筆記用具が使われています。
それらがどう劣化していくのかを調べているのですが、それについての歴史的な蘊蓄がいっぱいです。
マンガで面白いと思ったのは蛇蔵&海野凪子『日本人の知らない日本語』シリーズです。
日本語学校の教師が主人公で、留学生の間違った日本語のエピソードを面白おかしく取り上げていますが、
私達日本人から見ても、日本語って独特(変?)な言語なんだと改めて思えるところが結構あります。
あと、日刊工業新聞社のB&Tブックスの『きょうからモノ知りシリーズ トコトンやさしい○○○○の本』シリーズ(○○○○には、紙と印刷、染料・顔料、段ボール、色彩工学乙等があります)や
同じ出版者の『おもしろサイエンス ○○○○の科学』シリーズ
(○○○○には、塩と砂糖と食品保存、接着、五重塔等々があります)がお気に入りです。
最後に、文化財科学ご専門の増渕麻里耶先生からのお薦めです。
漫画はあまり読まない方なのですが、歴史への傾倒のきっかけとなったのは何か思い返してみると、
幼少のころ母の本棚で見つけてこっそり読んだ手塚治虫作『火の鳥』だったように思います。
人間の惨さ、生命の尊さ、そして何世代も形を変えながら繰り返される人々の業というものを、
この漫画を通してある種の衝撃とともに知りました。
特に「ヤマト編」と「鳳凰編」は今でも強烈に覚えており、これが日本の古代史へ興味を抱く最初の
きっかけになったのだと思います。その後小学校高学年のころに読んだ同じく
手塚治虫作『三つ目がとおる』の短編「酒船石奇談」をきっかけに飛鳥奇石群にどハマりし、
関連する本を図書館で読みあさっていました。
関連しつつも少々話は逸れますが、私の通っていた中学校では、
3年生の京都・奈良修学旅行のメインイベントとして、
飛鳥の甘樫丘の頂で代々「万葉歌碑のうた」という混声合唱曲を歌っていました。
この楽曲は「采女の 袖吹きかへす 明日香風 都を遠み いたづらに吹く」という
志貴皇子(天智天皇の第7皇子)の短歌をもとに、昭和の作曲家黛敏郎氏が編曲を手掛けたものですが、
晴天の丘の上で、穏やかな風を受けながらみんなで歌ったあの感覚は、楽曲共々一生忘れられません。
甘樫丘の頂で明日香風を感じる
最後に、小説については前回のブログで松本清張の『火の路』をあげてしまったので、
その代わりに西岡常一・小原二郎著『法隆寺を支えた木』(NHKブックス)という書籍を推薦します。
同一の対象を職人と科学者それぞれの立場から見た場合にどのような違いがあるのか。
結果的に職人の勘を科学が裏付ける形で融合する展開が多々あり、自分のこれまでの経験と
照らし合わせても面白い本だなあと思います(ちなみにこれは上記の修学旅行の事前学習図書の一つでした)。
いかがでしたでしょうか。
興味深い作品ばかりで、じっくりと触れてみたいですね。
次回は歴史文化領域の教員からのお薦めをご紹介いたします。
お楽しみに!