基礎美術コース

美術工芸のなかに息づく自然  基礎美術コース・桐箱づくりの授業 【文芸表現 学科学生によるレポート】

違うジャンルを学んでいても、芸術大学でものづくりを楽しむ気持ちは同じ。このシリーズでは、美術工芸学科の授業に文芸表現学科の学生たちが潜入し、その魅力や「つくることのおもしろさ」に触れていきます。
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文芸表現学科、2年生の出射優希です。美術工芸学科、基礎美術コースの授業におじゃましてきました!
木くずが積もる教室、響く道具の音。文芸の私にとってはどれも縁遠い世界です。今回改めて、「あ〜憧れの芸大に来たんだなぁ」と感動した気持ちを、文芸生から見た基礎美術コースの魅力にのせてお伝えしていきます◎

 

●「かしゅっかしゅっ」とかんなの音

 

2年生から学年ごとに開講されている、漆にまつわる授業。その授業のなかでは、繊細な木材を釘などを使わずに組み合わせる「指物(さしもの)」という技法で桐箱をつくる授業も、おこなわれている。
この桐箱のなかには、漆を塗った板を収納する。板は、木の種類や漆の種類によって異なる風合いの見本として、作品制作に使われていく。

 

今回は、4年生の方が桐箱を制作する授業を見せていただいた。
片手に収まるサイズの桐箱。しかし制作工程をお聞きすると、そこには自然と共に暮らしてきた人間の知恵と、果てのない探究心が無限に詰まっていた。

 

桐箱は一枚の板からつくられる。
パーツごとに切り出し、更に面同士を噛みあわせるため、凸凹になるようにノミでさらっていく。
今回はボンドを使い接着しているが、昔は米を炊き、すり潰すことで糊をつくっていた。
米から糊をつくるなんて、舌切りすずめの世界のようだが、今の私たちにだってできることである。

 

 

一番驚いたのは仕上げの艶(ツヤ)出しに使われる「イボタ蝋(ロウ)」というものだ。
蝋(ロウ)という字に虫へんが入るとおり、イボタノキという木に寄生するイボタロウムシが分泌する蝋が使われている。
なぜそれが艶出しに使えると気づいたのか……。
今でこそ伝統として扱われるが、初めて発見した人はかなり好奇心旺盛なチャレンジャーに違いない。

 

↑これが「イボタ蝋」 蜜蝋などと違いさらさらしている

 

かしゅっかしゅっとかんなの音が心地いい。

この日は雨降りだったが、木屑の匂いと雨の匂いが混じり合い、大学を包む自然と工芸のなかに息づく自然を感じられる贅沢な日だった。

工芸の根底にある自然を感じられるのは、山のなかにあるこの大学ならではかもしれない。

 

 

●計画通りに進まない状況を生かす

 

作業の合間に、漆の作品も見せていただいた。

 

↑質感の見本となる板 漆の種類や材質によって色の出かたが異なる

 

漆塗りのお椀を見て、静かに光を受け止める黒に息を呑む。

柔らかい絵付けの線も魅力的だ。

こんなにも艶やかに人を魅了する「漆」。

これもまた、自然のなかにある素材なのだ。

 

このお椀は、本来であれば絵を掘り込む予定だったそうだが、前年度がオンライン授業に変更になったことで「絵付け」に変更された。

計画通りには進まない状況のなかで、むしろそれを利用して美しいものを生み出す。

昔の人々が試行錯誤してものづくりをしてきた歴史が、工芸を通して今にも流れていることがひしひしと伝わってきた。

 

●作業場で過ごす言葉のない時間

 

気さくな四年生の皆さんは、和やかな空気で作業をされていた。

けれど、作業中は一人ひとりの体を緊張の膜が包んでいて、お互いにそこには踏み込まない。この距離感が絶妙である。

同じ作業場で共に過ごす言葉のない時間が、独特の空気を生んでいるのだろう。

美術工芸学科のひとつの良さが、その空気のなかに佇んでいる。

 

 

 

取材記事の執筆者

文芸表現学科2年生

出射優希(いでい・ゆうき)

兵庫県立西宮北高校出身

 

1年生のとき、友人たちと共に、詩を立体的に触れることができる制作物にして展示した展覧会「ぼくのからだの中にはまだあのころの川が流れている」を開いた(バックス画材にて)。

自分のいる場所の外にいる人とつながるものづくりに、興味がある。また、「生きること」と直結したものとして「食べること」を捉え、それを言葉で表現している。

 

 

 

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