キャラクターデザインコース

ゼミ通ヒーローズVol.39 「辻村奈菜子と卒業制作『ハコニワ』について語る」の巻

「ゼミ通ヒーローズ」とは、京都芸術大学キャラクターデザイン学科ゲームゼミの学生の研究や取り組みについてピックアップし、担当教員村上との対談形式で綴る少々マニアックなブログ記事となっています。

 

村上

今回のゼミ通ヒーローズはゲームゼミ4年生の辻子(辻村奈菜子さん)の卒業制作についてお送りします。

辻子の登場はこれで二回目だね。まずは辻子の作品『ハコニワ』を紹介してください。

 

辻村奈菜子さん

 

辻村

ここ最近人と会話することがほとんどないのでちゃんと話せるか心配なんですけど(笑)

このゲームは、一言でいうと「観察するほど達成感が得られるゲーム」です。

『ハコニワ』のゲーム画面(開発中の画面のため、完成形とは異なる可能性があります)

 

辻村

自分は4つのゲーマータイプ(アチーバー、エクスプローラー、ソーシャライザー、キラーの4タイプ)の中でいうと「アチーバー/エクスプローラータイプ」なんだっていうのを、『ゼノブレイド』で遊んでるときに気づいて、逆にランキングを競うようなゲームは全然やらないんですよ。ただただ冒険してミッションをこなしていくようなゲームは延々やっていけるので、発見とか冒険とか達成することを突き詰めたゲームを作って、同じゲーマータイプの人に楽しんでもらいたいと思ってました。

 

村上

なるほど。具体的には?

 

辻村

『ハコニワ』っていうタイトルの通り、CGの箱庭を散策するゲームなんですけど、それだけではなくて、現物のミニチュアも使って進行させていきます。画面の中にある情報と、現実の箱庭にある情報が異なるので、両方の視点でちゃんと観察することが重要になってきます。

遊び方としてはまず、ミニチュアの上にブロックを置いていくんですけど、そのブロックの中にセンサーが仕込まれていて、どこに何を配置したかによってCGのマップが変形するなどの影響を与えていきます。ミニチュア側でのセンサーの配置の仕方によって、CGマップ内で扉が開いたり地形が変わったりするので、ミニチュアとCG画面を交互に見ながら、主人公キャラクターを目的地へ導くアドベンチャーゲーム+パズルゲームとなっています。

 

村上

敵と闘うような場面はなくて、マップを観察しながら「どの部分をどう動かせば主人公をゴールへ連れていけるか」を考えるってことね。

 

辻村

そうですね。チェックポイントもいくつかあるので、お宝集めをしながらゴールを目指す形になります。

 

村上

そのセンサーは、ミニチュアとCGをどうやって連動させてるの?

 

辻村

ブロックの底に読み取り用のシートが貼られていて、ミニチュアマップの床に仕込まれたセンサーがこれを読み取ってパソコン側に信号を飛ばすようにしています。

 

村上

それをUNITY上で検知してゲーム画面に反映させていくわけね。

 

辻村

そういうことです。

 

センサー配置によるマップ変化のイメージ

 

村上

中間合評のときに、鴨志田先生が「お金のにおいがする」ってコメントしていて、プロデューサーがお金の話をするのは最高の誉め言葉だね、とも言われてたけど。

 

辻村

でも、仮に売ったとしても、自分的には元は取れないんじゃないかなって思ってます。

 

村上

コストがかかりすぎて(笑)

 

辻村

センサーも一つ一つが高いし、3Dプリンターで色んなギミックを出力するのも高いし…。

それ以前に、箱庭そのもののサイズが大きいので、家に持ち帰って遊ぶようなものではないですね。

 

村上

アトラクションとかアーケードゲームとして楽しむような感じだね。

 

辻村

ミニチュア作りのための勉強として広島の「シルバニアファミリー展」に行ってきたんですけど、自分の作ってるゲームとドールハウスの遊び方って似てるなって思ったんですよ。

ドールハウスって、家を観察して、そこに好きな家具とか置くじゃないですか。それで家の中を覗き込んだ時にワクワクするみたいな。その感覚をこのゲームでも遊びとして追求していきたいなと思ってます。

観察して、ここに何かありそうだ、とかブロックを組み替えて色々試して、その結果を見るためにまた中を覗き込んで…というイメージですね。

 

村上

春の展示会のときに、辻子が作ったゲーム『カルネヴァーレ』も、マップを観察するゲームになってたよね。やっぱり作風に共通点があるのかな。

『カルネヴァーレ』のゲーム画面

 

辻村

そうですね。観察して冒険して達成するっていうことに拘ってるので。でもあのゲームを作るときは、「ゲームをつくろう」って思ったんじゃなくて、サイゼリヤで間違い探しをしてるときに、ふと思い立ったんですよ。

 

村上

あのメチャクチャ難しいやつね(笑)最後の一つが絶対に見つからないっていう。

 

辻村

そうです。よく友達と行くんですけど、自分はあれ絶対やるんですよ。そしてクリアするまで店を出ないんです。みんなすぐにヒントを求めたり諦めたりしがちなんですけど、自分は食事が運ばれてきてもずっと間違い探しだけやってるんです。4つのゲーマータイプの中で人と競うことになるとものすごい熱意を見せるキラータイプの友達は間違い探しを最後までできないけど、アチーバーとエクスプローラータイプに振り切っている自分はどれだけ時間がかかっても諦めないことから、間違い探しは観察するほど達成を得られるアチーバー・エクスプローラータイプ向けのゲームなんじゃないかなと思って始めたのがきっかけです。『カルネヴァーレ』も今回の『ハコニワ』も、同じコンセプトで発展していったので、制作のモチベーションはずっと維持できてますね。

 

村上

その前に作ったVRゲームの『ARCAID』も共通点があるよね。あれはVR空間上に作られたゲームセンターで遊ぶゲームだけど、クレーンゲームそのものを楽しむよりも、筐体の下に落ちてるコインを探して、それを拾ってゲームで遊ぶ点に拘ってたりとか。このあたりの発想もそもそもマップの観察と発見の喜びを再現した仕様だったよね。

 

辻村

これは実体験をもとにしたアイデアですね。ゲーセンでの背徳感を楽しむという(笑)

 

『ARCAID』のイメージ写真

 

 

『ARCAID』をプレイしている様子

 

村上

あとこれはゲーム本編の話とは少し外れるんだけど、「なんで辻子はこんなに頑張れるのか」っていうね。春の展示会のときも、VRのゲームを一つ展示しただけで目標が達成されたはずなのに、もう一本『カルネヴァーレ』を追加で制作するバイタリティとか。しかもあのゲームはプロのゲームクリエーターたちも「ありそうでなかった企画ですよね」って驚いてたり。他にも、卒業制作と就職活動で忙しい中で授業のLA(Learning Assistant=授業補佐)を名乗り上げてきたりね。そのアグレッシブさというかクリエーター魂というか、そこが辻子の最大の評価ポイントなんじゃないかなって思う。

 

辻村

別に頑張ってはいないですよ。面白いからやってるだけで、無理なら無理って言いますし。ゲームゼミの他のメンバーもみんな同じような感じでやってるから、自然にそういう空気が出来上がってますよね。ていうか、『カルネヴァーレ』のときは、単純にこんなのを作ってみたかったっていう理由と、もう一つは卒業制作に向けてプログラミングの練習をしておきたかったっていう目的もあって。

LAの仕事に関しては、なんか4年生になると卒制と就活だけで孤立して誰とも話ができなくなるんじゃないかって思ったし、後輩が面白いゲームを作るのを見てみたかったっていうのもあるし。あとは、憧れの門瀬先輩もLAやってて凄くお世話になったので、自分も先輩みたいにやってみたいと思って名乗り上げてみました。

 

村上

憧れって大きいよね。

 

辻村

でも結局は楽しいからついついやっちゃうんですよね。パッと見栄えが良くなった瞬間とか、難航してたプログラミングが急にうまくいった瞬間とか。モデリングしたデータがUNITY上で動いたとか、そういうちょっとした小さな喜びの積み重ねがモチベーションアップに繋がってるんだと思います。あとは健康の維持ですね…。

 

村上

ゲームをつくる工程自体がゲームだって言ったように、小さな達成の繰り返しでのめりこんでいくんだね。ではこの調子で最終合評までにゲームを完成させて、みんなを驚かせてください。

 

辻村

はい、ありがとうございました。

 

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